SHS少年 ~アイドル邂逅編~

2と一緒に消しちゃったので再投稿です

 アメリカ コネチカット州のある少年は四六時中食べては歯を磨くことを繰り返している。一日の摂取カロリーは10000kcalを超え、歯磨きの回数は20回以上にも及ぶ。彼はなぜこのように異常な生活を続けているのだろうか。そこには日本のとあるアイドルが関係しているのだという。

 彼がこの生活を始めるきっかけとなる運命の日が訪れたのは6歳の頃。その日、通っていた幼稚園では歯磨き指導会が開かれていた。そこに現れた日本人アイドルこそ矢吹可奈であった。彼女は当時、全世界の幼稚園を訪れて歯磨き指導を行うという仕事の真っ最中であり、その一環としてコネチカット州にもやって来ていた。彼女の元に行われた歯磨き指導会は終始和やかなムードで進行した。やんちゃ盛りの子供たちが歯磨きの指導を大人しく受けることは異例のことであったという。件の少年も例に漏れず彼女の歯磨き指導を大人しく受けていた。そんな子供たちを彼女は『偉い、偉い』と嬉しそうに褒めたという。少年は彼女の賛美の虜となった。歯を磨けばカナが褒めてくれる。そう盲信した少年は彼女が帰国してからも尚、幻想を追い求めて歯を磨き続けた。彼女が行った『食べたあとは歯を磨こう』の指導に基づき、歯を磨く前には必ず食事を行うことも忘れなかった。もはや歯磨きのために食事をしている異常さにすら彼は気が付けない状況にあった。そんな生活を続けた彼の体重は6歳にして50kgを超え、歯は摩擦によって歯茎が露出するほどすり減ってしまった。この状態では歯を磨くことなど出来ない。『このままではカナに褒めて貰えない』と少年は日に日に思い詰めていくのであった。歯が完全にすり減ってしまってから1ヶ月ほどしたある日、彼は口の中に何か違和感を感じた。両親に相談してみるとそれは永久歯なのだという。そう、すり減ってしまったのは乳歯であり仮の歯である。少年の口内には成長を経て強くて丈夫な歯が芽生え始めていたのだ。全ての歯が生え揃うと少年は異常な回数の歯磨きを早速再開した。丈夫な永久歯はなかなかすり減らず、10歳となった今でもその習慣は続いている。

 取材に赴いた我々に彼は笑顔で今まで消費した歯ブラシを見せてくれた。優に千本を超えたそれは『自分とカナを繋ぐ絆』なのだという。それだけ言うと彼は次の歯磨きのための食事に出かけて行った。

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