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唄を忘れたカナリアは遠くの海に捨てませう


わたしは唄うたい

わたしはずっと歌っていたかった

歌っていたかった

歌っていたかったの

もう、歌えない

変な声で、響きも悪くて、ピッチも不安定でリズムもさほど優れていない。特にわたしの歌をききたいひとは居ない。誰にも求められていない。

でも、歌ってた

悲しみのあまり、好きな曲もきけなくなり、歌えなくなった。口ずさむことさえできなくなった。

すべてのわたしの好きなことが何もできなくなった。こんなことってあるんだね。

わたしの前に拡がる虚無に、なすすべもない。

すべてが、リセットされた。

何も無くなった。

全てがキラキラ輝いていたのに

全てがどこかに行ってしまった

神さまもいなくなった。仏さまも。

ただ気がつくと泣いていて

もう、どこにも何もないし、誰もいない。

わたしは異次元に置き去りにされたタイムトラベラーみたい

できるなら30年前にもどって、すべてをやり直したい。どうやっても、いまのわたしになるかもしれないけど。

わたしは歌を忘れたので遠くの海に捨てられたの?


いえ


遠くの海に捨てられたから歌を忘れたの


もう、自力ではもどってこれない

もとの場所へ

もとの場所など無くなってしまった

わたしの居場所はとごにもない

誰も居ない

誰もわたしを必要としない

誰もわたしを待っていない


「百億の昼と千億の夜」という小説があり、わたしが読んだのは萩尾望都の漫画だけど、あまりの虚無と絶望に、愕然とした。ナニコレ、世界は無いの?世界はどこへいったの?この世はなに?すべては幻?あの絶望感に似ている。

これは虚無だったのだ。

ゲームみたいに終了して何事も無かったようにまたスタートできたらいいのにね

人生はもう終わったの

スタートはない。

カナリアは死ぬ

虚無の海で、溺れて。




とにかく生きるために使います!死にたくなるなるまで、ぼちぼち生きるために。