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東京ジンジャーエール百景 18杯目『3年目の島流し』

東京生活も3年目に入った。

先日OAされた『音楽の日』のサンボマスターの演奏が素晴らしくて、iTunesで数曲ダウンロードして毎日聴いている。今日は『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』を熱唱しながら家を出る準備をして『悲しみで花が咲くものか!』と叫んで玄関の扉を開けたら、目の前に妙齢の女性が膝を抱えて座っていた。めちゃくちゃビックリした。

僕の家の向かいに住む男性を待っているようだった。女性の顔には悲壮感しかなく、『悲しみで花が咲くものか!』と扉の向こうから聴こえていただろうと思うと複雑な気持ちになった。

家を出たのはよかったが、今度は家に帰るのが怖かった。もしあの女性がいたら、扉の向こうでその存在を感じながら過ごさなければいけない。家で恋愛ソングを歌うのははばかられる。Kiroroの『長い間』なんて歌ったならインターホンを押されかねない。

ドキドキしながら帰宅すると、そこに女性の姿はなかった。家に入れたのか、それとも帰宅したのかはわからないが、これからしばらくは家を出る前に、扉ののぞき穴から外に女性がいないか確認することになるだろう。変な日課が増えてしまった。

先日、そんな我が家を数日間留守にしてロケに行ってきた。

今週日曜の『林先生の初耳学』で放送になる『八丈島に島流し…エンジンもGPSも使わずたどり着けるか?』というもの。これまで生きてきたバチがまとめて当たったかのようなハードなロケだった。

ロケの前日、出発地の横浜港に前乗りした。僕は普段アップルウォッチをしているのだが、海の上では電波も届かないし毎日充電するのも面倒なことに気づき、合間を見つけて時計を買いに行った。手頃な値段の時計を探していると、店員さんに「どんな時計をお探しですか?」と話しかけられた。

「ある程度防水機能があるといいんですけど」

「海に潜られるんですか?」

「いや、潜りはしないんですけど、船に乗るんで…」

「あー、釣りですか?」

「いや…」

さすがに「島流しです」と答えることはできず「まぁ、そんな感じです」とよくわからない返答をすると、店員さんはあからさまに不審の目を僕に向けた(時計は無事購入できた)。

ロケの詳細にはここで触れないが、ずっと記憶に残るものになったことは間違いない。家を出たら膝を抱えた女性が座っているのと同じくらい、何が起きるかわからないVTRになっているので、ここまで読んでしまった方は義務としてご覧ください。よろしくお願いします。

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