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人生を支える2人のお姉さんについて

自分の人生を語る上で欠かせない、深いお付き合いの方々が沢山いる。家族、友人、恩師、etc。一方で、それほど深い関係でないけれど、生きていく上で、いてくれないと困るお姉さんが2人いる。

マッサージ師のTさん

中国のご出身、片言の日本語を操る推定40歳くらいのお姉さん。

Tさんに出会う1年ほど前、私は実験をしすぎて「ぎっくり首」を発症し、2週間首が一切動かせない生活を送った経歴がある。その後遺症で、酷い首凝りと肩凝りに悩まされていた。その1年間は何度かマッサージ店に行ったものの、気休め程度であまり効果は感じられなかった。

ある休日、都心で友人と遊ぶ約束をしていて、1時間くらい時間が空いてしまった。そこで暇つぶしに飛び込んだのが、Tさんのいるマッサージ屋さんだった。

Tさんの柔らかい手が、優しく、しかしそれなりの強度で凝り固まった首と肩をほぐしていく。

「右の首がすごくコイですね〜」

と言いながら、古傷の周りは10分ほどかけて集中的にもみほぐされた。たぶん、「凝る」と「硬い」が混ざっているんだろうと想像する。日本語、難しい。10分間凝っている場所を突かれ続けるのは、なかなかハードだった。寝転んでるだけなのに、かなり汗ばんだ。

全身の施術が終わり立ち上がると、1年間首に飼い続けた魔物が、家出していた。こんなに楽だったのか。首に羽が生えたかと思った。

それ以来4年間、Tさんのいるマッサージ屋さんに通っている。実はお店が遠いので何度か浮気したこともあるのだが、一度として満足できなかった。下手くそなマッサージ屋さんに入った時の、施術中のやるせなさは半端じゃない。何度かの後悔を経て、もう絶対に浮気はしないと誓った。

美容師のMさん

長らく美容室ジプシーを続けた私が出会ってしまった運命の人。おしゃべり好きの明るいお姉さんで、初回のその日のうちに、我々は同い年であることが分かった。さらに、彼女の高校の同級生が、私の中学校の同級生であることが分かった。ミラクル。

お洒落に疎い私は、美容室でアレコレ好みを聞かれるのが苦手だ。「襟足どうしますか?」「前髪どうしますか?」「どれくらい梳きますか?」…全部お任せするから良いようにしてくれ!と叫びたくなる。

Mさんは、私のそんな様子を一瞬で察知、最低限の要望だけ聞くとあとはアレコレと提案し、あやふやな私の意見を聞きつつも最終的にはMさんが決断してくれる。そしていつも最高に「良いように」なる。ありがたや。

サバサバした性格も好き。「昔とある美容室で男の美容師さんに『かわいくしますね〜』と言われて嫌だった」と話すと「かわいさとか求めてねーよって感じですよね〜!」と間髪入れずに返してきて、一生ついて行きます姉御…と思った。

2ヶ月に一回髪を切りに行くたびに近況報告をしている。お互い同じ時期に結婚したこともあり、かなりプライベートを共有する間柄。それが4年間続いている不思議。

プロフェッショナルの人柄と技術

彼女らの人生にとって、私の存在など全く重要でないだろう。しょせん、数多の客の中のひとりだ。しかし私にとっては、人生に欠かせない2人のプロフェッショナルだ。他の誰かではダメな、唯一無二の存在。その非対称性が可笑しいなぁと思いつつ、人柄と技術に惹かれて何年も通い続けている。自分は客商売ではないが、彼女らのように人柄も技術も一流なプロフェッショナルになりたいものである。

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