「現代女性の戦闘服」mame kurogouchiの魅力

 Mame kurogouchiというレディースアパレルのブランドをご存知だろうか。ファッション通ならばここ5年ほど飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けるこのブランドの服に魅了されている女性も多いはずだ。テレビドラマやCMなどのテレビ媒体の衣装に取り上げられることが多く、モデルや芸能界にもファンを公言する人が続出する、隠れた、しかし大人気のブランドだ。
 Mame kurogouchiのデザインの特徴は、なんといっても隅々まで計算された繊細な曲線と、まるで美術品のような高度な技術で生地の上に再現された柄や刺繍だ。デザイナーである黒河内真衣子氏が自ら「現代女性の戦闘服」というコンセプトを打ち出して、日本人女性の体を最も美しく見せるデザインを追求してきた。戦闘服、という強いワードとブランドの繊細なデザインとは一見相容れないようであるが、美しい服を身に纏い自信を持つことが女性のしなやかな強さを助けてくれる、ひとたび袖を通すと、そのことがよくわかる。視線が少し、上を向くのだ。そして一生着続けたい、これを着こなせる歳の重ね方をしたいと思わせるタイムレスな魅力がある。とても魅力的な服作りをするブランドなのだ。
 黒河内氏は三宅一生の元で修業を積み、2010年、20代半ばの若さでブランドを立ち上げた。当初から一目見ればmame(ブランド立ち上げ当初は”mame”のブランド名であった)の服とわかる徹底された哲学で、ファッショニスタたちの目を釘付けにしてきた。ブランド初期は直営店を持たず、一着あたりの生産数も希少で、新宿伊勢丹やごく一部のセレクトショップなど限られた高感度の店でのみ扱われていた。
 昨年2021年は、ブランドにとって新しいフェーズへと移行した年だった。黒河内氏の故郷にある長野県立美術館のリニューアルに伴い、美術館職員の制服デザインを黒河内氏が手掛け、同館にてブランドの10周年を記念しての展覧会「10 Mame Kurogouchi」が開催されたほか、UNIQLOとのコラボ商品の発売も実現した。UNIQLOとのコラボ商品発売時は入店時に整理券が配布される人気ぶりで、それまではMame Kurogouchiの服が欲しくても高価で手が出なかったというファンを一気に取り込むことに成功した。UNIQLOでの商品は、コスト的に柄や刺繍を再現することは難しかったのだろう、一貫して無地の商品、それもインナーに特化したラインナップであったが、UNIQLOの技術力で耐久性のある素材で繊細な曲線が見事に再現されていた。
 相変わらずシーズンごとのコレクションは高価で希少価値が高い、所謂ハイブランドだが、共に歳を重ねていく一生ものの勝負服として、クローゼットに1着、Mame Kurogouchiのドレスをおいておくのはいかがだろうか。



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