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【本人訴訟シリーズ】本人訴訟で未払い残業代を請求する

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未払い残業代問題を取り上げます。自分だけの力で労働審判を起こしてブラック企業から未払い残業代を取り戻す!そのための実務的なノウハウや労働審判手続申立書など書面の作成について解説し…
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2019年7月の記事一覧

証拠説明書の書き方~その3【雇用契約書】~

前回のnoteで述べた通り、「雇用契約書」と「タイムカード」と「給与支給明細書」は未払い残業代の請求に際しての最強の証拠3点セットです。今回のnoteでは、その中でも最も重要な書証とも言える「雇用契約書」を取り上げたいと思います。 雇用契約書とは、労働者と雇主との間で締結される、労働条件にかかわる契約書のことです。署名捺印がされているはずです。 雇用契約を締結した労働者は、その会社の従業員ということになります。労働審判や民事訴訟の書面では「社員」という言葉はあまり見かけず

証拠説明書の書き方~その2~

証拠説明書にリストアップされる書証は、当然、労働審判手続申立書での記述と連動します。では、その申立書のどのような事実の記述に対して書証を付ければよいのでしょうか。あるいは、どのような事実について立証が必要なのでしょうか。 まず、民事訴訟法第179条によれば、「当事者が自白した事実」と「顕著な事実」は「証明することを要しない事実」とされています。前者の民事事件で言う「自白」とは、刑事事件のそれとは意味合いが異なり、申立人/原告ないし相手方/被告がみずからに不利となる事実を認め

証拠説明書の書き方~その1~

労働審判の申立てに際して作成・提出する書面については、第12回のコラムで説明しました。そのうち、まず「労働審判手続申立書」の書き方について、第14回、第15回、第16回、第19回、第20回、第21回、第23回、第24回のコラムにて、私の申立書の事例を書き出しながら、詳しく解説しました。また、労働審判手続申立書のテンプレートを(有料ではありますが)第25回のコラムで提示させていただきました。 今回から数回にわたっては、証拠説明書の書き方について解説していきたいと思います。

「固定残業代制」で残業代をごまかされるな!

前回のコラムでは、会社(雇い主)による「裁量労働制」の悪用に対抗するポイントについて解説しました。今回は、やはり、悪用されてしまえば、未払い残業代が発生する恐れのある「固定残業代制」について述べたいと思います。 「固定残業代」とは、読んで字の通り、あらかじめ固定額として設定された残業代です。労働基準法上の規定がある「裁量労働制」とはちがって、「固定残業代制」には法律上の定めがありません。なので、固定残業代制は、法律に基づく制度ではなく、雇用契約ないし就業規則や賃金規程による

「裁量労働制」で残業代をごまかされるな!

未払い残業代を請求された会社(雇い主)が労働審判や民事訴訟で「あなたとは労働契約を結んでいるわけではないので、あなたは従業員じゃない」、「あなたは課長なので、あなたは管理監督者だ」と主張してくることがあります。ともに、未払い残業代を請求された会社がその支払いを免れるための戦術。それぞれの反論ポイントは、前々回のコラムでは「労働者性」、前回のコラムでは「管理監督者性」について解説しましたので、そちらを参考にしてください。 今回と次回のコラムでは、やはり残業代の支払を避けるため