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BMW K1200GT(K44)のファイナルドライブを修理してみた

2021/4/11に走って帰宅後、リアのファイナルドライブ部分から油漏れがあった。
ファイナルドライブからタイヤを外すと、ホイールフランジに亀裂が入っていた。これはリコール対象になっていたことを数ヶ月前に知っていた(BMW motorradからのDM)ので、ついでに修理に出すことにした。
ただ、これが結構とんでもない自前修理劇になるとは予想もできなかった。

油まみれの大惨事・・・

引き上げ

2021/4/15に引き上げてもらった。
色々調べてもらったが、下記のことがわかった。

  • ホイールフランジはリコール該当
    これはBMW扱いで無償修理

  • 油漏れは別途修理を要する
    BMWはユニット交換しかしない(40万くらいかかるとのこと)
    これは修理できる人がほとんどいないことによると思われる
    全世界共通のようだ
    ただ、費用は耐えられない
    自前での修理は難易度が別の意味で高そう、ということはなんとなくわかっていたが、やってみてダメだったら降参しよう、ということでパーツ取り寄せで自前でやることに決定
    バイク屋も「そうですか!やりますか!」と別の意味で乗り気で、パーツ手配など色々と尽力してくれた

  • カムチェーンテンショナーもリコール該当(初耳)
    これもBMW扱いで無償修理

  • カムチェーンガイドが破損している(えぇぇ)
    致命的でやばい。これはちょっと気が遠くなった
    エンジンの修理は自前では手にあまる
    見積もってもらったところ約5万円であったので修理着手

カムチェーンガイド

こいつを修理しないとエンジンをかけられない致命的な事案。
聞くところによると、だいぶ前にBMWはここを無償修理やっていたらしいが、今は「サービス時期終了」でやってないと。
BMWはこの手のものを散発的に聞く。
直列4気筒エンジンのこいつの交換は手に負えないため修理を依頼した。
修理費は5万円程度、痛いけど想定よりも安かった。
結果としてちゃんと治った。

ファイナルドライブ

ホイールフランジの交換が終わり、納車されてきたので、本題のファイナルドライブの修理にかかることにした。

ファイナルドライブ分解

まず、ファイナルドライブのケースをばらした。
心配していたギアの損傷はなし。
レースベアリングも消耗しているかと思ったが、意外にも問題なさそうだ。本当は交換したかったが、コロナの影響で出荷時期が未定とのことで、ここは後からでもなんとかいけるので見送った

ギアの損傷なし
こちらのベアリングの損傷はみられない
ギアの損傷なし

まず、スナップリングを外して(こいつも結構はずれない)、ホイールフランジを外そうとするが、まったく外れない。
サービスマニュアルを見ると専用工具で外しているようだ。
しかも、100℃くらいに暖めろとある。
専用工具は高額なので、結局、ブレーキローターを外し、自動車用のベアリングプーラーで一気にやった。
ここのところは必死だったので、写真を撮影する余裕すらなかった。

ホイールフランジ引き抜き

次にケースからシャフトを引き抜く。
ベアリングプーラー大活躍!
ベアリングの交換とかに手を染め始めると、立派な修理廃人とか。

自動車用のベアリングプーラーで抜きます
外側は約100度に加熱しています

想定通り、ベアリングが損傷していた。ボールが粉砕され、ダストシールも巻き込みで損傷していた。
その余波でゴム製のオイルシールも損傷していたこの2点の損傷は予想通りであった。

ベアリングがものの見事に損傷

ベアリング、オイルシール交換

外すときも暖めたが、ベアリング自体が損傷しているので、簡単に外れた。
金属のカスを除去して、手で触って引っかかりがないことを確認し、新品のベアリングを組み付けた。
新品のベアリングの打ち込みは相当注意を要する。
下手するとケースが割れる(割れると終了)。
今回は、写真撮影していないが、相当丁寧に暖めた。
暖めたら一気に打ち込む。
組み付け時にUltra Slickを塗布。
結構、高額なグリスだが、伸びがよくて、しかも潤滑が切れにくく使い勝手がいい。
これはかなり昔にデイトナさんから試供品でもらったもので、20年くらい使い続けている。
結構よく使ってる気がするが、全然減らない。
そして、スナップリングをはめる。スナップリングプライヤーも大活躍。

打ち込み時に使ったグリス
きれいに入りました
ベアリング打ち込みで使った工具

内部パーツの交換完了

とりあえず、いったん、落ち着いた。
次は組み立ての工程だ。

これを組み立てるのがまたもや大仕事・・・

交換するパーツまとめ

パーツ図

今回、自前修理で交換対象としたのは下記のパーツとなる。

  • 08 Shaft seal
    オイルを止めているのがこのパーツであることから、まっさきに破損が確実視された

  • 06 Grooved ball bearing
    シャフトシールの破損はこのパーツが引き起こすものであるため、諸悪の根源として破損が確実視されていた

  • 12 Shaft seal
    点検したところ、若干亀裂が入っているため、ついでに交換

ホイールフランジ装着 組み立て 試走

シャフトシールが未入荷であるが、とりあえず組み立てて、形にしてみることにした。

がんばって、くみつける

自作の工具を組み立てて装着し、サービスマニュアル通りに100℃くらいに暖め、エアーインパクトで押し込んだらなんとかいけた。
最大の難関は突破できたことになる。

ちなみにホイールフランジとタイヤを締結するボルトは、M10×ピッチ1.25である。
バイクの場合、ネジピッチは1.25が多いのだが、そのとおりであった。
通常は売ってないので、日本橋のネジ専門店(ネジのなにわ)で入手した。

ここまでいけた。
あとは、ブレーキディスクを取り付けて組み上げる。
指定箇所はネジロックを塗布する。

2021/7/27に最後のパーツとなるシャフトシールが入荷した。

オイルシール

2021/7/29 注意深く打ち込んで、ファイナルドライブのケースを組み立て、オイルを規定量入れ、タイヤを装着した。

そして、10km程度、試走。

オイル漏れは見られず、問題は解決した。

こうして3ヶ月におよぶ修理がようやく完了したリコールの措置もあったので、時間がかかったが、なによりもエンジンやミッションとは違った性質の難易度の高さがあった。

これまでシャフトドライブのバイクは何台か経験したが、構造を目にすることはなかった(というか、故障の対象にはならなかった)。

自前で修理して、その構造を直接目にする貴重な機会となったし、このバイクに対する愛着もわいたというものだ。

通常のバイクはホイールにベアリングが付いているが、最近のBMWにはついていない。ファイナルドライブのベアリングがそれに相当する。オイルによって潤滑されているとはいえ、損耗するし、気温の上下で水分なども混入する。

今後はこのオイルの交換タイミングを短くして維持に努めていこうと思う。

ようやくなおったK1200GT

後日談(また漏れた・・・)

実はまた漏れました・・・・
数ヶ月経過後、漏れたこと、漏れたオイルを見てみると、粘度が失われているため、これはオイルの相性が悪いと判断。

またもやばらす・・・

ケースをばらし、オイルを完全に排出。

オイルを落とす

こちらも一昼夜放置してオイルを完全に落とした。

カストロール ギヤーオイル TRANSMAX MANUAL 80W-90

当初、カストロールのオイルを入れたが、どうやら、ファイナルドライブの極圧に耐えられなかったようだ。オイルが悪いわけではなく、完全な私のミスチョイス。
そこで、次はこれ。

YAMAHA DRIVE SHAFT OIL

定番のYAMAHAのオイル。これはかつて、HONDA ST1100にも使用したことがある。
2022/3/30作業完了。
これでしばらく様子を見てみたい。

後日談(別のところから漏れた)

高速走行で負荷をかけるとうっすら漏れることがわかった
これまで漏れたところとは別の箇所で下記の図だと11〜14の部分、つまり、外側が漏れる

パーツ

いずれにせよよろしくないので、11(ベアリング)、12(シール)、14(ふた)を取り寄せた
他に以前からサビなどでコンディションが良くなかった17のボルト類も交換のため取り寄せた
11のベアリングが消耗して振動するため、高速では漏れ出すと推定
12は無実と思われたが、意外と交換されているようなので、念のため
14は前から変えようと思っていた

コロナの影響も少なくなり、パーツはすんなり来た
すべて日本国内に在庫があった

ベアリングを交換したところぴたっと治った

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