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『Mank/マンク』の新しさ

昨日、デヴィッド・フィンチャー監督待望の新作、「Mank/マンク」を観てきました。
これを読んでくださっている方は既にご存知かと思いますが、ご存じない方に説明しますと、本作はNetflixオリジナル映画です。基本的には劇場公開はないのですが、Netflixで公開される12月4日(金)の前に下記の劇場で公開されました。

『Mank/マンク』上映劇場リスト
<宮城> チネ・ラヴィータ
<埼玉> イオンシネマ春日部
<千葉> キネマ旬報シアター
<東京>
ヒューマントラストシネマ有楽町/ヒューマントラストシネマ渋谷/シネ・リーブル池袋(順次公開)/ユーロスペース(順次公開)/アップリンク吉祥寺/イオンシネマ多摩センター/キノシネマ立川/立川シネマシティ(11/27~)
<神奈川> キノシネマみなとみらい/あつぎのえいがかんkiki/イオンシネマ海老名/イオンシネマ座間
<京都> アップリンク京都/イオンシネマ久御山
<大阪> シネ・リーブル梅田/イオンシネマ茨木/シネマート心斎橋
<愛媛> イオンシネマ今治新都市
<大分> シネマ5(11/28~)
<宮崎> 宮崎キネマ館

私はデヴィッド・フィンチャーが監督の中で1番と言ってもいいほど好きなので、公開をとても楽しみにしていました。
そして観てみた結果、これはリテラシーが必要な映画であり、Netflixオリジナル映画の新たな作品形態だと思ったので、ネタバレなしにここに書きたいと思った次第です。
因みに、私はシネフィルではないので、古い映画についてそこまで知識はありません。
オーソン・ウェルズの作品は「市民ケーン」、「第三の男」とかいくつかは見たことがありますが、そんなに詳しくはありません。
古い映画がお好きな方や詳しい方には本作は初見でも面白いと思いますので、読み飛ばしてください。

ストーリーは、映画史に残る作品である「市民ケーン」の脚本家“マンク”ことハーマン・J・マンキーウィッツ(ゲイリーオールドマン)を主人公に、1930-1940年代のハリウッドを背景に、「市民ケーン」の脚本ができるまでの紆余曲折を描いた物語です。

上記ストーリーからもお分かりの通り、本作は観客が「市民ケーン」を見ている前提で作られていると感じました。
「市民ケーン」のストーリーはここで触れませんが、主人公のケーンが死ぬ間際に放った「バラのつぼみ」という言葉が何を意味しているのか?という謎を求めて話が進んでいきます。その謎は何なのかということを、本作「Mank/マンク」の中でさらっとネタバレしています。つまり見ているのが前提なのだと思います。また、「市民ケーン」の脚本を朗読する部分も出てくるので、見ていないとあまりピンとこない可能性もあります。
こういった脚本作成の話に加えて、1930-1940年代のハリウッドやアメリカの社会情勢を描いているので、物語を完全に理解するためには、「市民ケーン」の知識と当時のハリウッドの状況を少し知っていると分かりやすいです(私も完全に理解しているのかどうかは分かりませんが。。)。
また、オーソン・ウェールズ(「市民ケーン」の監督・主演)は天才と言われながら、「市民ケーン」以降に、不遇なキャリアを歩んだこと、そしてそれは何故なのか?を知っていた方がより深く理解できると思います。

上記のようなリテラシーを求められる映画は他にも多々あると思います(最近だと「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」とか「アイリッシュマン」もちょっとそういう側面はありました)。
ただ本作はそれ以上かと思います。なんせ時代が1930年代で、多くの人はリアルタイムで経験していないことですし、1970年代に比べてピンとこない人の方が多いでしょう。
私は、この作品をNetflixで作製したことが意味があると思いました。もしかしたら本作は一般公開するには難しすぎると思います。その点、Netflixだと一度見て分からなかったところは、オンラインで「市民ケーン」を見たり(現在Netflixで「市民ケーン」が見られないのは残念ですが、amazon prime videoにはあります)、当時の時代背景を調べたりして、もう一度見直すことができるという利点があると思います。これこそNetflixで作製・公開する意義がある作品ではないでしょうか?今後、本作のようにディープな映画ファンに向けた作品が新たなジャンルとしてオンラインで作られるのかなと期待しています。
さすがこれまでNetflixで「ハウス・オブ・カード」や「マインドハンター」を作製してきて、Netflixで作品を作ることを熟知している監督ならではと言えるのではないかなと思いました。

Matsu

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