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「王様にはなりたくないけど王子様にはなりたい」
「へ〜、なんで?」
「実権握るとマジで面倒だけど王子なら何をしなくてもちやほやされて王家のいいとこ取りできるから」
「王子様を、ひいては王様を、さらにひいては王家そのものを嘗めている」
「実際そうじゃん! 漫画では」
「異議異議。漫画を引き合いに出したらもう実際ではありません」
「じゃあ現実における創作物では王子様ってそう扱われがちじゃん!」
「創作物だからね」
「ずりーよその畳み方!」
「だって創作物は自由じゃん。知らんけど」
「議論が成り立たないぜこのフィールド」
「じゃあ仮にお前が王子になったとして、国の催しにはほとんど出席しなきゃ面子が保たれないし下手にだらけた姿を見せたら大炎上だし常に気を張って生きなきゃいけないわけだけど、どう」
「いやだよ俺はもっと適当に寄った城下のパン屋で運命の人と出会って身分違いの恋をする、みたいな王子ライフを送りてぇよ」
「すごい、何を突きつけても諦めないよこの人」
「俺の理想を崩すにはパンチが弱すぎる」
「駄菓子屋とか行けなくなるけど」
「それこそ『これが、世に言う”駄菓子”か!』ってやつできるじゃん」
「強い、強すぎる。にしてもこいつの王子像、ぼんやりしてやがる」

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