コロナ後遺症・ワクチン長期副反応療養ノート(2022/11/6版)

はじめに・前書き

閲覧ありがとうございます。約5000人のコロナ後遺症患者さん、約300人のワクチン長期副反応患者さんを診察してきた経験から、「療養ノート」を作成いたしました。コロナ後遺症、ワクチン長期副反応の診療報酬が安すぎて大変苦しいので、有料とさせていただいています。内容は https://twitter.com/k_hirahata でツイートしたりhttps://longcovid.jp に載せたりしたものばかりですので、経済的に苦しい方は、決して無理をされないでください。

内容量のわりに高額な資料になってしまっていますが、なるべく患者さんの役に立つ内容になるように心がけています。随時更新していきますので、「こういう内容が欲しい」といったご要望がありましたら、ぜひお気軽に info@hirahata-clinic.or.jpにメールをしていただければ幸いです。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)のPS(performance status)による疲労・倦怠の程度と生活上の注意

「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」の診断基準では、Performance Status(PS)という尺度が使われていますが、これは仲間の病気である「コロナ後遺症」、「(コロナ後遺症様の)ワクチン長期副反応」の評価にも非常に有用です。

ここでは、ME/CFSのPSについて、新型コロナ後遺症・ワクチン長期副反応を4000人診察してきた経験から解説します。執筆者(平畑光一)の個人的な見解ですので、あくまで「目安」としてお使いください。

 注:あくまで新型コロナ後遺症・ワクチン長期副反応の診察経験をもとに書いていますので、ME/CFS専門の先生と見解が異なる可能性があります。また、一部の患者さんの体感と乖離した記載がある可能性があります。暫定版です。

表1)筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)のPS(performance status)

  • PS 0
    倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる

  • PS 1
    通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある

  • PS 2
    通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠感の為、しばしば休息が必要である

  • PS 3
    全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である

  • PS 4
    全身倦怠感の為、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である

  • PS 5
    通常の社会生活や労働は困難である。軽労働は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である

  • PS 6
    調子のよい日は軽労働は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している

  • PS 7
    身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である

  • PS 8
    身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している

  • PS 9
    身の回りのことはできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている

PS 9 身の回りのことはできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている

ほとんど動けない、トイレすらも厳しい状態の方々だと思います。おむつとか、ベッドサイドのポータブルトイレとかを利用するような状態です。体を支えてもらいながら清拭をしてもらうということも多いです。ひどいときは指一本動かせません。
 
基本的にはオンライン診療だけで支えるのは厳しく、訪問診療の併用が必須と思います。
が、実際に利用できるかどうかは地域にもよるでしょうし、経済的にきついという場合もあるかもしれません。
本来なら、大きな病院に入院して、しっかり他の疾患でないかどうかの検査をして、必要があれば習熟した医師のもとで点滴でステロイドを使うなどの処置が望ましい状態と思います。
が、そういうことができる病院は、日本国内にはそうそうないような気もします。
やってくださるところはぜひ名乗りを上げていただきたいですし、厚労省はそういう研究を推し進めてほしい。
 
食事も大変だと思います。
流動食がやっとということも多く、命にかかわらないように、どうやってカロリーを確保するか、というのが大事な命題になることも多いです。

PS 8 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している

トイレまでは何とか歩けるが、あとはあんまりできない、というような状態です。
テレビのリモコンが重かったりします。
ペットボトルのふたなんて絶対開けられないんじゃないかなと思います。
ご家族の介助、理解がないとかなり厳しい。
ない場合は社会の福祉サービスを利用しなければいけないと思いますが、すぐにそういうサービスが受けられる地域ばかりではないと思うので、こういうところも早急に改善が必要と思います。
疾患としては、正しく治療すれば改善の見込みも十分あるので、フルのサービスの利用期間は短く済む可能性が十分にありますから、何とかならんかな、と思うところです。
やはり入浴はかなり厳しい。
場合によっては、介助があればシャワーくらいはできることがあると思います。
あとでクラッシュするようなら、やはり清拭にしてください。
食事はやはりなかなか摂れないことも多いです。
食事も運動なので、なかなか大変かと思います。

PS 7 身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である

トイレに行ったり食事をしたり、といったところについては問題なくできる状態です。
ただ、掃除とかをし始めると一気に悪化するのでまだ駄目です。
スマホを見る時間も相当制限しないと悪化の原因になりやすいです。
入浴はやはり厳しいですね。
髪の毛などはご家族に洗ってもらう方がいいと思います。
食事はある程度摂れますが、やはり相当気を付ける必要があるでしょう。
逆流などもしやすいので、インフィニティチェアでずっと過ごすなどの工夫も必要かと思います。
調子がいいときに家事をしたくなることも多いかと思いますが、基本的には無理です。
ごみとか持つと一気に悪くなったりしがち。
コロナ後遺症(ワクチン長期副反応)は腕を使うと悪くなることが多いので。
力をこめないで生活することを心掛けてください。
たぶん、トイレでいきむのもきついと思います。
お通じが硬くて辛ければ、酸化マグネシウムなどを処方してもらって、お通じを柔らかくするといきまずに済んでいいかもしれません。

PS 6 調子のよい日は軽労働は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している

調子がいいときなら少し家事ができます。
でも、できるからって、続けて掃除機なんてかけてはいけません。
一部屋掃除機をかけたらしばらく休んで、また次の部屋を掃除して、という感じで、続けて作業をしないようにしてください。
力をこめるのも、やっぱり駄目です。
休む時間は長くとりましょう。できるだけインフィニティチェアか、それに近い形で休むとよいです。
お風呂はまだきつい場合がほとんど。
特に洗髪は負荷が強いので、まだ家族にやってもらう方が安全かと思います。
この段階では、ほとんどの方で何かに集中することが危険です。
パソコンとかスマホとかテレビとか、まだあまり触らない方が安全。
そもそも座っていること自体が運動になってしまう段階だと思います。
座るときは運動になってしまうことを意識して。
今は休むことが仕事で、軽い家事が息抜きです。
筋肉が落ちるのが心配かもしれませんが、軽い家事をするだけで精一杯なのに、筋トレとかは無理。
プロテインを飲んで家事をするだけでも十分筋トレだと思って、気長に取り組んでください。

PS 5 通常の社会生活や労働は困難である。
軽労働は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である

家事がある程度できるけど、仕事とかは無理、という段階です。
この段階で仕事ができるのは、現場にちらっと顔を出して簡単な指示を出せばいいだけの社長さんくらい。
複雑なことを考えなければいけない場合は、作業時間が短くてもまず無理です。
このくらいの段階で、働きたくなってしまう方が多いですが、よくばってはいけません。
この病気は順番が大事。
回復してからやることを増やしてください。
回復する前にやることを増やすと症状が悪化してしまいます。
シャワーは大丈夫な方も多いかもと思いますが、この段階でも毎日はきついことが多いかと思います。

PS 4 全身倦怠感の為、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である

ギリギリ在宅での仕事が可能になってくるレベルです。
ただし、画面の光が無理、という方は仕事はまず無理かなと思います。
(画面を見ないで済むタイプの在宅の仕事があれば別ですが…)
また、在宅で復職した場合でも、20分作業しては5~10分休むなどの対処が必要なことが多いです。
2時間も集中して続けて作業してしまうと、クラッシュする恐れがあります。
散歩などの運動をしたくなる方も多いと思いますが、博打だと思ってください。
屋外は、帰ってくるのに時間がかかります。
ヤバいと思ってすぐに休めないところに行くのはリスクでしかないので、やむを得ないとき以外は自宅から離れた場所に行かない方がいいです。
「仕事復帰するために散歩をしている」という方も多いですが、見回りの仕事など、歩行することが仕事でない限り、それは社会復帰を遅らせるリスクになることはあっても、早めることにつながりません。
(なお、近くに日光浴スポットがある場合には、積極的に日光浴はしてもいいと思います。)
勉強も同様です。
リモートの授業は受けられると思いますが、リアル登校はかなりリスクになると思います。
入浴はある程度できることが多いと思いますが、だるくならないように、疲れないようにという工夫が必要だと思います。
普通にドライヤーを使うのはまだ無理だと思うので、置いて使うか、ご家族にお願いするかするとよいでしょう。

PS 3 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である

在宅の仕事であれば、たいていの仕事ができることが多いレベルです。
ただし、短時間で判断を求められるような仕事、長い面談やミーティングが多い仕事だと、難しいことがあると思います。
たとえば、多くの方とweb面談をしなければならないという場合、それが30分以内で済んで、一人面談するごとに10分程度休める、という場合には大丈夫な可能性があります。
ただし、1日の業務についてまとめた報告書を書かなければならないといった場合には、面談業務後に1~2時間休んでから報告業務をさせてもらうというような配慮を、職場の方と相談してお願いした方が無難です。
このレベルでも、画面を見ることがつらい方は結構いて、その場合には、やはり業務が難しい場合が多いです。
通勤が必要な場合でも、歩いて5分の所に事務所があって、3~4時間の事務作業をするだけ、といった場合には、就業が可能な場合があります。
(このあたりはケースバイケースです。)
入浴はそれほど問題にならないことが多いかと思いますが、だるくならないように、疲れないように気を付けることが必要なことは変わりません。
また、いろいろと余裕感が出てきて注意が緩みがちになりますが、食事などに気を付けないと、胃酸逆流がひどくなって復職が遠のいたりしがち。
あと少しで復職可能なところですので、気を緩めず、頑張ってください。

PS 2 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠感の為、しばしば休息が必要である

通勤が片道40分以内で、デスクワークなら、たいていは復職できるレベルです。
欲張って片道1時間や体を動かす系の仕事で復職すると、ほとんどの場合、症状が悪化します。
「多少のことは頑張れる」と無理をして悪化させがちなレベルでもあるので、重々注意してください。
軽い運動ならできますが、ジョギングなどはまだ早いです。
したくなりますが、するのは負ける確率の高い博打。
PS1まで回復すれば、比較的安心して動けるようになりますので、もうちょっと我慢してください。
なお、このPS2がPS1になるまでの距離は、治療的にはそれほど遠くないのですが、できることには割と雲泥の差があります。
もうちょっと我慢すればできるようになるのに、待ちきれずに無理をして、一気にPS4くらいまで悪くなるというケースが頻繁にあります。
本当にしんどいと思いますが、頑張りましょう。
症状的には、軽い仕事でも疲れて休まなくてはいけないうちは、PS2以上です。

PS 1 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある

ちょくちょく疲れを感じるが、休まなくても大丈夫なレベルです。このレベルになって、初めて体を動かす系の仕事が可能になります。
保育士、看護師、ずっと立っていなければいけない接客業、物を運ばなくてはいけない業務などが該当します。
もちろん、このレベルになっても、いかに疲れないように働くか、だるくならないように生活するか、という探求をやめてはいけません。
どうやったら楽をすることができるかを探求するのが「仕事」の一部です。がんばってください。

PS 0 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる

ほとんど何も気にせず生活することができるレベルですが、念のため禁酒し、無理を避けるようにしておく方が無難と考えます。

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