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とべ動物園のサルたち⑤「マンドリル」

マンドリル
Mandrillus sphinx
Mandrill
 僕が子どもの頃、昭和40年代の終わりの頃なのだが、このとべ動物園の前身、道後動物園は、保育園の遠足コースだった。松山まで1時間のバスに揺られて、「やめられないとまらない」かっぱえびせんをリュックに詰め、心を躍らせて動物園の門をくぐった。
 キリンや象、ライオンなど子どもに人気の動物たちはもちろんだが、僕が最も気を惹かれたのがこのマンドリルだった。自然の造形とは思えないような極彩色の顔をしたこのサルは、子どもにはちょっと理解不可能で、僕はあの色は動物園の係りの人が絵の具か何かで塗ったに違いないと思っていた。
 時は移り、所は変わってとべ動物園。やっぱりだ。あのマントヒヒの顔は係りの人が塗ったものだった!「マントヒヒ」とキャプションの書かれたケージの中には一頭だけ、輪郭こそ往年のままながら、その肌の色は黒いまったく別物のサルが佇んでいるではないか。
 種を明かすとなんのことはない、ケージの中にいるのはまだ3歳の若い個体で、まだあの極彩色の模様が発現していないだけだった。しかも彼女は雌。ともあれ、あの美しいなんて単純な言葉ではちょっと間に合わないような表情はとべではお目にかかれなかった。あれから少し時間が経過したから、もう出会えるのかな?
 マンドリルは、近縁のドリル同様、カメルーン西部、ナイジェリア東部、赤道ギニアのアシアヌゲマ島の熱帯雨林に住んでいる。熱帯雨林の奥深くに住んでいるのと、人を極端に恐れるため、野外における調査研究はほとんど行われていない。また、両種ともレッド・データブックに絶滅危惧種として記載されている。食物は果実が圧倒的に多く、次いで繊維質、動物質であるとされている。他のヒヒと同様に、単雄群をつくると思われていたが、最近の研究では複雄複雌のユニットで生活しているのではないかともいわれている。


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