見出し画像

「ドリトル先生 不思議な旅」のこと

 ロバート・ダウニーJr.主演作として注目を集めながらコロナの影響で話題になり損ねた「ドクター・ドリトル」。

 個人的には切り捨てるほど悪い映画ではなかったです。ただ原作では動物語、魚介類語、虫語に貝の言葉をシリーズを重ねるごとに先生が覚えていく過程も物語的に大きなポイントだったりもするので、最初から全ての生き物の会話を習得していて、それが学習ではなく天性のものらしいというところに違和感を感じました。イギリスの女王から広大な土地と特権を与えられているという設定は面白いアレンジだと思いますが、行方不明の奥さんのエピソードは必要であったのかどうかはちょっと疑問でした。

 原作となったヒュー・ロフティングの児童文学は1920年代の作品で井伏鱒二の名訳も手伝って日本でも絶大な人気を誇っていました。現在、角川つばさ文庫で新訳版も発売されています。

 この作品は原作も大好きな作品で岩波板は全冊読破していたりします。そして1967年公開のレックス・ハリソン主演のミュージカル映画「ドリトル先生 不思議な旅」は、かなりお気に入りの作品だったりします。
 主演は「マイ・フェア・レディ」をはじめ数々の名作に出演したレックス・ハリソン。監督は「ミクロの決死圏」で知られる名匠リチャード・フィッシャー。映画を彩る名曲の数々は様々なアーティストがカバーしています。有名なところではサミー・デイビス・Jr.によるフルカバーアルバムとかも知る人ぞ知る一枚だったりします。

 上映形式はTODD-AO形式(ざっくりいうと70ミリフイルムの規格のひとつで23本しか使われていません)で大スターであるレックス・ハリソンが主演するということもあり、かなり鳴り物入りで始まった企画だったのです。
 しかし実際にはかなり不振ではあったようで、FOXの経営陣交代の理由のひとつに挙げられていたりします。
 実際の映画は巧みにドリトル先生の原作世界を上手くチョイスしており、昔の自分には大満足の内容だったりして、今でも年に何回かは見直すくらいには大好きな作品です。
 この「ドリトル先生 不思議な旅」はオモチャの歴史的にも重要な作品で、おそらくはじめてタイアップでオモチャ展開が行われた作品でもあります。マテルやREMCO、オーロラといったメーカーが商品化に参入しています。

 中でもマテルはかなり力を入れており、当時の定番アイテムであるビックリ箱意外にもベンダブルフィギュアやトーキング人形などを発売しています。
 優れた児童文学作品に贈られるジョン・ニューベリー賞受賞作で、ファミリーミュージカル大作ブームの期待の作品としてディズニーとFOXが映画化権を争った作品となれば、オモチャ業界の期待が高まるのももっともな話です。
 前述の通り映画が不振であったためにオモチャの方の売上は芳しくなくオモチャ業界に「映画関連の商品は売れない」というジンクスを授ける結果となりました。

 このジンクスがあったおかげでルーカスは「スター・ウォーズ」の商品化権を手にし、後の帝国を作る原資を稼いだのですから、世の中何があるのかわかりません。

 ちなみに「ドクター・ドリトル」の方は大幅な撮り直しなど、公開前からドタバタしていたためか、オモチャ展開はされていませんでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?