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徳島ヴォルティスVS東京ヴェルディ

昨シーズンの夏、鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムで観戦した【徳島ヴォルティスVS鹿児島ユナイテッドFC】。

ポカリスエットスタジアムはとても親しみやすく、居心地の良いスタジアムだった。そんな開放的なスタジアムで繰り広げられた“スペインの知将”リカルドロドリゲス監督擁する徳島ヴォルティスのサッカーはとても魅力的だった。

今季は、徳島ヴォルティスの闘いも追ってみたいと思う。

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ちなみに、監督業はとても難しい職種だ。クラブのマネジメント側の理解が無ければ、じっくりとチーム作りを行う事は出来ないし、チームとしての“フォーマット”が出来上がっていないチームに就任したとするならば、すぐに結果を残せというミッションはかなりハードルの高い要求だと言える。

リカルドロドリゲス監督は2017年から徳島ヴォルティスの指揮を執っている。

徳島ヴォルティスのマネジメント側は「今すぐに結果が欲しい」と要求せず、「中長期的な強化プロジェクト」を要求した。そのうえでのリカルドロドリゲス監督の招聘だった。そんな“理解の出来るマネジメント”のなか、リカルドロドリゲス監督はチーム作りをスタートさせる。

そして、今シーズンが4年目。監督のアイデンティティをチーム全体に浸透させるには短くても2年は掛かると僕は思っている。つまり、リカルドロドリゲス監督が志向するサッカーは今の時点でチームに浸透してきていると捉えることができるし、だとするならば今年は、「結果を残さないといけないシーズン」だと捉えても良いだろう。

【焦らして、誘き寄せて、刺す】
~攻撃時は3-4-3、守備時は4-4-2の可変システム~

攻撃時は「3-4-3」の陣形を取る。スタイルとしては、ディフェンスラインから丁寧にパスを繋ぐ。焦らずじっくりと繋ぐ。

そうする事によって、相手が痺れを切らして自陣へと迫ってくるのだが、これは迫ってきているではなく、徳島ヴォルティスの手によって東京ヴェルディが“誘き寄せられている”という表現が正しいだろう。

ドゥシャンを中心としたスリーバックと、岩尾・梶川のツーボランチが前線と相手の様子を“横目”で伺いながらボールを動かす。この時に地味で重要な役割を果たしているのが、右サイドのWB藤田征也である。積極的にボールを受けるのだが、彼が一番相手を“誘き寄せる”事を意識しながらプレーしているように見受けられる。

試合後のスタッツでは、徳島ヴォルティスの左サイドからの攻撃が「53%」、中央からの攻撃が「26%」、右サイドからの攻撃が「21%」と、左サイドからの攻撃が圧倒的に多い。これは、右サイドのWB藤田征也が相手を誘き寄せ、空いた左サイドのスペースをWB浜下瑛やFW西谷和希が刺した証拠だろう。

自陣での丁寧かつ組織的な“下準備”が終えた頃には前線にいくつかのスペースが生じる。相手を“誘き寄せる”事によってゴールへの抜け道を探し続ける。

【守備時は4-4-2の3ラインで組織的に守る】
~リカルドロドリゲス監督が求めるのは組織的な守備~

局面が守備に入れ替わると、WB藤田征也がディフェンスラインに吸収され、前線のFW杉森考起が中盤ラインへと落ち、4-4-2へと可変する。

東京ヴェルディも徳島ヴォルティス同様パスを繋いでリズムを作っていくスタイルのチームだったのもあり、徳島ヴォルティスは前線から激しくプレッシングをかけることなく、

4-4-2で強固なブロックを形成し、縦に危険なボールが入った際にはガシッと潰しにかかる。

11人全員で組織的に守る。リカルドロドリゲス監督が求める守備である。

誰一人サボる事なく、ボール保持者に対しては必ずアプローチを怠らないし、ボールが横方向へ転がった際には「スライド」、ボールが後ろ方向へ転がった際には「ラインアップ」を必ず地道に実施していた。

【新加入DFドゥシャンはとにかく“前への意識”が高い】~味方DFはカバーリングを意識~

何人かのチームメイトが発言しているように、今シーズン加入したDFドゥシャンは、とにかく前へのアプローチ・潰しが強いし、ハイラインコントロールの意識が強い選手だ。

この試合も東京ヴェルディの中心選手である、FW大久保嘉人とFWレアンドロに対して激しくアプローチを仕掛け、プレーの精彩を欠かせる為の作業を怠っていなかった。

また、ライン統率をこまめに行う事によって、東京ヴェルディのプレーエリアを狭める事に成功していた。非常に組織的な守備が出来ていた。

【バランスの取れたツーボランチ】
~岩尾は“大きいサッカー”梶川は“細かいサッカー”を展開~

この試合ツーボランチを組んだのは、MF岩尾(キャプテン)とMF梶川。

キャプテンでもある岩尾は常にピッチの奥やサイドのスペースを“鳥の眼”で眺めていた。隙があれば、ボールを大きく展開させ、ダイナミックにゲームを創る。

一方の梶川は細かいコンビネーションでテンポを出していきながら、近場の選手へ視線を送り、チーム全体の“潤滑油”として役割を果たした。

とてもバランスの良いツーボランチという印象だ。

【ショートカウンターにもしっかりと人数をかける】~厚みのある攻撃~

ポゼッションスタイルだけではない。4-4-2のブロック網に引っ掛けたボールはディフェンスラインから丁寧に繋ぐ時もあれば、

前線にスペースがあると判断した時は一気にギアをあげ、スプリントを仕掛ける時もある。

ショートカウンターでもゴールを目指すという意識がチーム内でしっかりと共有出来ている為、そのスイッチが入ると、3、4人の選手が一斉に前線へとスプリントを仕掛ける。

ショートカウンターにもしっかりと人数をかける為、シュートで終われる確率も高める事が出来る。

仮にシュートで終わる事が出来なかったとしても、両サイドにはWBがサポートとして待ち構えているので、時間とスペースに余裕のあるサイドにボールを預けてしまうと、もう一度“作戦会議”を行う事が出来る。

よって、厚みのある攻撃が可能になる。

【前線の切り込み隊長が躍動】
~バイタルエリアでのコンビネーション~

セカンドトップに位置するFW杉森考起は細かいタッチと確かなテクニックを持っていながらも、ボールを持ったら必ず“ゴールを意識したプレー”をしてくれる為、鬼に金棒だ。相手からすれば驚異でしかない。

一方、もう一人のセカンドトップFW西谷和希も同じく、細かいタッチとテクニックを持っている。西谷和希はこの試合ハットトリックをかましているが、彼は杉森考起より“フィニッシャー色”が強い選手だ。

杉森考起はドリブルをしながら顔を上げる事が出来ている。パスコースを探しながらボールを前へと推進してくれるので、味方選手も自信を持って動き出せる事ができるし、ディフェンスラインもアップさせる事が出来る。

西谷和希はボールを持った時のプレーももちろん魅力的なのだが、“オフザボールの動き”がより彼を輝かせている。スペースを見つけるのが上手いし、そのスペースを見つけると、パスが出ようが出まいが“躊躇なくスプリント”を行う。この試合はその姿勢が功を奏しハットトリックを達成出来たと思うし、シュート数も「7本」試合全体でトップだった。

【厚い選手層はタイトルを獲るための必須条項】

試合後のコメントでリカルドロドリゲス監督は、「全体的に良かったし、今日試合に出ていないメンバーも今やろうとしているサッカーへの理解が出来ているし、常に準備が出来ている。チームの状態は良い」。

と語っている通り、途中出場で入った選手もチームにポジティブな変化をもたらすことが出来ていたし、

先程も述べた通り、リカルドロドリゲス監督の志向するサッカーがチーム全体に浸透して来ている。

層の厚さはシーズンを通して結果を残す為の必須条項だ。そして、その必須条項を現段階でクリアしている徳島ヴォルティスは今シーズン結果を残す可能性の高いチームだと言えるだろう。

レビューを執筆しながらも、やはり今年の徳島ヴォルティスは注目すべきだと納得が出来た。Jリーグ再開を楽しみに待ちたいと思う。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。