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【エビスト】 2年弱、エビストという得体の知れないものに触れて

アプリゲーム「8 beat Story♪」についての記事です。

エビストの一つの集大成であったと思われるハニプラ 5th Live (2020/1/26)から、全15回の有料放送で設定やストーリーの振り返りをしつつ質問もあらかじめ募集して「主にスタッフが」答えていく狂気ともいえる企画であったエビスト4周年記念リレー生放送の終了(2020/7/24)まで大体半年ということで、自分がこの半年エビストという作品にどう翻弄されてきたかを振り返る文章をしたためようと思ったのですが、その前段にあたる部分の時点で首を傾げる文量になってしまったので先に貼り付けておきます。続きはどうしたものか。

自分の記憶とTwitter でのつぶやきの掘り起こしを基に書いていますので、記述された日時や内容、前後関係などについては誤りが含まれることが多々あると思われますがご容赦ください。


1. そもそも「エビスト」って何よ

8 beat Story ♪、通称「エビスト」は、2016年より配信され今年4周年を迎えたリズムゲームです。基調となっているのは「学園の課外活動としてのライブパフォーマンス」という設定。学園×アイドルという構造は2次元アイドルものの作品に触れたことがなくともアニメ・ゲーム好きならば何かしら思い当たる作品はあるはずで、そういった意味では贔屓目に見てもエビストが飛びぬけて個性的とは少し言いがたいところです。

そんな作品の特色となっているのは「2031年」という近未来の舞台設定。現在よりも進んだ技術によって生み出された人工知能によって人間の作る音楽がどんどん市場から淘汰されており、主人公達はそんな状況を変えて人間の音楽の未来を守るためにユニットを結成し立ち上がる…細部は違いますが大まかにはそんなストーリーです。レジスタンスといった感じですね。

高度な人工知能であるMother と、Mother の目指す音楽を体現するパフォーマーとしての役割を担うアンドロイド。それらによって人間の音楽そのものが危機に瀕した未来の姿を警告し、その未来を変えようとタイムリープを敢行した「味方」サイドのアンドロイド…などの設定や描写が作中には盛り込まれています。

序盤のストーリーではこれらのSFチックな要素は「学園アイドルもの」というベースに混ぜ込まれながらも少しこなれていないエッセンス、といった趣であり、2020年現在どころか、2010年代後半当時でさえ飽和気味とも思える二次元アイドルものという市場に切り込む軸にするにも少し妙なことやってるなあ…くらいの印象で当初読み進めていた記憶があります。もちろんこうした明らかな異物が混ぜ込まれている、という不思議な手触りがこの作品の魅力として受け止められる向きもあるとは思いますし、こうした点を始めコンテンツ展開全体に漂う「なんだかこなれていない」感触もエビストの魅力の一つだと自分も感じているのですが。…失礼にあたる表現になってないといいですけど。

…詳しくは後述しますが「混ぜ込まれている」というのは大きな誤解だったことが徐々に明らかになっていきます。


(ただし私がまだエビストの存在を知る以前に、シナリオは大幅な改稿・構成の変更が行われていたという話もあり、現状の展開のどこまでがエビスト運営の当初の思惑通りであったのかを確かめる術はありません。したがって、この記事の「運営の意図」である前提で話を進めている箇所は、だいたい妄想です。そうとらえちゃった、という記事です。)


2. 初接触時のエビストの状況と印象

さて、そんなエビストですが、アプリとしてリズムゲームを提供しそこにフルボイスでストーリーも供給されている以上、切り離せないのは曲の存在声優さんのかかわりです。

…というより、こうした二次元アイドルコンテンツでむしろ商売のメインとなっているのがこちらの側面であることはまず間違いの無いところで、かく言う自分もエビストの世界に足を踏み入れたのは、自分が追っていた他コンテンツで出演されている声優さんが「8 beat Story ♪ で追加キャラのボイスと歌を演じられる」ということが判明してからでした。

エビストについて私が実際に触れ始めたのは、2018年2月下旬。アプリがリリースされてから2年経過してからの出会いとなります。この時点でエビストがどのような展開をしていたか、大まかなに列挙してみます。


・メインストーリー第9章公開(2018/2/19)

・アプリへの実装楽曲数は47曲(2018/2/14 追加の「ここから」まで)

・作中のキャラクター8人(※1)、そしてそれぞれを演ずるキャストにより構成される「8/planet!!」(ハニプラ)というユニットが1st Best Album を発売済。リリースイベントも複数回開催。

※1 細かいことをいうと、この時点では作中においてユニット名はついていませんでしたが…

・8/planet!!単独でのライブは3rd ライブまで実施、4thライブの開催も決定済。

・ニコニコ生放送のチャンネルにてキャストを迎えて発信される「エビストニュース」が#23まで放送済み(2018/1/31)

・コミカライズが7話まで掲載(2018/2/8)

その他、キャストによるバラエティ番組である「ハニプラTV」が制作・配信されていたり、ライブ衣装展やリリイベといった形で比較的頻度高くイベントも開催されていたようです。

さて、実際に挙げてみて分かるのがこのエビストという作品のキャストを前面に出して行う姿勢の強さという側面。当時私が他に触れていた同種のコンテンツと比較してもこの性質が強かったために、エビストの第一印象へと結びついていきました。自分がキャスト目当てで引き寄せられたコンテンツがそういった姿勢であることに、(直接の連関はないのですが)親和性の高さを感じたことを記憶しています。

続いて印象深かったのが、アプリ稼働日数に対する実装楽曲数の多さ。上述したように、アプリ稼働開始後約2年半で50曲あまりが追加されているというのは、ゲームオリジナルコンテンツとしてはかなりのペースであると感じました。曲数だけでなく、楽曲ジャンルもなかなか幅が広く、音楽面でも力が入っている作品との印象を受けています。


しかし、数度アプリ内イベントを経験して、ゲーム内の操作の感覚もつかめたところで、「アプリ内のアクティヴユーザー数の少なさ」と繰り返しになりますが「ゲームアプリとしてのこなれていない様子」といった欠点・・・少なくとも長所とは言いがたい点も見えてくるようになりました。

よくよく考えてみれば、2年弱サービスが継続しているアプリなのに同ジャンルの他作品を追っていた自分の耳に実態がほとんど入ってこない、プレイしている人がいるという話も聞かない…という状況は、エビストというコンテンツの規模、少なくとも広報宣伝への注力規模が小さいものだと察するには充分でした。まだプレイを始めてから日も浅いのに、初めて足を運んだイベント現場である4th Live の様子を見て「ここに集まった人々はどうやってエビストを知ったんだろう?」と首を傾げて連番者ともうなずきあった記憶があります。


総じて、私にとってのエビストの始めの印象は「規模が小さいけれどもリアルイベントや楽曲展開に精力的なコンテンツ」という部分に集約されていくことになりました。現在も私は「機動力」なんて言い回しで、エビストのイベントの多さや発表から実施までのスパンの短さといった部分を(時に苦笑交じりに)形容することがありますが、その一種のアンバランスさや“得体の知れなさ”といった不思議な印象がそう大きくは変わっていないからだと思います。

そしてこの「不思議な印象」を大きく後押しし、私のエビストへのモチベーションの原動力ともなっていたのは間違いなくコンテンツ全体としてのシナリオ面の扱い方だったのです。


3. 2wEi 編の展開について

さて、2018/2/2 に新たなキャラクターである2人、「2_wEi」の登場が告知された時、ストーリーは第9章まで進んでいました。主人公たちがそれまで「バーチャル空間でのライブバトルで打ち勝つべき相手」程度の認識でいたであろうアンドロイドに対し、技術の進歩によって肉体と感情を持った個体と接し、心を通わせ、そしてその相手を倒してしまったことで(自覚しているか否かに関わらず)それまで身を投じてきた「人間の音楽の未来を守るための戦い」がどのような側面を持っているかを知ってしまった…という内容です(少し拡大解釈があるかもしれません)。

そんな中でビジュアルと曲の一端が公開された2_wEi は、とても攻撃的で…明確に「敵」と感じてしまうデザインとサウンドを引っ提げていました。第9章で心を通わせた「かなで」がとても愛嬌のあるビジュアルだったのとは対照的に、です。

実際、本編に初登場した第10章での2_wEi の2人の言動は「人間の音楽を滅ぼしに浸食してくる敵」そのものといったイメージでした。ここから本格的にお互いの生き残りを賭けた戦いが加速することを匂わせ、一方であるキャラクターのその戦いへ臨む姿勢にヒビが入ることを暗示する不穏な描写で第10章は締められます。これによって、ユーザーにこの先の展開について覚悟を促すような構成となっていたと思います。


ところがこの更新を持って本編の進展は一旦ストップし、以降しばらくは「サイドストーリー」として2_wEi に焦点を当てた物語、そしてライブを始めとしたイベントが展開されていくこととなりました(これにはこの間生じてしまったハニプラキャスト二人の交代といった事態も大きく影響しているとは思います)。

そんなサイドストーリーで展開されたのは、誕生時からある絶望とそれに起因する憎しみを持たされ、持たされたそれらの感情を制御できずに振り回されてもがく2_wEi の2人の姿でした。「人間ではない」アンドロイドであるが故に抱えさせられてしまった「人間的な」感情や心が動く過程、やがて塗り替えられる2_wEi の存在理由や彼女達二人の出す「答え」を、ユーザーである我々は固唾を飲んで見守る立場へとシフトしていくことになったのです。

もう、2_wEi を敵だと感じる余裕はありません。人間によって生み出されたロボットが感情を獲得する…といったようなことが物語の焦点となる段階をとっくに通り越して、「人間ではない」という部分を感情が発生する原因の部分に組み込んで進行するSF 作品を我々は目の当たりとすることになったのでした。メインストーリー9章からその性質は一気に強くなってはいましたが、確実にエビストという作品におけるSF要素は混ぜ込まれたエッセンスであるどころか、運営サイドが描きたかった本筋に最も近いのではないか…とようやく私も察することができるようになったのです。

一方で、エビストという作品のもう一つの特色だと感じていた、声優コンテンツとしての押しの強さの側面について。こちらは2_wEi を演じるキャスト2人についてもアルバムや旅番組DVD(※2)などの関連商品のリリイベや衣装展示記念のトークショー、先述のエビストニュースへの高い頻度の出演などでフォローされていました。攻撃的な言動も多かった2_wEi の2人とは対照的とも言えるキャスト2人のあたたかな雰囲気とキャラクターへの愛着を伺わせる発言も相まって、これらの展開も好評をもって受け止められつつ、供給の多さに目を回すユーザーも多かったことと思います。もちろん私もそんな人間の一人です。

※2 「まいちゃとらなちゃの2_wEi 旅」というシリーズ。位置づけはハニプラにとってのハニプラTVのようなものだが、配信ではなくDVDのみで販売する映像商品。作品のサブユニットのキャストメインの関連商品と考えると恐ろしい本数が発売されている。


そして、昨今の声優コンテンツ、それも歌を扱う作品としては避けては通れないキャストによるライブ。もちろん2_wEi でも精力的に展開が行われます。まずは5月にハニプラのライブに「乱入」という形をとって2曲のお披露目。その後アプリ上でのサイドストーリー第2章の公開、1st アルバムの発売を挟み単独での1st ライブが実施されます。その数、始動した年の11月から翌3月の間に3会場6公演。うち大阪公演の2回には足を運べませんでしたが、それでもこの短期間の間に複数回同一アーティストのパフォーマンスを堪能できる、ただその経験だけでも自分にとっては大変刺激的でした。

この時点で頻度が凄まじいものとなっていますが、内容も驚くべきもの。まずは1st アルバムによって10曲まで増えた持ち曲を全て歌い、1st ライブ FINALでは直前でアプリに実装した曲やサプライズ披露の曲も盛り込むセトリ。ラウドロック主体の激しい曲が二人の高い歌唱力、そしてFINALではバックバンドにも支えられ間髪を入れず展開される様はこの時点でライブハウスでのパフォーマンスとして昂揚感をこの上なく刺激するものでした。

さらに特筆すべきは、「声優本人」としてのMCは公演中一切入らずステージ上ではキャラクターが貫かれるというスタンスでした。このことによって2_wEi のライブが、アプリ作中のストーリーの、ひいてはエビストの世界の延長線上の存在であるという疑似体験をユーザーにもたらす効果が発揮されていました。影アナや開幕前の導入ナレーションの内容、そして「セキュリティガイ」やバンドメンバーがSotF(作中の組織)であるとの紹介など至るところにこのスタンスは徹底され、2_wEi のライブの独特の雰囲気と世界観を醸成しています。

パフォーマンスのみならず、公演全体をもって作中の雰囲気を提供することに注意が払われたライブ。この方針は1st ライブが終わった後も継続され、2019年11月から展開された2nd ライブはもちろん、作中曲Heart 2 Heart に作詞提供された縁で(?)実現したナノさんとのツーマンライブ「Frontal Crash」(2019/8/15) でも健在(※3)で、そうした空気を浴びる経験を経るうちに、2_wEi の物語の紡ぎ方はエビストという作品のそれまで培った「不思議な印象」を最大限に活用したものであったと気付かされるようになったわけです。

※3 1st 2nd ともに最終公演でもそうではあったが、このツーマンでもアンコールではキャラとしてではなく「野村麻衣子さん、森下来奈さん」として登場。ただしツーマンの方ではそのこと自体が作中のキャラクターへのメッセージとなっているなど、リアルイベントを作中ストーリーに巻き込む姿勢は相変わらずであった。


4. 「得体のしれなさ」の結実

ここまで述べたように、2_wEi の展開は私がエビストに触れた当初に感じていた二つの印象がそのまま軸となることがより強固に立ち現れて進んでいきました。


一つは、「アンドロイドが感情を過剰に持たされたが故の苦悩とその克服」というSFの要素を詰め込んで進行するストーリーを細切れに発表し、それに合わせるようにライブを頻度高く展開して進行に合わせたMCを織り交ぜながら「直前の物語において直面した自体を2_wEi はどう受け止め、どう反映したか」をその都度パフォーマンスに込めて作中の体験を提供していくという軸。

もう一つは、それらで補完し得ない「キャストとしてのMC」や感想を発信する場として、また当初のキャラの印象であった攻撃性をある程度和らげる緩衝材としての精力的な声優コンテンツとしての軸。


後者という場があるからこそ前者をややピーキーに展開しても構わないという保証を確保でき、また前者があるからこそ話の展開や謎めいた設定、ライブについての裏話など提供する話題に事欠かず、頻度高くトークショーなどのイベントを開催できる弾数があったことになります。

アプリ内のキャラクターをライブでも徹底し演じることによって、ライブにおけるパフォーマンスの全てが作中で起こった出来事であると認識させストーリーとして読み解かせながら、一方では同じライブについて「別の場所で」キャストの感想や裏話を展開する。このように2_wEi という動き全体を盛り立てて行くためには、当初触れた時には乖離すら感じたエビストという場の「二つの軸」が必要とされたのだなあ…とようやく得心して私はますますエビストにのめり込んでいくようになったのです。

メインストーリーの展開が11章・12章と連続で展開され、続くように2_wEi のサイドストーリーの4章が公開された際も(それは2_wEi の展開で得た感触が、既にその素地は勿論完備されていた本編で遺憾無く掘り起こされて展開したことの結果として)、エビストという作品全体を楽しむための理解の一つとして間違っていないとの自身の姿勢を強める結果となりました。


こうした感想に至った後に迎えた2020年初頭のハニプラ5th ライブ、2月の2_wEi 2nd Live FINAL、そしてそこから半年間のエビスト運営の怒涛とも言える配信・生放送のラッシュに、私は翻弄され続けて行くことになります。

それは、物語の推移を見届ける方法を一つに絞らないエビストという作品の与える情報を、なるべく漏らさず追い続けて行こうと身を投じたものに当然降りかかる宿命であったわけです。

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先日のエビスト4周年記念リレー放送の中でも、「最初に受けた印象を覚えておいてください」との言及があったキャラクターや要素がありました。この記事は、それを受けてまずエビストという作品そのものの当初の印象を書き留めておこうという目的を持っています。そのためエビストをめぐる自分語りや酷い感想になってしまっていますが、最後までお読みいただいた方はありがとうございました。

それでは今回はこの辺で。Ate Logo!

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