永遠なる7番

今から6年前、2016年4月12日CL準々決勝vsヴォルフスブルク戦2ndleg、クリスティアーノロナウドのハットトリックによりマドリーは見事大逆転をした。彼のことは昔から知っていたがマドリーの虜になったのは明確にこの日だと言える。ハットトリックして逆転勝利、容貌、勝負強さ、ゴールセレブレーションの全てが私の少年心を掴んだ。6年も前の話だが彼に抱く私の思いは全く変わっていない、それ程に彼のファンである。

そしてマドリーの試合を見続けた。本当に魅力の塊だった。国内では当時バルサが強かったが、マドリーは国際舞台で最強というのがまたよかった。リーグ戦ではメッシが得点王をとる中、クリスティアーノはCLで得点王を破竹の勢いでとっていたし、リーグ戦にはないCL特有の雰囲気で活躍し続ける彼は、私を完璧に魅了していた。CLは2戦合計のスコアで争う、たった2回だ。
欧州トップのチームと戦う中すべてを勝ち切らないといけない、勝負強さを求められる戦いだ。そんな舞台でチームを救い、攻撃の要をなし続けたクリスティアーノが大好きだ。彼が成し遂げた感情的な瞬間は脳裏に焼き付いている。特に16・17シーズンのCLは私の中でのベストCLで、彼は決勝で2ゴールをするわけだが、その1ゴール目が本当に美しい。紫色のユニをまとった金髪が少し入った彼があまりに主人公だった。あの右側からカーブしながらゴール左に吸い込まれるシュートが。

で、彼は17・18シーズンをラストにしマドリーを去ってしまった。正直言って驚いた。なぜCLで得点王になり尚且つ3連覇をした後に行ってしまうのか、彼の中でマドリーに対して不満があったのかってガキだった自分にはよくわからなかった。でもロシアW杯のスペイン戦のハットトリックをみて、きっと彼ならどこでもエースになれるんだろうなって分かってたからそこまでのショックじゃなかった。実際ユーヴェでも異常なペースで点を取ってたからね。でも少し気になることがあった。

彼はCL得点王を取り続けていたわけなんだけどユーヴェに行ったら前ほどの脅威じゃなくなったんよ。気になっていたけどファーストシーズンは、周りの質が下がるから仕方ないよなってことにしてたんだけど2年目からも取らない。流石に少し心配になった。リーグ戦では圧巻なのは分かってたんだけど強豪相手のCLが微妙なんだよね。でどうしてもセリエAだからリーグ戦を彼の指標にしないほうがいいんじゃないかって思い始めた。
3年目のCL対バルセロナではPKで確か2ゴール決めてたんだけど、そもそも当時のバルサが崩壊状態だったからっていうのもあって安心できずにいた。そしてベスト16vsポルト戦でクリスティアーノは点を取れずユーヴェは敗退した。まあ次節のリーグ戦でハットトリックしてたから流石だなって思ったけど衰えを感じられずにはいられなかった。もちろんリーグ戦では3年目で得点王取ってたから圧巻だったよ、でも国際舞台ではね。。

4年目を迎えようとしていたころ、彼は移籍を求めた。最初はシティが有力だったけれど、恩師ファーガソンの電話で彼はユナイテッドに電撃復帰した。彼の復帰試合第2節、vsニューカッスル戦。オールドトラップフォードは歓声に満ち溢れていた。それに後押しされたのか彼は2ゴール、端末越しから伝わるスタジアムの熱気は私の鼓動を後押しした。ああ、よかった。プレミアリーグでまだまだ行けるんだ、衰えてなんかいなかった、クリスティアーノは永遠だ、そんなことを考えてたっけ次の試合も1点取った。ほっとしたよその時は。そして迎えたCLグループステージ。最高だった。絶望的なスールシャールユナイテッドを彼は一人で持って決勝トーナメントへ行った。ビジャレアル戦のヘディング弾、アタランタ戦の技ありミドル。彼ならまたトーナメント戦で爆発してくれるかもって、しかも相手はアトレティコ。彼ならできる、というかシメオネアトレティコにハットトリックできる選手なんて彼しかいないって。でも現実は非情だった。結局1点が遠く勝てなかった。彼のCLトーナメント戦の直近のゴールは18/19シーズンのリヨン戦が最後、実に3年前の事だ。でも私はどうしても彼を信じたかった。彼ならできる、というか周りのレベルが低いんだって本気で思っていた。マドリーにいたらよかったって。
で私の願い通り、世界一のプレミアリーグで彼は大活躍した。トッテナム戦、続くノリッジ戦、2戦両方逆転ハットトリック。彼を信じた自分は間違ってなかったって思った。というか久しぶりに本当のクリスティアーノを感じた。怪我人、戦術的な不安を大きく抱えたチームの中、孤軍奮闘しプレミアリーグ特有の力強い大歓声を巻き起こす彼はどの選手より輝いていたと思う、彼のキャリアを振り返ってみても私の中でお気に入りの2試合だ。そんな絶好調の最中、彼は息子を失った。いくらメンタルが鬼の彼にとっても流石に重すぎる事件だだった。だが亡くなった後のリヴァプール戦前半7分、アンフィールドの全KOPがYNWAを英雄のために唄った、私たちは一人じゃないって。
キャリアの中でも最もエモーショナルな瞬間だった。でもいつまでも悲しみに浸るわけにはいかなく、彼が居なければ得点源はなくなり、ヨーロッパリーグ圏内すら怪しい。彼は残された重要なチェルシー戦、アーセナル戦で得点したがシーズン18点の3位に終わりユナイテッドはリーグ戦5位となりCL男のシーズンは幕を閉じた。

彼のキャリア初のヨーロッパリーグが決定した歴史的な瞬間だった。正直言って最悪だった。私の中でのロナウドは欧州一のストライカーでメッシと競える唯一の選手なのだから。なぜ36歳が大活躍したリーグ戦で5位に終わってしまうのか、やるせない気持ちになった。で、彼はプレシーズンマッチに欠席した。様座な憶測が飛び交っていたがそんな中シーズンを開始した。ロナウドは殆どベンチスタートで後半出場が当たり前、ELでスタメンになった。正直言って彼は屈辱を感じただろうね、でも確かに仕方なかった。ロナウドに呪いが罹ったかのように点が入らない。ユナイテッドの多くの若手は私同様、彼がヒーローであったから彼の点を求めるんだけどどうも入らない。完全に衰えを感じた。ELで初ゴール取った時は大喜びしたし、エヴァートン戦で好プレー見せてた時は希望も感じてた。でもやっぱ入らなかった。信じられなかった。なぜ数か月前世界一のプレミアリーグで得点を量産していたのに、いきなり入らなくなるのか。今も信じられない。直面したことがない得点面での問題に彼はフラストレーションを抱え監督との関係は悪化、ワールドカップを控えた直前に物議をかもしたインタビューは彼を対談へと導いた。

CL、3大リーグ、代表、欧州での全てを勝ち取った彼に残された最後の存在がW杯だった。確実に最後の大会で、優勝以外の道はなかったし、ユナイテッドを去った彼にとっては新たなビッククラブにアピールするための最後の国際舞台だった。彼はGL初戦に自らPkを得て、そして決めた。まずは新記録を塗り替えることができてホッとした。プレーの質は悪くなかったし調子を上げていけば得点はあり得るなとも思っていた。でもそれが遠かった。あまりに。ポルトガルはgl首位突破したけれどトーナメント戦でロナウドはベンチスタートだった。そして初戦はゴンサロがハットトリックしポルトガルは見事優勝への一歩を踏み出した。でも明らかに時代の移り変わりを感じて少し寂しかった。そして次節モロッコ戦でまさかの敗退。彼はまたもベンチスタートで結局一点が入らなかった。彼は初戦のガーナ戦以降点を決めれず最後のワールドカップを終えた。モロッコ戦後、彼は涙をこぼさずにはいられなかった。彼の重すぎる涙をみてかつての栄光が脳内に再生された。いつかのヴォルフスブルク戦、マドリードダービーでのハットトリック、2017年の圧巻のCLからのバロンドール、ラストシーズンのオーバーヘッド、全て鮮明な記憶として残っていた。



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