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M&Aと役員退職金① 過去に一時的に退任していた期間があるときに、退任前の勤続年数も考慮できるか

論点

M&Aに伴い役員退職金を支給しますが、その役員は、過去に体調不良で数年間役員を退任していた時期があります。登記上も退任登記をしており、復帰時に就任登記をしています。所得税額控除の勤続年数を計算する際に、退任前に働いていた年数も考慮していいのでしょうか。

回答

過去に退任した際に役員退職金を受け取っていなければ、退任前の勤務期間も勤続年数として考慮することができます(所得税法施行令69-1イハ)。

考察

一度退任していても、過去に勤務していた分の年数は所得税額控除として使用できるということですね。
もちろん休んでいた期間は勤続年数として数えることはできません。

なお、M&Aの場面で重要な、役員退職金の損金算入限度額の金額についても、同様に考えてよいと考えます。以前国税庁の電話相談で確認した際にはその旨の回答が得られました。


過去の退任時に退職金を受け取っていた場合の特例

ちなみに、過去の退任時に退職金を受け取っていた場合でも、会社の役員退職金規定で退任前の期間も含めて退職金の金額を決定することが明示されている場合には、退任前の期間の勤続年数を考慮することができます。(所得税法施行令69ー1ハただし書き、所得税法基本通達30ー10)

こちらに関して私自身の実体験はありませんが、どのような趣旨でそのような規定が存在するのか興味深いです。


関連条文

今回の関連条文は2つあります。

①所得税法施行令69条 退職所得控除額に係る勤続年数の計算

法第30条第3項第1号(退職所得)に規定する政令で定める勤続年数は、次に定めるところにより計算するものとする。

一 法第30条第1項に規定する退職手当等(法第31条(退職手当等とみなす一時金)の規定により退職手当等とみなされるものを除く。以下この条及び次条において「退職手当等」という。)については、退職手当等の支払を受ける居住者(以下この項において「退職所得者」という。)が退職手当等の支払者の下においてその退職手当等の支払の基因となつた退職の日まで引き続き勤務した期間(以下この項において「勤続期間」という。)により勤続年数を計算する。ただし、イからハまでに規定する場合に該当するときは、それぞれイからハまでに定めるところによる。

イ 退職所得者が退職手当等の支払者の下において就職の日から退職の日までに一時勤務しなかつた期間がある場合には、その一時勤務しなかつた期間前にその支払者の下において引き続き勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算する。

ロ 退職所得者が退職手当等の支払者の下において勤務しなかつた期間に他の者の下において勤務したことがある場合において、その支払者がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに当該他の者の下において勤務した期間を含めて計算するときは、当該他の者の下において勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算する。

ハ 退職所得者が退職手当等の支払者から前に退職手当等の支払を受けたことがある場合には、前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間の末日以前の期間は、勤続期間又はイ若しくはロの規定により加算すべき期間に含まれないものとして、勤続期間の計算又はイ若しくはロの計算を行う。
ただし、その支払者がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに、当該前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間を含めて計算する場合には、当該期間は、これらの期間に含まれるものとしてこれらの計算を行うものとする。



②所得税法基本通達30-10 前に勤務した期間を通算して支払われる退職手当等に係る勤続年数の計算規定を適用する場合

令第69条第1項第1号ロ及びハただし書の規定は、法律若しくは条例の規定により、又は令第153条《退職給与規程の範囲》若しくは旧法人税法施行令第105条《退職給与規程の範囲》に規定する退職給与規程において、他の者の下において勤務した期間又は前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間(以下30-11においてこれらの期間を「前に勤務した期間」という。)を含めた期間により退職手当等の支払金額の計算をする旨が明らかに定められている場合に限り、適用するものとする。


(参考)所得税法基本通達31-2 勤続年数の留意事項

今回の事例には当てはまりませんが、参考になりそうなので載せておきます。


所得税法基本通達31-2
令第69条第1項第2号《退職所得控除額に係る勤続年数の計算》に規定する退職一時金等に係る勤続年数の計算に当たっては、次のことに留意する。

(1) 当該退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間が、例えば、休職又は停職の期間を2分の1とするなど、時の経過に従って計算した期間に一定の率を乗ずるなどにより短縮して計算されている場合には、その短縮をしない期間により勤続年数を計算すること。

(2) 当該退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間が、例えば、休職若しくは停職の期間又は掛金等を負担しなかった期間等を除外するなど、一部の期間を全く除外して計算されている場合には、その除外された期間を除いて勤続年数を計算すること。

(3) 当該退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間が当該退職一時金等の給付の基因となった制度等に加入する前の勤務期間を含めて計算されている場合には、その含められた期間を通算して勤続年数を計算すること。

(4) 当該退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間が、例えば、いわゆる任意継続組合員であった期間を含めるなど、退職の時以後においてその受給者が保険料又は掛金を負担した期間を含めて計算されている場合には、その含められた期間を通算して勤続年数を計算すること。


一日一条

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