無題(2014)

美しさによく似た清潔さで君は私を愛し、狂気によく似た耽溺で私は君を愛した。
私たちは別々の場所で同じように傷つき、同じように苛まれ、同じように諦められずに同じように足掻き、そしてあの日出会った。
世界に対する全ての認識が変わってしまうような恋だった。
君は生まれたての赤ん坊のように無垢で、空に焦がれる少年のように純粋だった。
世界の素晴らしいところが全て、君の体に凝縮されて埋め込まれていた。
それは君が目を輝かせて学び取ってきた世界の切れ端でもあり、生まれながらに携えている光でもあった。
君自身もまだ触れたことがなかったそれに、私は少しだけ触れることが許された。
私たちはらんらんと輝きながらいつまでも話し続けた。
言葉による蜜月、それはまるでこれまでの人生の答え合わせをしているような時間だったね?
私たちを苛み続けた、そして同時に魅力し続けてやまなかった世界の秘密について、私たちは別々の道を通り同じ認識に辿りついていたんだと知った時、君との出会いに心の底から感激したんだよ。
たくさん一緒に色んなものを見たね。
冬が終わり、春が過ぎ、美しい夏がやってきた。
すべての事象が一列に並んでいたことに後から気づくような、濃度を高めた過去が爆発して生まれ変わるような、そんな日々だったね。
君は私の形を教えてくれた。私は君によって生まれたんだよ。
これから私は繰り返し繰り返し、君を思い出す。
「別れは一種の出会いだよ」そう君は言ったね。
君の美しい人生を祝福できる私になれますように。
全ての幻想が追いつかない場所でいつかまた君に出会えますように。
私はつよくつよく祈ったんだよ。

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