-4- ■大逆転サイボーグロボ誕生

 「変身セット ゲッターロボG」の成功は思わぬ副産物を生み出すことになる。それが『UFO戦士ダイアポロン』の商品化である。「変身セット マグネロボ ガ・キーン」の開発を進めていたタカラにブルマァクからコンタクトがあり、『UFO戦士ダイアポロン』の「変身セット」での商品発売を持ち掛けられる。当時のブルマァクは「ビッグショット事件」「第二次怪獣ブームの終焉」の中にあり、新たに株主を迎え入れたことで経営がぎくしゃくとしていた時期でもあった。そんな中にあって『UFO戦士ダイアポロン』は視聴率も商品も好調であったが、傾きつつあったブルマァクにしてみれば焼け石に水の状態であり、ブルマァク側は少額の投資で少しでも利益を出せる商材を確保したかったという事情があったのだ。『UFO戦士ダイアポロン』は初動の販売実績も好調であり、「変身セット ゲッターロボG」に続く商材を探していたタカラにとっても渡りに舟で、発売・タカラ/ 製造・販売ブルマァク、という布陣で1976年7月に「変身セット UFOロボ」シリーズが発売される。このブルマァク版とも呼ばれる「変身セット」の発売の経緯に関しては前述のとおりであるが、実際にはさらにエグい内容だったようである。当時の関係者は以下のように語っている。
―ブルマァクさんがよろしくないっていう話は当然のことながらウチも知ってるわけですよ。協力メーカーさんなんかからも噂を聞いてましたから。ただ、ウチとしては生産どころか宣伝・営業のリスクもないですしね。ゲッターロボGがそこそこ良いだけで「変身サイボーグ1号」の新製品は店頭在庫とわずかな流通在庫のみ。圧倒的に新商品の数が足りなかったんです。でも開発スタッフは「ジーグ」の後番組の「ガ・キーン」と、爆発的に売れている「ミクロマン」にかかりっきりで、とても「変身サイボーグ1号」まで手が回らない。そこでブルマァクさんからお話しでしたから、いいタイミングでした。まぁ、今だからおおやけにできる話ですけど、当時『UFO戦士ダイアポロン』は、初動も良くて視聴率も悪くない。売れてくれたら、ウチにものれん代が入ってくるし、市場にある商品の支援にもなる。逆に失敗してもウチが仕掛ける「ガ・キーン」のライバルにミソがつけられるし、少し盛り返したといっても「変身サイボーグ1号」はこの時点でなかば終わっているラインでしたからウチとしてもダメージも少ない。なんなら、それを機に「変身サイボーグ」が終了してもブルマァクさんのせいにできる(笑)そんな打算がありましたね。幸いセールスは悪くなかったようで、お客さんからは「変身サイボーグ1号」はまだいけるねという評価につながったので良かったんですが。
 ブルマァクさんとは、そのあといくつかのコラボレーションの話もあったんですけどね。確かNHKの番組だと思いましたが、TVでブルマァクの倒産を扱った番組を見た時は他人事ではないなぁと複雑な気持ちでした―
 発売された「変身セット UFOロボ」シリーズは「 変身セット」でヘッー、トラングー、レッガーの3種を発売。それぞれのパーツを組み合わせることでダイアポロンが完成するといものであった。『UFO戦士ダイアポロン』の劇中で主人公が完成したダイアポロンの内部で巨大化するという描写があり、「変身セットUFOロボ」シリーズはそのイメージにぴったりの商品でもあったのだ。ブルマァクでは主人公のタケシの人形をダイキャストで発売するのに加え、 タケシのコスチュームを着せた「変身サイボーグ1号」の発売をアナウンス。学年誌の広告に掲載されていたが、実際には発売されていない。ちなみにブルマァクとはマグネモラインで「ろぼっ子ビートン」のコラボレーションが予定されていたという。「変身セット UFOロボ」シリーズの好調を受ける形で「変身セット マグネロボ ガ・キーン」が発売されるが、思わぬ苦戦を強いられる。子供たちにすれば劇中と同じようにマグネットと鉄球で合体・変形遊びが楽しめるガ・キーンのおもちゃこそマストで、「変身セット」は、それらより安いとはいえいまひとつ食指が動かなかったようだ。「変身サイボーグ1号」の復活は、ホップ(ゲッターロボG)・ステップ(ダイアポロン)と続いて肝心のジャンプである『マグネロボ ガ・キーン』でつまづいてしまったのだ。

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 おもちゃ業界は「3か月で売れ筋が変わる業界」といわれているが、それを目の当たりにするような出来事であった。開発スタッフの脳裏には数年前に「変身サイボーグ1号」がぱったりと売れなくなった時の悪夢がよぎるが、すぐに対策が取られることとなった。子供たちや小売店を取材すると、買ってすぐに遊べないということが敬遠される最大の理由であることがわかった。そこで急遽、変身サイボーグのボディにガ・キーンの変身セットを着せたものを「サイボーグロボ」の商品名で発売。これが功を奏し「サイボーグロボ ガ・キーン」は大ヒットとなる。マグネモとサイボーグロボはポピーでいうところの超合金とジャンボマシンダー的な住み分けが成立したのだ。タカラは急遽、第二弾アイテムとしてブルマァクとのコラボアイテムを利用して「サイボーグロボ ダイアポロン」を発売。シリーズを継続するに充分な売り上げを作り上げる。「超合金」&「ジャンボマシンダー」で攻勢をかけるポピーに対して、タカラはフルアクションの「サイボーグロボ」と「ミクロマン」「マグネモ」で対抗するという構図が出来上がったのだ。

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