三角比の利用
こんにちは。
突然ですが皆さんは三角比という言葉を聞いてどのようなことを思うでしょうか? おそらく「公式が多すぎて嫌いな分野」「日常でいつ使うのか」などマイナスなイメージを持つ方も多いでしょう。
今回はそんな三角比について日常でどのように使われているのか説明したいと思います。
1.三角比の誕生
まず、三角比の誕生の仕方についてみていきましょう。
三角比のもととなるアイデアは紀元前の古代ギリシャで考え出されたとされています。日々の生活や農耕には、土地測量や正確な暦を作り出すことが必要だったからです。そして、暦作りのためには天球上の星の位置を正確に記録することが必要でした。
例えば、天球上の星の高さは直接測ることができません。そこで当時の天文学者は「星を見上げる角度」と「弦」の関係を利用しました。天球の大きさを決めておけば、その比で星の高さを決めることができます。これが現代の三角比へとつながる考えとなりました。
2.3つの三角比(サイン、コサイン、タンジェント)
日常でどのようなところで使われているかを見る前に簡単にみておきましょう。
・3つの重要公式
sin²θ + cos²θ = 1
sinθ / cosθ = tanθ
1 + tan²θ = 1 / cos²θ
さて、次のパラグラフからこの3つの三角関数の利用について見ていきます。
3−1 サイン( sin )の利用
サインの値はどこで使われているのでしょうか。
例えば、それはソーラーパネルを設置する時に使われます。ソーラーパネルは、太陽光を垂直に受けるように設置することが理想だからです。また、太陽高度は一般に、緯度が高いほど小さくなり、低いほど大きくなります。
東京ではソーラーパネルを南に地上から30°ほど傾けるのが望ましいとされます。その時、ソーラーパネルの支柱はどのくらいの高さにすれば良いでしょうか。
ここでサインの値が使われます。30°に対するサインの値は1/2です。よって、このような式が成り立ちます。
[支柱の高さ] = [ソーラーパネルの長さ] × [sinθ (ここでは1/2 )]
※ちなみに札幌では35°、沖縄では20°の傾斜角で設置するのが望ましいと言われています。
3−2 コサイン ( cos ) の利用
続いてコサインの利用方法ですが、日本の歴史上にこのコサインの値を使って偉業を成し遂げた人がいます。
それはGPSのない江戸時代に非常に正確な日本地図を作り上げた伊能忠敬です。
伊能忠敬の測量方法は
1.梵天を持つ人の目に象限儀を合わせて傾斜角を測る。
2.鉄鎖と呼ばれる道具を使い、二点間の距離を測る。
3.求めた距離に対するコサインの値を計算し、水平距離に換算。
という3つの行程です。(下図)
図中にもありますがこの時の計算式は、
[水平距離] = [斜辺の距離] × [cosθ]
となります。
また伊能忠敬は「八線表」(今でいうサイン、コサイン、タンジェントの書かれた一覧表) を携帯していました。
3−3 タンジェント ( tan ) の利用
続いてタンジェントの利用です。タンジェントは皆さんご存知の通り傾きを表します。この傾きというのは、バリアフリー社会を作る上でとても重要です。例えば、駅などにあるスロープの勾配は、「バリアフリー法(6条②)」で勾配を「 1/12 」にするように定められています。( 傾き1/12 ≒ tan4.8° )
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/machizukuri/bfree/pdf/kousyu_02.pdf
4.最後に
さて、三角比の利用についてどうだったでしょうか。少しは身近に感じられたのではないかと思います。今回はソーラーパネル、測量、バリアフリーの3つの利用方法を紹介しました。これ以外にも日常で使われている三角比はたくさんあります。街を歩く時、sin,cos,tanの値を使えば求められそうなものを探してみるのも楽しいのではないでしょうか。
・参考文献
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