遊旅報告書10

       「剣聖リトルミルク。戻られたのですね。」

「ただいま、で良いのかしらね。
 報告書は何時ものとこに置いといたから、
 暇なときにでも読んどいて。」

       「ええ。」

「それより、何で誰も居ないの?」

       「西の計略です。」

「西……西?
 西だと、あいつは確か、黒…なんだっけ。」

       「黒竜王の。
        覇竜族を統べている王ですよ。」

「あー、それ。それが?」

       「あなたが、転移したことを知った様です。
        それを、剣聖全員に。」

「は? 誰も居なかったわよ、他の剣聖なんて。」

       「なぞったのは、転移という部分だけですよ。
        皆をバラバラに、大陸の何処かに
        転移させたのでしょう。」

「ふぅん…物理的に距離を、ってことか。
 そんなの、時間稼ぎにしかならないんじゃないの?」

       「輝士団全員で対応しておりますが、
        領内の各地に同時侵攻をかけられています。
        つまり、時間が稼げれば充分、と考えたのでしょう。
        御丁寧に、降伏の勧告文まで届いていました。どうぞ。」

「あっはは。ほんとに降伏勧告されてんじゃん、これ。
 舐められてるわね、輝士団。」

       「ええ。少々、目に余りますね。」

「で? 何時も通り、剣聖が全員揃うのを待ってから?」

       「いえ。目に余りますから。」

「あら。つまり、私と議長で、片付けちゃおうって?」

       「あなたひとりで十分でしょう。」

「珍し。私だけに任せるなんて。」

       「逆ですよ。本来、この程度のことは。
        剣聖ひとりで、如何とでもなると。」

「あはは。良いわね、それ。そのとおりだもの。」

「議長。この降伏の勧告文に、返事出しといてくれる?
 議長なら、一瞬でお届け出来るでしょ。」

       「構いませんが、なんと?」

「手加減は、どのくらいして欲しい? って。」

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