見出し画像

蛙始鳴(かわずはじめてなく)|七十二候

蛙が鳴き始める頃。蛙の声が響くようになると、野山の若葉もみずみずしく輝いて、まもなく本格的な夏が訪れます。

「古池や蛙飛び込む水の音」(芭蕉)

立夏ですね。
暦上では夏の始まりです。

かつて、この時期、
駒の湯周辺は茶色のカエルが、
それこそカエルを踏まないと歩けないぐらい
道路一面にびっちりいました。

それが、昭和50年代後半だった思うのですが、
突如、茶色のカエルがいなくなってしまったのです。

「どうしたんだ、どうしたんだ」
皆でわぁわぁ話していたのですが、
ある方が言うには、酸性雨の影響ではないかと。

カエルは水たまりに卵を産みます。
それが酸性雨の影響を受けて、死んでしまったのではないかと。

もちろん、酸性雨と茶色のカエルの因果関係はわかりません。
でも、私自身、カエルの卵や、オタマジャクシになるかならないかぐらい状態のものが、干乾びて死んでいるのをたくさん見ました。

それを見た時は、なんとも切なかったですね。

以前、茶色いカエルが、道路一面にびっちりいた時は、正直、
「うわっ、気持ち悪い」
と思っていました。

しかし、そのカエルが突然いなくなってしまった時、何か自然界からの強いメッセージのような気がして、恐怖を感じましたね。

画像3

そしてその頃から
山の花木の咲く時期も狂ってきた気がします。

私が駒の湯に嫁いできた頃は
マンサク
コブシ
うわみずざくら(上溝桜)
ウツギ(空木)

ホオノキ(朴の木)
・・・

季節ごとに山の花木の咲く順番が決まっていて、
咲く花を見ながら、季節を感じていました。

それが、昨年、
コブシとホウノキが同じ時期に咲いていたのです!
びっくりしました。

自然界のリズムが狂い始めている・・・。

画像4

中医学は「天人合一」の思想に基づいています。

「天人合一」
天と人とは相応している。
つまり天と人とは一体。
「天」とは、森羅万象なる自然界であり、大宇宙。
人はその一部として存在していて、
自然界からかけ離れて生活することはできない。
人間と環境は一体であり、
人間もひとつの小さな宇宙であるという考え方。

春はに属し
夏はに属し
長夏(夏の土用)はに属し
秋はに属し
冬はに属し

生物は、その影響の下で
春に生まれ
夏に成長し
長夏に変化し
秋に収穫し
冬に貯蔵し
生きているのです。

もちろん人間もそうです。
春の朝は早起きし、
ゆったりと散歩をし、
天地間の陽の気をたっぷり取り込む。
身体を伸び伸びと動かし、
冬の間に縮こまった筋をぐっと伸ばす。

これが、春、
万物が生まれ、芽生える時期に合った
中医学的な養生法です。
これに背くと、
夏、体調を崩します。

このように、
いかに自然に溶け込み、
いかに自然と共に生きるかが大切なのです。
それが中医学の基本であり、
気功の基本思想です。

画像4

私が学んでいた中医学の中国人の先生は
「日本人は、皆、気功が好きね」
とおっしゃっていました。

日本人は、手紙の最初に、
必ず時候の挨拶を入れます。
こういう時候の挨拶から書き始める民族は
日本人だけだそうです。
確かに日本人は、
昔から四季を大切にし、
自然と共に生きています。

なので、
「日本人は、皆、気功が好きね」
とおっしゃったのです。

しかし、今、私たちを取り巻く自然が狂ってきたことで、人間もエネルギー的に変わってきた気がします。
あの茶色のカエルが突然いなくなった時のような怖さを感じています。

画像4

七十二候は、
二十四節気と同じく
古代中国で作られました。

二十四節気は、
古代のものがそのまま使われているのに対し、
七十二候は何度も変更され、
日本でも、江戸時代に入って
日本の気候風土に合うように改定されました。
現在日本で使われているものは、
明治時代に改訂された「略本暦」のものです。

ふっと思いついて始めた
この七十二候のブログですが、
今、この時だからこそ、
繊細な四季のうつろいを愉しみ、
自然とともに生きる日々を
大切にしたいと思ったからかもしれません。

秘湯と気功に感謝を込めて。