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20180902 | これが〈えんげき〉っていうんだよ

劇団やりたかった「オズの魔法使い」。
少し前からSNSで気になっていた、劇団やりたかった。
ネーミングがひっかかる劇団はそれだけでけっこう当たりのような気がするものだ。

夏休み公演ということもあり、6歳以下は5円。大人は2000円。
息子にとってちゃんと通しの芝居を観たのはこれが始めてだったと思う。
元々怖がりな息子は最近益々雷や人の大きな声などに敏感になっていて、そんな息子を連れてわたしも缶ビールは念のため買ったけど(飲食はもちろんアルコールOKのピクニック感覚で観れると事前情報あり)内心ドキドキしながらの観劇だった。

開始早々、大きな声のドロシー登場で息子ボソッと「おうち帰る…😶」早ーい!
内心焦りながら「そうだねー帰りたいよね、ドロシーも帰りたいんだって!どうやったら帰れるのかな〜🤗」

なんとか居直らせ、しかし油断はできないものでほどなくして悪意の魔女が出てくると彼の中の警報が鳴ったらしい。
「おうち帰る〜〜〜!😢」レベル10で言うとレベル8くらい。一旦出るかーと思っていたのだけど、悪意の魔女もなんか間抜けでお茶目なところがありそれを察したのかすこし落ち着いてまた居直る息子。
お、おお?おお〜〜〜!という歓声を心の中で上げるわたし。
その後もライオンやルシファーの登場で何度も彼の中でピンチを迎えるも、全員がどこか憎めないキャラクターだったり、合間合間で起こる小ネタの数々に息子は笑う余裕はないものの敏感に察知している様子。
パニックに陥らず冷静に観察してるんだな〜すごいな〜とわたしはわたしで親ばかな考察。

そんなこんなで終盤に差し掛かっても、わたしの膝の上に乗る小さい身体はすこし震えて小さい心臓がずっとバクバクしているのを聞いていた。(足の痺れはピークに達していた)
親心としては、無理強いしたのかな〜とか色々心配になっていたのだけれど、
ラストシーンのまさかのオチで息子の表情もがらりと変わる。なんだろう、逆に彼は安心した様子だった。よく見慣れたものを目にしてなのか、なにかを理解したような顔をしていた。
さっきまで手をつけなかったじゃがりこをボリボリ食べ始め畳み掛けるセリフと役者に目も耳も向けていた。

これ、明確にオチを言っていいのかわからないから伏せながら書いていくけど、
このオチが素晴らしかった。
脱帽するほどではないのだけれど、こどもが笑い転げ、大人がホロリとしてしまうくらいの、ナイスセンス。

劇団やりたかったの表現には、こども向けだからこれはダメ、とかやめておこうとか、そうゆう妥協みたいなものを感じることがなくて、むしろ、だからこそ、寛容で完璧ではなくて、きれいごとでもなくて、みっともなくてもたのしいことはたくさんあるし、生きること、人に出会うことはおもしろいんだよって、わたしがこどもに見せたい世界が詰め込まれているように思えた。

と同時にこども向けな顔をして、むしろ大人のわたしたちのほうに矛先は向かっていて、こども向けだなんて思って油断してるとグッサリバッサリとぶっ刺されてしまうシーンや台詞がいくつもあった。
こども置いてけぼりだよね?!って思うような小ネタも満載なのだけど、そこは役者のコミカルな演技でこどもらもわけもわからずドッカンドッカン。
老若男女とか多様性とか懐の深さとか、わたしの中でだいぶアツイワードを感じて元気をもらった。大人も経験をもらえてこどもとたのしめるものって案外少ない。

息子にとっても、1時間の観劇は旅のようなものだったろうか。一杯のラーメンが、一冊の本が、人生を変える、なんてフレーズがある(あるよね?)のだ。
出会うこと、経験がすべてだと思う。

観劇後に劇場を出ると、1組の親子がいてお父さんが娘に「これが〈えんげき〉っていうんだよ」と声を掛けていて、頷きたくなるような気持ちになった。
いつかはこどもの知識が追いついて(追い抜いて)自分の頭で考え、選ぶようになる。それまではわたしの知っているできごとを息子は身体で感じるんだろう。その経験には名前があって、その経験の名前を教えることもわたしにはできる。
すぐに役立つことはなくても、どこかでまたその経験に出会えたときの為に、わたしは今彼を連れ歩く。
どうせあと十数年しか一緒に歩いてはくれないのだから、ちょっとくらい彼にとっての不本意があってもいいか、と思ったりもする。

帰り道、今日見たやつどうだった?と聞いたら「んーこわかったけど、おもしろかった。ライオンさんこわかったけどやさしかったんだよね。…カラスは、やっぱりこわかったなー😧」

次回の劇団やりたかったの公演は「ねえ、お化粧して首に境目できてるよ」来年の1月だそうです。
タイトルからして大人向け。年増の四姉妹の物語というから、今回飲み損ねたビールでも飲みながらがっつり観たいなあ…🍺

いくつになっても新しいことや人に出会うことをたのしみたい。いろんな感情を持って、どこまでも。 無限大!

チェケラー