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「道端に落ちてる石を蹴って帰るのはもう小学生男子の必修科目じゃん」
「さーてそれはどうかしら」
「お前、もしかしてやらなかったのか!?」
「そういう教育を受けてきた」
「い、いや、教育なんて蓋じゃどうしようもないほど本能に刻まれた反射行動だろ石蹴りなんて。人間みんなやるぞ」
「びっくりした人外判定されたんですけど」
「嘘だよ、お前今のキャラを守るために記憶消してるだけだって。なんなら禁止されてるが故にそれを破って一度ぐらいやったことあるでしょ」
「誰もがお前じゃないわけ」
「俺は俺を基準に話してるんじゃなくて、小学生男子を基準に話してるんだよ」
「平行線だこれは! 石蹴りせずに普通に帰った方がはやく帰れるだろうが」
「はやく帰るためにあるんじゃないんだよ帰り道は!」
「久々にちゃんと訳のわからないこと言い出したなこいつ」
「徒歩とかいうクソつまらない時間でいかに遊びを見つけるか、その一番初歩的な遊びが石蹴りじゃないですか!」
「まぁやってるやつはいたけども」
「それって実は自分だったりしませんか?」
「帰路で幽体離脱する趣味はなかったから俺じゃないね」
「じゃあお前はあれか……? ただ帰ってたのか……?」
「帰り道だからね……。あ、でも遊びはしてたよ。退屈だったし」
「お前それ全男子が共感できるものなんだろうな」
「俺の件があるからその前提は非常に難しいよ……。とはいえ誰でもやるんじゃない」
「よし、言ってみろ」
「雲の形が何に似てるかを考え続けて、その個数を日々更新していった」
「うお、知らねぇ、異世界の脳め」
「遊び1つでこの迫害ですよ、まったく浮世は地獄だぜ」

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