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デザイナーの役割

私は英語講師を10年やってデザイナーになったのですが、実は社会人始めて最初の会社は三井物産で、しかも2週間で辞めたといういろんな経歴を持っています。

デザイナーになって2年ほどしてからある銀行のインハウスデザイナーとして温々と5年ほど過ごした後、フリーランスでデザイナーをしていました。フリーランスは自分自身が会社なので、デザインのスキル以外に学ぶ点がとても多かったのを覚えています。また、同時にデザイナーとして数多くの同業者の中から選ばれ、生き残っていく術を身につけることができました。おかげさまでヨーロッパと北米では少し著名になり、名指しでプロジェクトに呼ばれたり、講演会を開けるようになりました。

今回は、その中でも一番大事だと思ったデザイナーとしての役割や心構えを書き綴ってみました。一般論は関係なく、個人的に思うことですが。。


Wow(あっと言わせること)

プロジェクトでは、まず目標を共有しますよね。目標やビジョンは言葉で説明されることが多く、一つの言葉でも人によって思い描くイメージがまちまちだったりするし、本来のビジョンを理解するまでに時間がかかったります。もちろんビジョンの言語化は必須で、理解の違いを完全に埋めるのは言葉だと信じています。一方、デザイナーは考えや言葉など、見えないものを「カタチ」にできる職業です。カタチの威力は計り知れません。1000の言葉より、1枚の絵。ビジョンや方向性を明確に表現することで、はっきりとした道筋をパッと示します。0.1秒で。私の場合、物事を明確にするだけではなく、世界観や夢を共有することでチームのモチベーションを高め、団結力を強めることもしています。目標の地点をはるかに通り過ぎた、未来の世界観を描くのです。クレイジーに聞こえますが、夢が広がり、皆を奮い立たせることができます。尖っていない無難な提案を最初から考えたり、クライアントの色の好みなど細かいことを気にしてちまちま考えるのは嫌いです。クレイジーな方が楽しいし、みんなの気持ちを同じ方向に向けやすい。大きな変更や大胆な表現には尻込みしがちな大企業のクライアントなどは、その負のベクトルを打ち消すような力強く魅力ある提案が不可欠。ダメでもいいんです。その人たちのことを真剣に考えて語ってあげてるんだから。

あっと言わせるのはクライアントやユーザーだけでなく、まずチームメイトから。恥ずかしくても思い切ってアイデアを共有すべきです。そのうちあなたを「何か面白いことをやってくれる人」としてみんなが頼ってきたり、周りの人たちも同様にアイデアを持ち寄り、仕事を楽しむようになりますよ。

Invention(発明すること)


アイデアを出すというより、一つ一つの要素を発明するくらいの気持ちで新しいデザインを作り続けること。作りながら手に震えが出たり、いきなり大声で叫びたくなるくらい斬新でオリジナルなものを発見して、形にしていくこと。造り手自身が感動しなかったら、それを使う人には絶対伝わらないです。(つい先日もカフェで仕事中に叫びそうになるのを抑えてました。。)


Story(語れること)


機能のないデザインは、デザインでなく飾り、とよく言われますがその通りです。一つ一つの要素は全て意味を持ちます。「ここ、どうして赤なの?」と聞かれて、すぐ答えられなかったり、何となくカッコいいから、とかいう答えはあり得ないはずです。その形になるに至った自分のストーリーを語れるようにしておくこと。


Original(オリジナルであること)


他の人にはできないことを売りにすること。企画書の表紙にある自分の名前や会社名を変えたらそのまま他の人の企画になってしまうのであれば、その企画は誰にでもできるということです。誰にでも出来そうなことは、必ず既に誰かがやっています。あなたしかできないことを一つでもいいから入れましょう。だいぶ前、アートディレクターの石岡瑛子さんがNHKプロフェッショナル仕事の流儀で、仕事で大切にしていることはOriginal, Timeless, Revolutionaryだとおっしゃっていました。誰かが出来そうなことをやっても意味がない。やるなら、その遥か上の上の上、誰も届かないところを目指すか、他の人には到底考えられない独自のアレンジを加える。

石岡さんのその3つの単語は自分も常にスケッチブックの裏表紙に書いています。


Love(自分のデザインを好きになること)

自分がデザインしたものを好きになってはいけない、とよく聞きます。それだけで満足してはいけないし、ボツにされたら落ち込むだけ。でも私は違うと思います。自分が好きにならなかったら、他に誰が好きになってくれるでしょうか? 最高の力で考えて作ったものなら、絶対に思い入れがあるはずです。好きになっても、愛してもいいと思います。でも、もしそれが受け入れられなかったときどうするか。悔しくなっても泣いてもいいです。多少意地になってもいいです。でも、ボツにされた理由を聞き、それを受け入れ、次に更に良いものを出して、次は絶対こいつを驚かせてやるっていう心の準備をすることができないとダメです。

恋愛と同じかな?


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