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M&Aと受取配当金② 分割型新設分割で子会社株式を新会社に承継させて、すぐに子会社から新会社に対して配当するとき、益金不算入規定は適用できるのか


今回はM&A実務でよく見かけるようになった「分割型新設分割」と絡めた受取配当金の論点です。

論点:分割で子会社株式を移した後にすぐ配当しても益金不算入になるか?

M&Aを検討している対象会社に100%子会社(A社)がありますが、この子会社は譲渡対象外とする予定です。
そこで、分割型新設分割でその子会社株式を新会社に移転することを検討しています。
分割後、すぐにその子会社から新会社に対して配当をした場合、完全子法人株式等として益金不算入規定を適用できるのでしょうか。

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回答:完全子法人株式等ではないが関連法人株式等には該当し、ほぼ益金不算入になる

完全子法人株式等には該当しないので適用できません。
条文を見ると、適格合併により株式を承継した場合の特例はありますが、会社分割にはそのような特例は存在しないためです。

ただし、保有期間が6カ月以上であれば、関連法人株式等として受取配当金の益金不算入規定が適用され、控除負債利子を除き非課税とすることができます。

考察 

先に関連法人株式等の定義を見てみましょう。

以下の法人税法施行令第22条の3の3において、適格分割で分割法人から株式の移転を受けた場合、分割承継法人の株式等の保有期間は分割法人の保有期間とする、という特例があります。

法人税法施行令 第22条の3 関連法人株式等の範囲

第22条の3 関連法人株式等の範囲
(省略)
3 内国法人が次の各号に掲げる事由により当該各号に定める法人()から他の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の1を超える数又は金額の株式等の移転を受けた場合における第1項の規定の適用については、当該法人が当該株式等を有していた期間は、当該内国法人が当該株式等を有していた期間とみなす。
一 適格合併 当該適格合併に係る被合併法人
二 適格分割 当該適格分割に係る分割法人
三 適格現物出資 当該適格現物出資に係る現物出資法人
四 適格現物分配 当該適格現物分配に係る現物分配法人
五 特別の法律に基づく承継 当該承継に係る被承継法人

つまり、適格組織再編により株式を移転した際には、受け取る側は渡した側の所有期間を引き継げる、ということですね。

法人税法施行令 第22条の2  完全子法人株式等の範囲

一方で、完全子法人株式等の定義を見てみると、そのような特例が「適格合併」だけでしか規定されていないんですね。

第22条の2 完全子法人株式等の範囲
(省略)
3 内国法人が当該内国法人を合併法人とする適格合併()により当該適格合併に係る被合併法人から配当等の額の元本である当該被合併法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の株式等の移転を受けた場合において、当該適格合併が当該配当等の額の前項に規定する計算期間の末日の翌日から当該配当等の額の支払に係る効力が生ずる日までの間に行われたものであるときは、第1項の規定の適用については、当該被合併法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつた期間は、当該内国法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつたものとみなす。

そのため、会社分割で株式を承継した場合においては、完全子法人株式等には該当しないことになります。

つまり、完全子法人株式等には該当しませんが、(6カ月以上の継続保有を前提にすると)関連法人株式等には該当するということですね。

そのため、控除負債利子を除いて益金不算入となります。


では、源泉徴収される税金については全額所得税額控除を使えるのでしょうか??
気になる所得税額控除については、また次回に。

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