『パラノマサイト』が面白かった。

3月9日に配信開始したミステリーアドベンチャーゲーム『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』。
『スクスト』『癸生川』を作った石山さんの新作だ。
イラストは『スクスト』のコバゲンさん。
こいつは楽しみだぜ!……ということで、僕ぁこのために(いや他のゲームも遊びたかったけど)ニンテンドーswitchを買って、5日ほどかけてクリアしました。

超ザックリ言えば七不思議をめぐる願いと呪いの物語!!
とても面白かったです!!!!!

以下、感想とかあれこれ。
ネタバレを含むので、まだ終わってない人とか未プレイの人は読まない方がいいです。
っていうか読んじゃダメだ。もったいない。
先に遊びなさい。
2000円ぐらいで買えるから。

あとプレイ済みの人向けの感想だから、用語解説なんかはすっ飛ばしますよ。

◆呪いのバトルロイヤル

さて『パラノマサイト』。
最初に作品の概要を見た時は
「主人公の青年が地域にまつわる不思議?呪い?を調べて、怪異から生き残るために頑張る話なんだろうなァー」
ぐらいに思ってたんだけど。
フタを開けてみたらちょっと違いましたね。
「死者蘇生の儀式のため、呪いパワーで魂を集めろ!」っていう超能力バトルみたいな話だった。
……いや、そんなに騒がしい話ではないんだけど。要素的にはさ。

呪いを扱う者の証、呪詛珠をチラつかせて
「お前も呪主かしりぬしだったのか……」
「お?やんのか?……お?……おぉん?」
「テメーはスデに!俺の呪いスタンドの『条件』を踏んでいるッ・・・・・・!」
「ムゥン!送り拍子木レッドバインドッ!」
っていう、仮面ライダー龍騎やジョジョの奇妙な冒険のようなバトル寸前のヒリついた空気も良かったです。
いや、もちろんこんな言い回しではないけど。イメージイメージ。

具体的に挙げれば春恵編のチャプター7で、あやめと春恵がソファに並んで座りながら呪いの発動タイミングを探り合う、あの緊張感がとてもよかった。
特にここは「どちらが先に撃つか」で話が分岐するポイントだったし。(しかも会話内容次第では先に撃っても勝てなかったり。)
何度もやり直すことが前提な仕様のおかげで、どちらのパターンの勝利も見られるのが嬉しいですね。

もしこのゲームが呪いの謎解きだけでも……いや、つまらないということはなかったと思うけど。
この超能力バトル感があったのはやっぱり好きです。

◆キャラクターあれこれ

その呪い合い、殺し合いに参加する人々。
どのキャラクターも好きになっちゃう感じで良かったですね。
全員じゃないけど、個別に思ったことなど。

◇福永葉子

プレイヤーがパラノマサイトに触れた時に、最初に登場する葉子ちゃん。
不安げに覗き込んでくる顔がカワイイなーと思いつつ「この子がこのゲームのヒロインかー。彰吾とコンビを組んで怪異の調査に当たるのかな?」などと思っていると早々に白目をむいて死んでしまう。
「なるほど!ゲームの導入のための死だな!確かにこれは呪いを使ってでも蘇らせなきゃだぜ!」
みたいな気持ちになるんですけど。
全部オメー葉子のせいだとは思わなかったよ。
やられましたね。
いやまぁ全部クリアした上で考えれば、最初に「置いてけ堀」の呪詛珠を落とすのはこの子なんだから、その後の分岐で生存ルートを辿ってもこの子が持ってるに決まってるじゃん(=じゃあ彰吾を殺したのもこの子じゃん)って話なんだけど……。
ヒロイン枠だと思い込んでたから疑いもしなかった……。
俺ってば冒頭からまんまと策にハマっていたのね。

……そういえば、ほぼ全ての事象に説明がされたパラノマサイトだけど、葉子が吉見を呪い殺した方法だけは「なんか呪術的なことをしていた」以上の描写がなかったね。
そこだけちょっと気になるっちゃ気になる。

◇志岐間春恵

物憂げな美女として登場した春恵。
最初の彰吾編では謎の人物だったけど、春恵編になると色々見えてくる。
無気力なのか天然なのか、“プロタン”利飛太の行動にいちいち素直なリアクションをしちゃう感じとか良かったです。
たまに「うん」とか返事するの、かわいくなかったすか。
駄菓子屋でくじを引いたり公園で子供に絡まれる利飛太をぼんやり見守る(?)感じとかも良かった。
……と思って見てると、不意に息子の復活のためなら手段を厭わない感じを出してきて「そうだ……こういう人だった……」と思い出させる。
基本的にダウナーな人だけど、プラスにもマイナスにも幅があってよかったです。
ちなみにこのゲームで一番びっくりしたのは、呪影の出現とかよりも彰吾編で視界をグルッと回したらコイツがいきなり真横に立ってた時です。
あれはびっくりした。
生きてる人間が一番怖いとはよく言ったもんですね。

◇櫂利飛太

パラノマで名前の変換がめんどくさい人ナンバーワン。
言動がちょっと変な探偵さんだ。

……石山作品の変な探偵というと、やはりどうしても癸生川凌介の存在を思い出してしまう。
癸生川シリーズを全部やったわけではないから偉そうなことは言えないんだけど、癸生川探偵も、そして『スクスト』のサトカも、「プレイヤーの知らない情報をいきなり持ってきても許される役」だと思うんですよ。
DS版の癸生川をやった時だったかな。
メモを取りながら必死に情報を整理して、「犯人はコイツだ!」と確信して終盤のエピソードを読んだら、ずっと単独行動をしていた癸生川が新事実を持ってきて全然違う方向に話が進んでしまって。
……いや本当、全部が全部そうではないと思うけど。この時に思いっきりひっくり返されたことがやたら印象に残っているので、そういう作風だと思っちゃってるところはある。
まぁ推理ゲームがただメモを取るだけで終わっちゃったら面白くないから、この“裏切り”自体は全然いいんだけどね。面白かったし。
サトカもいくらかそういうところがあって、EP1でプレイヤーへの説明役を担ったのは彼女だった。

……といったところで現れる今作の櫂探偵。
「またコイツが話を展開させるのかな……?」と最初は思ってしまったけど、今回は違った。
今回は視点を変えながら進む仕組みだったせいか、一人で全部持っていくようなことはなかったですね。
何やっても許されるイレギュラー感を演出する必要がないせいか、たまに変なことを言うぐらいで基本的には頼れる男でよかったです。

◇津詰徹生

話を引っ張っていくオジさん。
若手とコンビを組む「堅物のベテラン」かと思いきや、ふと軽い言い回しを混ぜてくる塩梅がとても好きです。
びっくり顔で「え?そうなの?」とか言っちゃう感じ。
……パラノマのコミカル部分って、この人が結構持ってたんじゃないかな……。
利飛太もある程度は持ってたけど、彼は変人枠だから変なのは当たり前っていうかさ……。
(ちなみに俺が利飛太で一番笑ったのは緑町公園であやめに接近する時の不審な動きである。)
(あの時も全てに無関心っぽい春恵が「威嚇……?」とか実況してるのが良かった。)

コミカルはさておき、一番の見せ場は、やっぱりあやめとの決着。
呪いの発動条件を踏んでも、あやめを娘と言い続ける覚悟はとてもよかった。
この呪い合戦の中で最後まで真っ直ぐなキャラクターだったのに、ここで退場か……ってのは残念だったので、真エンドでちゃんと生存してくれたのは嬉しかったですね。

◇襟尾純

刑事コンビの若い方。
ほぼ全編で明るく元気に振る舞っているコイツが、根島に発砲した上に取り逃してしまった時のガチ凹みしている姿は結構つらいものがある。
呪いとか関係なしに普通に大失態なので。

◇興家彰吾

主人公の青年。
かと思ったら最初の章で死んでしまって以降全く出番がなかった青年。
残りは3人分の長いストーリーが始まるので、本当に導入部分しか出番ないのかよ……。
と思ってたら、最終盤で大逆転。
お前が陰陽師の末裔。選ばれし者だ。
パラノマサイトって短めのゲームだとは思うんだけど、この短期間でも……なんて言うんだろう。シリーズ物の「前作の主人公が再登場!」みたいな空気がちょっとできてるのが良い感じだった。
どう転んでも彰吾編は彼の死で幕を閉じるので、最後に生存大逆転ルートで締めるのはよかったです。

◆ゲーム的な仕掛け

さて、上記のようなキャラクター達を動かして進んでいくパラノマ本編。
基本的には画面内を調べてメッセージを選択して……のアドベンチャーゲームなんだけど。
それだけでは解けない仕掛けがいくつもありましたね。
チュートリアルで説明される「声のボリュームも下げられますよ」なんてのが「ホラーゲーム苦手な人向けの配慮かな?」と思っていると、本編で呪いを回避するための防御策だったりするから面白い。

……余談だけど、この「声のボリュームを下げて回避する」ことになる並垣の呪い(=足洗いの屋敷)。
彰吾編で初めてボリュームを下げたら、そのまま元に戻すのを忘れてしまうので、2回目に津詰ルートで遭遇した時はもう足洗い屋敷対策はバッチリの状態で会うことになる。
……並垣、やることなすこと上手くいかないなぁ。
さっきちょっと仮面ライダー龍騎のたとえを出したけど、龍騎だったら並垣のデッキ絶対カニだよ。

話を戻して。
ゲーム本編画面だけでなく、システム設定画面も、プレイヤー自身という存在も、ゲームの一部として扱う考え方。
この辺はスクストでも何度か扱われてきたギミックですね。
ゲームの世界観に引き込んでおきながら、一歩引いた目線で解決させる頭の切り替えが面白かった。

……と、いうのが石山作品の特徴だと思うんだけど。
何度か味わってそこを期待しているがゆえに、序盤から疑ってかかってしまったのでちょっともったいない遊び方をした気がする……。

それこそ、最初のルートである彰吾編。
一周目こそゲームの説明に沿って呪いをバンバン発動して進めてしまうんだけど、ちょっと慣れてくると「呪いを発動せずに相手を逃したらストーリー分岐が発生するのか?」と考え始める。
そこで呪詛行使ボタンを押さず、相手が去るのを放置すると……それでも勝手に呪いが発動するんですね。
ここでもう気づく人は「あ、これは『彰吾視点』というだけで、プレイヤーは彰吾とは別の存在なんだな」と勘づいちゃうと思う。
「何人殺したか」のカウントも合わないし。
まぁ、具体的に「プレイヤーの役割」が何なのかまでは終盤までわからないんだけど。
麻由が倉庫から脱出する時にはもう隠さずに「プレイヤーの介入」をキャラクターに自覚させて、その違和感を浮き彫りにさせたりして段階は踏んでるんだけどね。

できたらギリギリ終盤までこの仕掛けに気付かずに、最後に「晴曼の精神とはプレイヤー自身だった!」っていう衝撃を味わいたかったなーとはちょっと思った。
……いやまぁ、謎を解こうとしてプレイするか、物語に飛び込むようにプレイするかでも変わってくるかな……この辺は……。

ただまぁ、全編に渡って散りばめた「プレイヤー介入の説明」は最後に全てキッチリ理由がつくので、そこはお見事。
「ゲームだから操作はするでしょ」みたいな当たり前じゃなく、プレイヤーが参加することの全てに物語的な意味を持たせてあるのは丁寧でよかった。

◆クリアした後は……

さて、葉子を阻止して全員が生き残るエンディング6を迎えて、パターンはこれで全部だと思うんだけど……他にもあるだろうか?
なめどりも全部発見して(ストーリー一周目で全部いける)、資料も全て揃ったはずなんだけど、なぜか26番目だけが埋まらないままになってしまった。
順番からすると場所の説明っぽいんだけど……ルートは全部解放したぞ……?
どこかで横道を見逃したんだろうか。
ここまできたら全部埋めたいけど、これを探すのは大変そうだ……。
(ところでこの資料、タイトル通りにファイル23にこのゲーム自体が収まるのがイケてますね。)

ともあれ、これで一応はクリア完了と言ってもいいでしょう。
雰囲気が良かったので、まだこの世界観に浸りたいんだけど……アドベンチャーゲームだから「終わったら終わり」なのが惜しいなぁ。
アクションゲームだったら、意味もなく好きなステージをグルグル走り回ったりするんだけど。
このゲームの肝は謎解きだしな……全部味わってしまったよ……。

あ、音楽が良かったのでサントラは買いました。
オープニングとかいいよね。
あと終盤で新事実が発覚する時の曲。あれ好き。

あとは、舞台となった墨田区の本所地域に行ってみたいですね。
ゲームに合わせて、墨田区では「本所七不思議探索地図」なんてものも配布されていたし。
そのうち行ってみたいと思います。

……そしたらアレ欲しいな。呪詛珠。
なんかで商品化しないかな。
……人殺しの呪いアイテムだししないか。デスノートだって商品化してなかったし。
あれをこう……持ってさ……橋やら公園やらでチラつかせて「お前も呪主だったのか」とかやりたくないすか。俺はやりたいよ。そういうオフ会。

あ、でもそのオフ会にライターは持っていかないようにします。
あと嘘もつかない。
解散する時は背中を見せないように一番最後に立ち去る。
あとは……なんだ……あとで資料見ておこう……。

とまぁ、長くなりましたが僕の感想はこんなところです。
クリアを急いだつもりはなくて、なるべくじっくり読んでメモ取りながら進めたつもりだけど……それでもまだわかってない部分もあるような気がする。
またイチからなぞってもいいかもしれない。
面白いゲームでした。満足。