#勝手にスパッツの考察
浦島太郎説
スパッツのチェリー作・演出の江尻さんは昔話や童話が好きだ。もしくは、そのジャンルに書き手として引っかかる何かがあるのは間違いない。
過去の作品でも桃太郎や白雪姫をモチーフに選んだり、江尻さん本人が扮する（宿す）達太エッセイでも頻繁に童話の世界に行っている。台本にも今回だけでなく、毎回最後には大きく「めでたし」で締めている。
スパッツの感想配信をしていた里村夫妻のカナさんがおもしろい指摘をしていた。詳しくはYouTubeのOGchan_nelのアーカイブを見てほしいのだが。ノブが20歳年をとったのは、タワレコで試聴したあのタイミングだったのではないかと指摘していた……それを聞き、私の頭の中のソロ盤が弾かれた
タワレコ×昔話×ノブ老いる＝音楽好きの浦島太郎
というよくわからない薄ぼんやりした道筋が浮かんだ……様な気がした。
なるほど。ノブが玉手箱を開けたタイミングそれは、ベッドフォンを装着して再生ボタンを押した"あの時"だった。
……ノブは"あの時"何を試聴していた？
台本にはヘルシンキラムダクラブのミツビシマキアートとある。……カタカナが多い。最近カタカナが多いと頭に入ってこない。これは老いか？
ノブはカタカナが多いあまり老いたというのか。いや、そんな訳がない。意味がわからない。ノブは俺とは違うし。話を元に戻そう。
歌詞の内容は、自分には釣り合わないイケてるガールに恋心を抱く歌だ。いつかきっと落としてみせると。
若い。
むしろ歌詞の内容は若いじゃないか。
歌の方に引っ張られ過ぎたかもしれない。
こう考えてみてはどうだろう。そろそろ浦島太郎説に繋げたいし。何者かの手によって、あらかじめCD試聴機の中に不思議な老いる煙が充満させられていた。押してはいけない再生ボタン（噴出ボタン）を押したノブ。
ベッドフォンから直接耳の穴に煙を送り込まれたノブは、もちろん"老いた！"ついでに耳から煙を入れられた副作用で「ピ」が「パ」に聴こえてしまう聴覚に支障が出てしまった。副作用は、おまけみたいな形で出てしまった。と考えられる。
ぱち、ぱちぱち、ぱーち、 ぱぱぱち （まばたきをする音）
ぱちぱちぱーち……
（まばたきでモールス信号を送る
解読/// オレ イウコト シンヨウ スルナ スベテ ザレゴト）
ぱち （ウィンク）
麻実子シークレットエージェント説
中央ヤマモダンのコメディエンヌ美濃麻実子。彼女の登場シーンは短いがインパクトがあった。
ノブに私も同じ状況だと告げ「わたしはもうビール飲んでスパッツ聴いてるけど、オジサン頑張ってね」とエールを送ったのだ。少し考察からズレるが「もうビール飲んでスパッツ聴いてる」というセリフ回しが粋で良い。
ここで２つの疑問が浮かぶ。
1つは、こんな摩訶不思議な状況の2人が偶然同じ場所に居た？一体どんな確率なのか。天文学的数字だろう。
もう１つは「〜オジサン頑張ってね」という、奇妙奇天烈で摩訶不思議な現状を彼女は、すでに飲み込んでエールを送り余裕すら感じる。
これらを踏まえると、この状況は麻実子には当たり前のことで、随分前からここに留まっているか、自ら望んでここに居る。そして何か使命があって常にノブを見ていた又は監視していたのではないか。
私は、仮に麻実子が未来の地球の存亡の為に送り込まれたシークレットエージェントだと考える。仮にだ。仮にそうさせてくれ。お前の言いたい事はわかっている。意味がわからないよな？ 今は、飲み込んでくれないか。
話しを戻す。地球の存亡の為、おそらく麻実子の使命はノブに声を掛け、気付くキッカケを与える役目で、タワレコでノブがベッドフォンを装着して再生ボタンを押した時が声を掛けるタイミングだったのだ。何故かって？歯車さ。歯車の噛み合わせは重要だ。そう考えると、ノブ自身がオジサンになりオジサンだと認識することが地球を救う歯車（キッカケ）にバタフライエフェクト的にいい感じにピタゴラスイッチすると推察しても良いんじゃないか。可能性だ。
ついでに浦島太郎説で述べた、不思議な老いる煙を仕込んだのは麻実子と考えて間違いないだろう。
ところで、シークレットエージェントってナンダ？？？
村井孝昭巻き込まれタイムループ説
ここで一旦ブレイクしようじゃないか。君も疲れたかもしれないが、私は君の数倍疲れている。わからない事を考察しているんだよ！コーヒーぐらい、すすらせてくれ！あああもう寝たい！
ここで林檎ちゃんのインストアライブを振り返ってみよう。気付いてる方も多いかもしれないが、彼は林檎ちゃんでは無い。
村井孝昭という男だ。
ズバリ言おう。
彼は、スパッツの被害者だ！
シークレットエージェント麻実子の話しを思い出してほしい。彼女は未来から送り込まれたと言ったな。現在から未来へ行くのは、さほど難しい事ではない。説明を省くが、宇宙に行き光速を越えれば簡単だ。
だが、未来から過去に行く場合 膨大なエネルギーと危険を伴う。その危険というのが、タイムリープ巻き込まれ事故だ。車の運転で左折する時に後輪が内側に入ってしまい通行人を巻き込んでしまう事故があるな。私は仮免許を取る場内運転の試験で、まさに左折するとき後輪がちょっとだけ内側に乗り上げた経験がある。ほんのちょっと、一瞬だった！クソッ なのに試験官は大目に見てくれなかった。その一度のミスで動揺した私は、手が震え仮免に落ちた。今思い出しても、くやしくなってきた。ちくしょう！
つまりこうだ。麻実子がタイムリープした際に、たまたま通りかかった村井という男が巻き込まれて過去にやってきた。しかも運が悪い事は重なる。なんの因果かタイムリープの際に椎名林檎本人がタワレコでインストアライブしている真上に彼は落ちた！
頭と頭がゴッチンコ☆してしまったのだから大変だ。それから彼は、タワレコで林檎ちゃんの曲が流れる度に歌いたくないのに歌わずにはいられない身体になってしまった。彼が歌に入る前に嫌々歌っているように見えるのは、実は必死に抗っていたからなんだ。彼は理由もわからず未来から過去に飛ばされたあげく、タワレコ店内を彷徨い林檎ちゃんを今日も歌う日々を送っている。
スパッツの悲しき被害者である。
ズズズズズ……（コーヒーをすする音）
後ろから人を襲う方法の人黒幕説
冒頭ノブがCDを試聴する前に現れる男がいる。スパッツのチェリーは、ノブが試聴した後の物語が描かれている（杏奈の回想は例外として）がCD試聴前の出来事として、男が現れ唐突に後ろから人を襲う方法をレクチャーしてくれる。そして、ノブが試聴している曲に合わせて後ろから人を襲うのだ。教材ビデオの様に彼は、淡々とまっすぐ私達の目を見てレクチャーしてくれる。落ち着いた口調で一見優しくみえるが、どこか侮れない雰囲気を漂わせている。
すまない。ここで一つ確認させてもらう。
彼はレクチャーしていたのではない、一種の催眠（サイキック）の様なものを舞台上の人物ではなく、客席にいる私達にかけていた。
というのは、気付いていただろうか？
通常の人間であれば、熊を素手で仕留めるマタギや、林檎ちゃんになりきり転げ回るしわしわのシャツを着た中年男性を笑って見る事は出来ず、恐怖のあまり悲鳴をあげて飛び出ていくものだ。だが、客席にいる私達は、腹がちぎれるほど笑っていた。今でも思い出して笑ってしまう。それは、冒頭の後ろから人を襲う方法でしっかり催眠をかけ、極め付けにタモリさんの奇妙なナビゲート、そして丁寧な蚊とのやり取りの繰り返しによって奇妙奇天烈な物語に段階的に導かれていたのである。用意周到。計画的に。
では、なぜ後ろから人を襲う方法の人は第四の壁を超えて私達に催眠（サイキック）をかけてきたのか？
既に私達も、未来の地球の存亡を担う歯車の一部になっていたのではと推察できる。客席から誰一人居なくなってはいけない。誰か一人でも欠ければ14万通りある未来の唯一地球が生き残る為の歯車は回らないのだ。
そう考えると、後ろから人を襲う方法の人を黒幕とするのは失礼だったかもしれない。つまり彼も、使命を持ったシークレットエージェントの一員だったという訳だ。
2043年未来のノブ危篤状態説
スパッツのチェリーは、20年後の50歳のノブが見ている夢？
いや、違う。
もう勝手な考察も終わりに近づいている。
少しドラマチックに考えてもいいじゃないか。
ここまで、私の勝手な考察に付き合ってくれてありがとう。
50歳を迎えたノブは今、危篤状態にいる。
わずかに、鼓動の波が打っているモニターが見える。
たくさんのチューブに繋がれ、微かな胸の動きで呼吸しているのがわかる。
ICUのベッドの中。
ノブの中で、後悔の走馬灯が回り始めた。
カタカタと哀しくも笑える物語を映し出している。
ノブが人生の中で、やり直したかったこと。
タワレコで杏奈をほっておいたあの30分。
杏奈のため、自分たちの未来のため、指輪を選んでいた30分。
あの30分を共に過ごしていたからといって、いずれ杏奈はノブの元を去っていただろう。人生は、あの時ああすればよかったの連続だ。
20年の歳月が経った現在、ノブの身に何があったかわからないが ノブは人生を思い返す走馬灯を見て、最後に思い出すのは杏奈と過ごした日々だった。
ピ が パ になるような、ちょっとしたボタンの掛け違いがノブと杏奈の間にはずっとあったからだ。
50歳になった今だからこそ、20年前のあの日の杏奈の元へ行き。彼女と対話する。
そして、しっかり杏奈の背中を押して送り出す。
20年前のノブが出来なかったことを、今なら杏奈にしてあげれたかもしれない。
これが、ノブのスパッツのチェリーである。
おしまい！
ぱち（ウィンク）
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