知っていること

12

そっからハナさん、清二さん亡くなって自分が美子ちゃん育てていかねばならねっていうのあったんだよ。娘の幸恵さんは折角先生の資格あって辞めさせるの勿体ねえがらって言ってたがら、幸恵さんに先生続けさせて一所懸命美子ちゃんの面倒見たんだよ。まああの小学校建てる時、一番ハナさん熱入ってたしな。幸恵さんを将来、この村の先生さならせて一緒に住むってのが夢だったんだべ。あらかた叶ったんだけどなハナさんの夢は。んだのも、こういう風になってしまうってのは考えもしねがったんだよなあ。幸恵さん学校さ教えに行けば川村さんの双子がもう小学校に上がってる年でな、教えね訳にはいかねえべ？だがらそこは先生として生徒にちゃんと勉強教えてたんだよ。わがんね所あったら居残りさせて教えでな。したらその年の秋に家が燃えちまったんだよ。んだ、夕方近くの4時過ぎだ。ハナさんと美子ちゃんは無事だったから良かったんだのも幸恵さんちょいとおかしくなってよぉ。あんまり可哀想だから新しい家建つまでまわり近所のもん同士励ましたり、美子ちゃんの面倒を見たりしてな。小さな家だったから建てるの早くて真冬になる前に三人で生活できるようになったんだよな。出火の原因？そらあんたの方がよーく知ってるべぇ。表向きは庭でハナさんが焚き火してた事になってで、本当は川村さんの旦那が火を着けたんじゃねえのかって皆噂してたわ。ハナさんうっかり焚き火で家燃やすようなそんただおなごじゃねえから。あの人は庇ったんだよ。負い目もあったんだろうし美子ちゃん可愛かったがら自分がやった事にすれば「火事になった理由」分がんなくなるべ？さすがに幸恵さんは分がってしまったからほれ、おかしくもなるわな。それに川村さんとことハナさんとこは親戚だべ？もう親戚でごたごたすんのは終わりにしてくんろって頭まで下げに行ったんだどよ。

清二さんの物もすっかり燃えてなぁ。写真一枚もねえわ。よーく燃えたんだよ。ごうごうと燃えてる家を見てたハナさんが忘れらんねえわ。