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「はいこれ」
「塩飴じゃん。なぜ? 秋ぞ?」
「家出る時ばあちゃんが山ほど持たせてくる」
「あれ、ばあちゃんと一緒に住んでんだっけ」
「鋭いな」
「いや別に」
「うちの結婚記念日の前後に毎年くるんだけどさ、その度にこれ」
「季節感が数ヶ月ずれてるね」
「俺も思ってさ、夏じゃないんだからって言ったんだよ。そしたら」
「そしたら?」
「『秋の味覚だからこれは』って」
「ずれてんのは味覚の方だったか」
「多分塩飴をさんまの塩焼きと同列に考えてんだよな」
「塩という要素しか合致してないのに」
「まぁばあちゃんがそう思うんなら仕方ないか……って思ってもらうんだけど、やっぱ一人じゃ減らなくてさ」
「だから配ってると」
「そしたらプチブームですよ」
「何してくれてんだよ今の季節そんなに塩飴売ってないのに」
「な。しかもここら近辺の塩飴はばあちゃんが買い占めてるから」
「転売屋みたいになってるの気付いてる?」
「あっマジじゃん!! 元締めに買い占めやめさせないと」
「ばあちゃんのことを元締めと呼ぶな」

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