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料理の四面体で遊ぶ - 料理ボードゲームの開発

料理の四面体を使ったボードゲームの、ルールなどを共有するためのページです。🧪分子調理研究会の会誌Vol.11に寄稿した記事の補足説明として書きました。
玉村豊男著の「料理の四面体」(中公文庫)に描かれている、四面体に実際に触れてみたくなって作ってみたゲームです。テストプレイをしながら、ルールを修正し続けているので、しばらく更新・修正が続くと思います。

錬金術師と料理の四面体 ゲームの駒は磁石で張り付きます

ゲームの概要

【背景】
あなたは、王に使える錬金術師。このお城では錬金術師が王の食事を作ります。気まぐれな王様の”食べたい食材”を確認したら、“料理の四面体“の前で、料理の名前をとなえ、テーブルに料理を呼び出してください。王様の機嫌を損ねるような料理をお出しすることは、全員の命に関わること。仲間の錬金術師とともに、王様満足いただける料理だけをお届けしましょう。
【勝利の条件】
このゲームで生まれる料理は、あなたの唱えた“料理名“で決まります。ただし(1)王様の望んだ材料と(2)決められた調理方法の中で、完成できる料理の名前を唱えなければいけません。
調理方法は“料理の四面体“で決まります。変化する四面体の中に閉じ込められた水・油・空気・火のバランスを見て、その力を使ってください。
仲間より早く、王様にお届けする3つのプレートを揃えたプレイヤーが勝者となります。

ゲームの準備

ゲームの仕様
👀プレイ人数 2~4人
⏱ プレイ時間 15分~
👩‍👦 対象年齢 8才~

コンポーネント

1. ゲームボード(料理の四面体)1個
2. リサイクル桶 1枚
3. 👑カード(王様の食べたいものリスト)=食材 20枚
4. 🎲ダイス 6面ダイス=熱媒体の決定 4面ダイス=火力の決定
5. 📌マーカー ピン型マグネット 赤5 黃5 青5 緑5
6. 🥇勝利の証
🟡金のクロッシュ 12個 美味しい料理を温かいまま保存する器具。魔力で守られており、王様以外の者は開けることができない。
🟤錬金調理師の帽子カード 6枚 金のクロッシュ3個文の料理を、王様に届けた調理師のみが授かる、栄誉ある調理師の帽子 


ゲームのコンポーネント(手作り+100円ショップ+Midjourney画)

ゲームの準備

四面体を組み立て、テーブル中央に置きます。
リサイクル桶ボードを近くに置きます。
ピン型マグネットを、色分けして5個ずつ配ります。
親を決めます。(一番最近料理をした人など)
ダイス、勝利の証を、親の近くに置きます。
親がカードをシャッフルして、食材の面を下にし、重ねたまま置きます。

ゲームボード「料理の四面体」の構造

ここに説明を追加する予定です。(執筆中)
※公開してから肝心な部分がぬけているのに気づきました。
しばらくお待ちください。これがないとこの後のルール説明は、何を言っているのかわからないはずです。
・魔法の道具料理の四面体とは
・底になる三角形の頂点に、魔石水の石・油の石・空気の石を配置し、上部に火の力閉じ込めた火の石を配置した四面体。

ルールの説明 (暫定ルール)


親が各プレイヤーそれぞれに3枚のカードを配ります。
各プレイヤーはカードを確認後食材を下にして置きます。

親から手番がスタートします。

◆🎲◆ダイスの目にあわせてマーカーを置く

6面ダイスと4面ダイスを同時に振ります。自分の色のマーカーを持ち、6面ダイスの示した数字を確認して、水ラインから時計回りに数えたラインの下に置きます。6面ダイスの示した数字を確認して、次に一番下の段を1として4面ダイスの数字の表す高さにマーカーを置きます。この場所が料理の四面体が示す、あなたが使うべき料理ポイントです。
例)6面ダイスが”3”4面ダイスが”2”の場合、マーカーは揚げ物ラインの低温部分。(火の通りにくい根菜類の素揚げに良い)となります。

◆👑◆手札(王様のご所望)を確認する

あなたの持っているカードの食材は、王様の食べたいと思っている食材です。そのまま3枚のカードを使っても、2枚だけ使ってもOKです。使わないカードは裏を向けて伏せ、自分の手元に取っておくか、リサイクルの箱に表を向けて置く(捨てる)ことができます。
例)カード ①玉ねぎ ②チーズ ③ごぼう   リサイクルボックスに送る②チーズ

◆📣◆宣言(料理生成の呪文)

「ごぼうと新玉ねぎのかき揚げ!」
(炎とともに、料理が出現するのをイメージしましょう)

◆🃏🃏🃏◆手札を見せる

料理名を宣言したあと、他のプレイヤーに使用した食材カードを見せます。
例)カード ①玉ねぎ ②チーズ ③ごぼう
追加で料理のアピールも大切です「国王はこの初物の新玉ねぎを、毎年楽しみにしておられます!」

◆🥇◆他のプレイヤーによる判定

王様にお出しするのにふさわしいか、他のプレイヤーによって決定します。
合格の場合は、勝利の証である金のクロッシュが親から渡されます。完成した料理はこの中に温かいまま保存されています。
使った手札(2枚)は、山札の横に表を向けて置きます。

◆🃏🃏🃏◆手札を補充する

手札が3枚になるまで補充します。
例)今回は1枚を捨てて2枚を使用したので、親から3枚もらいます。

◆👉🏼◆次からのプレイヤーは

時計回りに次のプレイヤーが同じように料理を作っていきます。
◆🎲◆ダイスの目にあわせてマーカーを置く
 📝もし、同じ場所にすでにマーカーがあったら
 上下左右の空いている好きな場所を選んで置くことができます。
◆👑◆手札(王様のご所望)を確認する
 📝もし、リサイクル箱に欲しい食材があれば、好きなだけ自分の食材と交換することができます。
◆📣◆宣言(料理生成の呪文)
◆🃏🃏🃏◆手札を見せる
◆🥇◆他のプレイヤーによる判定
これを続けて、最初に3つ、金のクロッシュを集めたプレイヤーが優勝です。優勝したプレイヤーには、錬金調理師の帽子(カード)が授けられます。

面白さのポイント

面白さのポイントはどこ?

ルールを書いてみましたが、面白さのポイントが伝わりにくいですね。
友達と調理の方法について話す機会は、専門の方以外は少ないと思うのですが、このゲームをプレイする事で調理法についての会話が楽しめる、というのが一番の良さだと思っています。
基本部分は、カードの組み合わせ遊びですが、その調理を魔道具「料理の四面体」で行っているのだ!という思い込みがプレイを楽しくするはずです。
なにしろ、この世に存在する料理のすべてだけなく、過去や未来に存在するであろう料理のすべてが作れる道具なのですから、発想を止めるものはありません。
ムリそうな食材と調理ポイントの組み合わせで、苦し紛れに宣言した料理から新しい料理が生まれるのがゲームとしての面白さのポイントだと思います。
このゲームを作ろうと思ったのは、中公文庫『料理の四面体』にある”すべての料理を包括する一般原理を、目に見えるかたちで表現したモデル”(文庫版P231)がとても興味深く、2次元の絵を見るだけでなく、手で触ったり回してみたいと感じたことがきっかけです。個人としては、それだけで楽しめるのですが、これを前にして料理について語るのは楽しいだろうなと思い、話しながら遊べるゲーム化を思いつきました。

図2:料理の四面体基本モデル 玉村豊男著,『料理の四面体』,p. 229(中公文庫版),鎌倉書房,1980,一部加筆

チュートリアル的なもの

ルールの説明前後に、料理の四面体という魔法の調理器でどんな料理が作れるか!?のチュートリアルが必要かもしれません。どんな食材でもこの料理の四面体ならも、マーカーを置いた調理ポイントで、さまざまな料理にすることができます。
底面にある三角形の頂点に熱の媒体になる水・油・空気を配置してあり、それらを結ぶ上の点に火の力を配置して作られました。水の点から少しずつ点を火の方向に動かしていくと、火の力が強くなり、水がぬるま湯・お湯・熱湯となります。これを水のラインと呼びましょう。水のラインの一つ右に お湯の上にあるマーカーを横向きに空気のライン
テストプレイでは、『料理の四面体』を知らない人にもわかりやすく、マーカーを使ってこのタマゴの例を説明し、理解してからゲームを始めるようにしています。

タマゴをいろんな調理法で料理にする

「王様がタマゴ料理を召し上がりたいとき、水から火につながる煮物ラインの中間に置くとゆで卵に。油から炎につながる揚げ物ラインの中間に置く(タマゴを割って油に入れる)と、揚げ卵ができます。油と水の中間で、四面体の下に位置する部分(火の影響が弱い常温で油と水が混ざった場所です)にタマゴを置くと、水を酢に読み替えて混ぜれば、マヨネーズを作ることもできますよ!」
ゲームの導入說明時にこの話をして「揚げタマゴって!?そんなの無いでしょ?」と言ってもらえると、都合が良いいのです。タイの屋台にはナムプラ(魚醤)をかけて食べる美味しい揚げタマゴがあるそうで(これは『料理の四面体』P111に書かれています。)、自分ではあり得ないと思っていた組み合わせを、他のプレイヤーが知っていて調理の知識が増えることや、考えてもみなかった調理法に気づくことが、このゲームの魅力だとお伝えすることができるからです。


テストプレイ協力求む

テストプレイを行っていただくために、プロトタイプの貸出や、ダウンロードできる、ゲームボードやカードデータ、などの準備をしています。
試してみたい方はご連絡ください。

郵送しやすい設計にしています

課題は山積み、でも面白い。(※別記事にする予定)

課題1 結構問題な、謎の料理ポイント。

執筆中です・・・・・
油と空気の間のラインが謎の料理ゾーン。誰かに教えてもらいたい。

スプレーから噴射される油は、オイルと空気の中間というには少し違う気もするが、オイルスプレーを使ったレシピはクックパッドで、121種もあります。油の量を減らしてつくるダイエットにいい料理なのです。

追記)この謎の油と空気地帯は、ノンオイルフライヤーの調理ではないかとコメントをいただきました。なるほど!
下辺のポイントは、常温で油をスプレーした食材を思いつけば成立しますね。

謎のゾーンで調理ができるか

課題2 熱媒体別の異なる温度帯

四面体上の各ポイントを何度に設定するか悩んでいます。
料理の四面体では、底面の3つのポイントは、生の世界の常温23℃、上部の火の点は火の影響が100%で、水・油・空気の影響は0%という曖昧設定のため温度不明です。ゲームとしてはある程度はっきりと設定したいのですが、熱媒体の差もあるため難しいのです。仮に水の煮物ラインは沸騰する100℃を上部の点に設定すると、油はギーの発煙点の230℃まで、空気と水の間にある蒸し物ラインでは、ヘルシオの300℃に設定することも可能です。空気では何度がいいのか?各ラインで温度域がバラバラになっても、わかりやすい方がいいのでしょうか。

課題3 熱媒体の読み替え置き換えルールはOKか?

水のライン(煮物ライン)はお湯だけでなく出汁にも変えられるルールにしています。油も、読み替えができたほうが、料理の幅が広がって楽しそうです。では空気を大気以外に変えたらどんな料理ができるのか?もしかすると窒素料理とか、、、と思ったら分子調理の分野では、液体窒素で凍らす調理がすでにありました。ゲームボードをマイナス方向にも拡張すれば、この場所でも料理ができそうです。しかしちゃんと立つのかどうか?

課題4 食材の移動による調理と料理の式

課題5 発展形をつくる事は可能か?
現在のルールでは、実際の料理ではよくある食材をタレに漬けこむ→焼くなどの2工程の調理が再現できないのです。でも四面体上を移動しながら調理していくのは、きっと面白いはずなので、この要素も加えていきたいと思っています。
また、”料理の式”で示されるような、切ったり混ぜたり包んだりという、食材の形態を変える料理の要素を加えるとさらに面白くなるのでは、という期待もあります。(複雑すぎるかもしれませんが)


参考資料

・玉村豊男,料理の四面体,中央公論社,2010,
・レヴィ=ストロースの料理構造論 ―料理の三角形から料理の四面体へ― ,川端晶子,日本調理科学会誌Vol. 44
・川端尚子,調理のサイエンス(どうしておいしくなるのかな?),柴田書店,2000,
・Jesse Terrance Daniels,自分だけのボードゲームを作ろう ―ゲームをデザインして、作って、みんなでプレイする,オライリージャパン,2022.
・🍎日本食品標準成分表
・🧪 分子調理研究会 新しい料理を生み出すためのサイエンスとテクノロジーを考える研究会です。
・料理の式を使ったゲームのようなワーク サイエンスアゴラあらゆる料理を“式化”する ~料理を「料理の式」でとらえ、新しい料理を生み出そう!~