【ハママツクリエーターズフェス】開催間近‼︎素材の窓を開ける〜空閑渉さん編〜

7月19日(金)〜21日(日)に開催される「ハママツクリエーターズフェス」にて作品を出展される空閑渉さんにインタビューをしました!


空閑さんは浜松市在住のアルミを使った鋳物を製作されているクリエーターです。靴や服といった身近なものをアルミ製にした作品はとても繊細です!

アルミ製のシャツ
アルミの靴とアルミニウムインゴット。
とっても重い!

空閑さんの工房は浜松市内の自然豊かな場所にあり、取材中もカエルや虫の鳴き声がよく聞こえました。空閑さんが自ら開拓したんだそう。

工房に続く道

そんな素敵な場所で、空閑さんの作品について
たくさんのお話を聞きました!


ーー現在、空閑さんは主に鋳物を扱う活動をされていますが、この活動を始めるまでの経緯をお聞きしたいです。

美術に興味があったので、高校卒業後は多摩美術大学の彫刻学科に進学しました。大学では金属を扱うことに興味を持ち、人体像を鋳造していましたが、ものづくりがしたいという漠然とした考えが先行していて、「素材そのものに向き合えていないな」と感じていました。
大学院に進学してからは、靴や服といった日常生活の中にあるものを鋳造する、素材に向き合った作品作りを始めました。

ーーなぜアルミを用いた作品を作ろうと思ったのでしょうか?

最初はミラー状に磨いて作品作りをするために、色もシルバーで鏡状になりやすいという意味でアルミを使っていたけど、 そこから靴であったりシャツだとか、そういうものを扱ってくるようになってから、鋳物であったら、例えば銅だともうとっても重くて、ブロンズって言われてもピンとこないというか、金銀銅メダルじゃないけど、そういうランク付けの中のものみたいなニュアンスもあったりして。
それよりも僕のやってることって、自分の生活であったりとか、見に来てくれている人の生活、日常にあるもの(を表現している) 。
そしてアルミといったら、アルミホイルとか缶とか、みんな手にとって触ったことがある、親しみのあるもの、そういった素材であることが今やっている作品のコンセプトに繋がるかなというところでアルミをメインに使っています。
もちろん基本アルミだけど、作品によってコンセプトでブロンズの方がいいと思ったら、ブロンズを扱うこともあって。2020年ぐらいにコロナが流行って、アベノマスクが配られて。そしてこのマスクに、1個280円ぐらいかかっているというニュースが流れた。 金属の値段は大きく変わるんだけど、ちょうどそのマスクをブロンドにしたときの銅の値段が、その時の時価で同じ、280円ぐらいの金額だったから、そういう時はブロンドで作ったりもしました。

ーー素材や技法の魅力について教えていただきたいです。

そうですね、素材に関して言うと自分のコンセプトが生活、記憶、それに付随して死生観があります。生きていればいつかは死ぬ。そういった意味で身の回りに溢れているモノの素材を皮から剥がして燃やすというのは、人生の一時を見ているようです。金属が熱を帯びているうちは動くけれど、冷めて固まったらもう動かない。そこが、ある種生物らしく、日本人は9割近くが火葬で骨になりますが、その時の出棺のイメージもあります。亡くなってしまっても故人の想いはのこっていくので、そういう意味では金属という素材は魅力的だなと思います。
技法に関しても鉄が固まるというのがテーマにあって、鋳物は作業ですが仕事として鋳物屋さんはあるし、彫刻家には粘土で形を作って鋳物屋さんに頼んで金属にしてもらい、そこからさらに仕上げる職人さんに頼む人もいます。もちろん個人でやるのは大変ですが、そういう工程を人任せにせず、自分の制作の一部として鋳物を作りあげるということを大事にしています。


ーー靴やシャツといった作品の型はどのようにとっていますか?

石膏で型をとるときも、単純にとるだけではなく、湯道(ゆみち)と呼ばれる鉄管みたいなものを這わせてあげて金属が流れる道を作り、石膏で囲い、金属を流し込んで、それが固まって形になったら完成です。そして、型自体は割ってしまうのでもう一回ということができません。だから、流れてなかったらもう終了。靴も今は形になっていますが、元の靴は灰になって一度この世から無くなっていて、型も割って出さないと中を見ることができません。そういう意味では一発勝負です。


ーーアートに関係なく影響されたことは?

小学一年生から大学まで16、17年くらいモダンバレエをやってました。モダンバレエって心的なものを踊りで表現するものなんですけど、例えば手の出し方一つでも悲しい時どう出すのか…そういうことを子供の時からやっていて、体の一挙手一投足が表現になるっていうのはすごく勉強になりました。


ーーどのように作品作りのアイデアを出していますか?

常日頃からなんでもアイデアに結びつけるというか、自分の生活、記憶とか死生観はずっと切り離せない場所にあるから、 ある意味常に思考を巡らせていて。そしてもちろん思考は巡らせているけど、フィジカルなところ、体を動かすことで生まれてくるところももちろんあると思うので、 本を読んだり音楽を聞いたり、いろんな展示を見に行ったりとか、自分じゃないものをインプットすること。プラスアルファ、僕は編み物をするのが趣味なんですけど、これ(写真)も全部自分で編んでいます。フィジカルで動かしていくことによって、 どんどんアイデアがまとまっていきます。

アルミと毛糸でできた編み物



ーー作品を作る際に心がけていることを教えてください。

日本人である自分ってなんなのかなぁ、みたいな。出棺や火葬の話もそうですが、すべてにおいて一貫して今ここにいる自分、生きているなかで基礎として持っている自分の考え方は大事にしています。

ーー好きな小説、音楽 映画等はありますか?

好きな作家さんだと星新一さん、安部工房さんが好きです。本は美術書とか思想の本、哲学系の本を手当たり次第に読みますね。あと、音楽は実はパンクロックが好きなんです。パンクロックをガンガン聴きながら編み物とかしてると友達に怖がられます(笑)
映画もジャンルとしてはアクション系が好きで、自分の作品の雰囲気とはかけ離れているんですよね。

ーー影響された作家さんがいたら教えて欲しいです!

三木富雄さんっていう彫刻家が好きです。この人はひたすら耳だけを作っている人なんです。三木さんを知ってから鋳物を作る上で、自分の考えをアクションに移すことの大切さを改めて感じました。

ーー浜松で活動しようと思った理由や、浜松の好きなところなどをお聞きしたいです。

当時、大学教授の助手として働いていて、その任期が切れる時期にちょうど子供が産まれたのもあって、東京での生活を考え直すきっかけが生まれました。
奥さんの実家が浜松だったので、子育ての面での不安が減ると思ったのが一つの理由なんですけど、もう一つの理由が、作品の制作環境です。東京で制作環境を整えようと思うと、近隣の方への配慮も必須ですし、なにより広々とした場所がとりづらい。浜松の今のアトリエはそういった問題も解消できたので、とても気に入っています。
浜松の好きなところは、一生活者としての視点だと子育てがしやすいところです。クリエーターとしての視点だと、浜松の位置ですね。東京や大阪で個展を開くことが多い中、浜松は両方のちょうど真ん中に位置するので、動きやすい。そういったところで、浜松は「発信し続けられる場所」だと思っています。


ーー作品作りのルーティンは?

多くの日本人がそうであるように僕も特定の宗教を学んでいるわけじゃないけど、手を合わせていただきますとかごちそうさまとか、そういうのを大切にしてて、そういう意味で火を使う時は寺社に行ってお酒と塩を撒いて拝んでってやってますね。そういう一つーつを全てやることで真摯に向き合えると思って。自分なりの神頼みみたいなものですね。

ーーご自身の作品をどのように世間に発信していますか?

場所によって全然違って、この間東京でやったもので言うと新宿の服屋さんの1階のウィンドウに、そこの服を含めたコラボレーションとしてウィンドウディスプレイ的な感じで作品を見てもらってるかなという感じです。

ーー作品のアピールの仕方で工夫していることはありますか?

基本的には展示会場、ギャラリー、美術館で展示させてもらっています。作品がファッションに関連のあるものだと、ファストファッションの闇の部分(厳しい労働環境や低賃金問題)について考え直すきっかけを与えられるようなディスプレイを心掛けています。

ーーこれからの展望は?

常日頃からこれ燃やせるかな?って考えてて、色んなものを燃やしていきたいですね。その中で素材のアルミをどうやって活かすのか。作ることもそうだけど出し方、見せ方について。パフォーマンス的に、これまでやってきたモダンバレエとかを複合していけたらなとか考えています。


今回のインタビューを通して、自然に囲まれた工房で製作する空閑さんの姿を知ることができました。とても穏やかで独自の死生観を持つ空閑さんの人柄が、洗練された作品の中に表れていると感じました。
ぜひハママツクリエーターズフェスに来て、空閑さんの素敵な作品をご覧になって下さい!

編集:静岡文化芸術大学学生

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?