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【Bチームに落とすというマネジメントは悪なのか】

インタビュー記事も少し落ち着き、少し時間は空きましたが、絶えずコンテンツを出し続けたいという事で、今回は育成の話。

Bチームに落とすというマネジメントは悪なのか】について、実際の僕の経験談を交えながら語っていきたいと思います。

【結論】

先に結論を申し上げると、【悪】ではない。しかし、いくつかの条件をクリアしたうえで。

それらを一つずつ時系列と共に説明してこうと思う。

【自分のテクニックに魅了されていた小学生5年生】

僕は低学年の頃からサッカーがそれなりにうまかった。

小柄ではあったが、それなりのテクニックがあり、小回りも効く選手で、相手をかわしたり、観客を驚かせるようなプレーをするのが好きだった。

むしろ、そればかりを考えていた。

もちろん、各カテゴリーのトレセンには常連のごとく選出。

巷ではそこそこ有名となり、完全なる天狗状態だった。

がしかし、小学5年生の時の冬。

とある試練を与えてくれたコーチ(以下コーチM)がいた。

【お前は上手い選手ではあるが、怖い選手ではない】

コーチMは後に、海外のプロクラブを率いるまでの指導者になるのだが、その当時コーチMは市トレセンの責任者であり、

僕は市でも県でも地方でも常にAチームに属していた選手であった。

しかし、新学期の県トレセンの選考会に望む市トレセンチーム編成において、Bチームでプレーするように命じられた

先ほども述べた通り、僕はテクニックに自信があったし、個人技では誰にも負けないと自負していた。

しかし、そんな僕には一つ欠陥があった。

それは、

上手い選手ではあるが、怖い選手ではない

という欠陥。

つまり、得点(結果)に直結するようなプレーが出来ていなかったのだ。

「得点よりもアシスト」に美学を感じており、圧倒的に得点しないミッドフィルダー。

自分のテクニックに自分自身が翻弄されてしまい、サッカー本来の“ゴールを決める”という目的を忘れてしまっていたのだ。

しかし、この欠陥を言及されたのはこれが初めてではなく、毎年のように、又は、色んな指導者から常々言われていた。

才能があるのに活かしきれていないと。

そのコーチMにも、その欠陥について言及されていた。

【エースのようにプレーしろ】

お前は相手からすると、怖くない。
上手い事には間違いないが、危険な選手ではない。
Aチームでプレーすれば、周りには上手い選手がたくさん居て、楽しくプレー出来るかもしれないが、それだとお前の本当の良さがでない。
Bチームに行って、エースのようにプレーしろ
上手い選手から怖い選手になれ。

選考会前日にそう告げられたのだ。

Bチームに落とされた悔しさで涙が出てきたが、小学生ながら、この決断の目的をしっかりと感じ取れた。

コーチのその気持ちが嬉しかった。

本気で変わろうと思えた電話だった。

「選考会は6試合あるから、全試合得点する気持ちで臨め。そして、決勝で再会しよう

【6試合5得点を記録。決勝で再会を果たす】

得点の事だけを考えてプレーした。

コーチとの約束を果たす為、ゴールを奪うことだけを考えた。

見事にプレースタイルも変わった。

そして、約束通り決勝でコーチMが監督を務める市トレセンAと再会したが、

その決勝では得点を奪うことが出来なかった。

これは後日談ではあるが、コーチMが自チームの選手に、僕を徹底マークするように伝えていたようだ。

とはいえ、「ゴールに向かったプレーをする」「上手い選手から怖い選手になる」という目的を果たせたし、

無事にBチームから唯一の県トレ合格者として、名前を呼ばれる事になった。

【その判断に愛はあるか】

今回の話は決して僕が頑張ったという話ではない。

Bチームに落とすというマネジメントは悪なのか】について考える為の記事だ。

この一連の話を聞いて、みなさんはどう思ったのだろう。

実際に経験した僕としては、仮に、あの電話が無かったとしたら絶対に5得点も決められなかったと思っている。

怖い選手になれ

今の殻を脱ぎ捨てろ

そのようなメッセージを確実に受け取った。

僕はそのメッセージを受け止め、必死にプレーした。

エースのようにプレーしろという言葉の中には、そのチームの結果に責任を持て。という意味合いが組み込まれている。

つまりは、『ゴールという結果でチームを導く事によって、アイツは必ず変われるだろう』

という確信のもと、コーチMは僕をBチームに落としたのだ。

そこには確実に明確な意図があった。

みなさんはどうお考えだろうか?

【ちなみに】

これも大人になって分かった事だが、コーチMは良くも悪くも異色を放つコーチであった為、多くの議論を呼んでいたらしい。

自分が持っている哲学を決してブラさなかった。

そんなコーチMは今、海外のプロクラブで長年指揮を執っており、名高い実績を残している。

そんなコーチが

僕の事を一番買ってくれていた。

僕に対しては一番厳しく接してくれていた。

その事実が今になってしみじみと嬉しくなるのであった。