見出し画像

磁石になる


「たくさん穴の空いた、水の入ったバケツがある。水が漏れていかないようにするには、どうしたらいい?」

今でもはっきりと覚えていますが、キャリア始めた頃の会社で上司にそんな質問をされました。

お察しの通り、問題解決に対する考え方を抽象的に聞いたんだと思います。皆さんだったらどう答えますか? 私は一晩考え、一番自分らしい答えを考えつき、次の日上司に言ってみました。

「水を引きつける磁石をバケツの上にかかげればいいと思います!」

自信はあったものの上司の反応が気になっていた私に、上司はすぐに鼻で笑って小さく言いました。

「いや、そりゃ無理でしょ。」

その後のことは覚えていません。たぶん、自分なりに素晴らしいと思った回答を理解してもらえなかった悔しさが相当残ったような気がしますが、一方で、突飛であっても答えを鼻で笑われる会社にはいても意味がないと思って、どうでもよくなったのかもしれません。でもそれから数十年近く経った今も、「水を引きつける磁石」の考え方は変わっていません。水は穴から出て行ってしまうけれど、その力に勝る引力を持つ「何か」を作れば、問題を完璧に解決しないまでも、そこから離すことができる。自分はその「何か」を作る人になろうと。

人を惹きつける「何か」とは何でしょう。「格好良さ」や「優しさ」「美しさ」「心地よさ」などたくさんありますが、自分が特に必要だと考えているのは「楽しさ」です。楽しければ、目的が何だか分からなくてもやってみたくなるし、すごく不便だけど楽しいから続けられるものもある。もし用途が同じ2つの商品があっても、片方は使っていると楽しくなるような雰囲気があるなら、絶対にそれを買ってもらえると信じています。そして私は、楽しいだけじゃなく、使ったら役に立つものをつくる人になる、と決めています。

ここ数年で、楽しさから入る知育アプリや育児プロダクトをつくって、賞も実績も残してきました。でも実は私にはある明確な目標があって、いまだにそこに届かずにいます。それは、皆さんもきっと見たことがある、シンプルで楽しくて役に立つもの。何だと思いますか?

それは(ここまでスッキリ書いておいて最後になんですが)、たまに男子の便器に見かける、あの小さな的(マト)です! 多分あの的は100%狙われます。狙われると当然床が汚れにくくなる。シンプルかつ効果的。最強!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?