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6月のベスト本 『死の貝:日本住血吸虫症との闘い』

今月は「死の貝:日本住血吸虫症との闘い」です。

タイトルといい、装丁といい、あんまり惹かれないという人が多いかと思います。
新潮社の人には失礼ですが、、
私がこの本を知ったのは、「wikipedia三大文学」というのがあるらしいということからです。
その3大とは「八甲田雪中行軍遭難事件」「三毛別羆事件」「地方病(日本住血吸虫症)」の3つの記事のことを指すようです。
このうち「地方病(日本住血吸虫症)」の主要な参考文献が本作「死の貝:日本住血吸虫症との闘い」なのです。

私は生物系の仕事をしているので、一般の人よりは生物学が好きなのですが、本作にはほとんど興味を持っていませんでした。
どんなもんだろうという軽い気持ちで読み始めました。
そんな私でもめちゃくちゃ面白かったので万人におすすめできると思います!

読み始めるとびっくりしたのですが
これは特殊な病気に挑む人々の話というだけにとどまらず、ある意味「ガンニバル」じゃん!って思ったのです。

まず、日本住血吸虫症という病気がとても特殊で
日本全国で発生している疾病ではなく、ある地域だけに特異的に存在する病なのです。
しかも日本各地に点々と。
それらの地域に特に関連性はなく、しかも流行病ということではなく、その地域ではずっと存在している病なのです。

さらにその病態も特殊で、その地域では成人男性でも子供くらいの背丈しかなかったり、病が進行した人は餓鬼のようにお腹が腫れてしまうという症状が出るそうです。
お腹が腫れてくると、その人は残り数ヶ月で死ぬらしく、周りの人がその人の死を覚悟するようです。
これってある意味その村特有の呪いと捉えられますし、それを具現化したのが「ガンニバル」のような村を舞台にしたホラー映画なのかもと思ったくらいです。

病の特殊性、深刻度にも関わらず、当時治療法が全く分からず、多くの医者や研究者がその原因を特定しようと試みます。
その努力の過程も非常に面白いです。
そしてその努力が報われた先にある成果も素晴らしく、世界的な発見につながっていきます。
今は名も知られていない人々の功績を振り返る意味でも素晴らしい作品です。

装丁に騙されずに一度読んで見てください。
そして映画化してほしい。

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