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入院日記

 最近6日ほどの短い入院をしました。耳の下にある耳下腺という組織が炎症の末に膿を持ってしまったらしく、その影響で血液の成分がヤバくなってしまったということが理由です。大した話では無いのですが、備忘録としてあったことを書き残しておきます。

 治療としては膿を物理的に抜くことと抗生剤の点滴で体の中から治すことの2つがメインでした。前者の膿を抜く治療のためには「膿の位置を知ること」が必要らしく、造影写真を撮ることになりました。この写真を撮るために使う薬剤の副作用が強いらしく、検査の12時間前に予防の薬を飲むように指示されました。午後3時からの撮影だったので、午前3時です。寝かせてくれ。俺だってこの午前3時のところ、造影写真が撮れるって頑張ってんだよ! ずっとやってみろ!必ず目標を達成できる! だからこそ Never Give Up!!
 造影写真を取るためには食事制限もありました。具体的にはお昼ご飯がめちゃくちゃ質素になってしまいました。食パン1枚です。この悲しみをジャムを用いて「死」という文字に表した所、点滴の交換に来てくれた看護婦さんに見られてしまい 、めちゃくちゃ心配されてしまいました。

『死の食パン』
看護婦さんからしたら患者が食パンに『死』と書いていたら事件です。紛らわしいことをしてすみませんでした。

 さて食事も終わったらいよいよ撮影本番です。MRIっぽいやつを想像していたので『狭くて暗い所に閉じ込められるの、怖すぎるな』とビビっていたのですが、実際はMRIの輪切りみたいなものが出てきました。CTって言うらしいです。その輪っかに出たり入ったりしながら撮影をしました。途中から出たり入ったりする度に脳内ではスーパーマリオ64のマンタから出る輪っかをくぐりぬけるSEが流れていました。
 10分ほどで撮影は終わりです。しばらくして現像した写真を先生が説明してくれたのですが、何一つ分かりませんでした。とりあえず「はい」と返事していました。あとは深刻そうな顔で「あ〜」とか言ってました。
 翌日は撮影した写真を元に膿を抜きました。針を刺して吸い出すんですけどこれがめちゃくちゃ痛い。本気で泣こうかと思いました。20歳児の号泣を見せてやる。POISONを流したって泣き止まないぜ。そんなこんなで合計三本刺されました。その他採血や点滴などを含めると数日で一生分の針を刺された気がします。
 話を点滴に変えますと、どうやら僕は血液が逆流しやすいらしいみたいです。点滴で薬を送り込んでも、血液が押し返しちゃう。僕の血は流れに逆らって進む習性があるチャレンジ精神に溢れる奴です。鮭みたい。そのためポンプで無理やり薬剤を押し込むことなりました。なんか点滴にゴツい機械がつくだけで一気に重病感が増します。だからなんだと言った話ですが。

  その後は膿の吸出しと点滴の継続により、僕の体は快方に向かいました。しかし、入院の所為で中間テストを受けられずに落単が確定した必修科目や、早すぎる消灯時間(9時)、病院特有の鬱蒼とした空気などの様々な要因がメンタルに確かなダメージを与えていました。これらに加えて免疫反応で高熱が出ていたので、僕の精神状態はまともではなかったでしょう。そんな中、奴は現れました。消灯時間になっても熱にうなされてなかなか寝付けずにいたときです。

   「キョン! トイレに行くわよ!」

 ハルヒが連れションに誘ってきました。恐らくハルヒは連れションをしないでしょうし、百歩譲ってもキョンは誘わないでしょう。そもそも僕はキョンではないし。全てがめちゃくちゃなのですが、僕は彼女に導かれるままに行きたくもないトイレへ向かったのでした。やれやれ。
 僕は意味もなく便器の前に立ち尽くしました。しばらくすると冷静になってきた僕が自分自身に「どうしてこんなことしているんだ」と問いかけます。考えてしまうと辛くなるので、僕は誤魔化すように隣の便器に移動しました。移動を繰り返して4つの便器全ての前に立ち終えると謎の達成感がありました。スーパーマリオ64ならばこれでピラミッドの天井が吹き飛び、手に目玉の付いたボス(イワンテというらしい)に会えるはずです。4つのトイレに たつものへ。そんなことを考えながらふと鏡を見やると、自分が泣いていることに気が付きました。どういう感情なのかは本当に分からない。
それから暗い病棟をわざと遠回りして自室に戻りました。徘徊老人ってこういうメンタリティーなのかもしれないな。その日は全然眠れませんでした。(転調~)

 そんなこともあったのですが、僕は単純な人間なので具体的な退院の日にちを提案されただけでわりと元気になりました。生活リズムと空気に慣れてきたことや熱が引いてきたことも原因でしょう。
 そのままの流れで炎症が再発することもなく退院まで漕ぎ着けることができました。オチはありません。 (完)

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