初期研修を振り返って

【初期研修修了】

 亀田総合病院の地域ジェネラリストプラグラムでの2年間は非常に密度が高く自身の成長に繋がりました。尊敬する先生方との出会い、何もわからない自分に優しく教えてくださった上級医の皆さん、同期・後輩のみんな、全てに感謝しております。

 僕が亀田の地域ジェネラリストプログラムを志望した理由は、診療所から三次病院まで全ての段階における患者ケアを経験できること、総合診療に理解のある専門科のローテーションであること、亀田にはどんなチャレンジでも受け入れてくれる土壌があることです。その全ては僕の期待をいい意味で裏切ってくれて、本当に来てよかったと思いました。

【2年間】

 この2年を通して、僕が実際に訪れて学んだ場所は診療所〜三次病院に留まりませんでした。市役所から始まり様々な地域医療資源、医療福祉サービスをみて、診療所での継続外来、地域活動、二次病院での救急と入院管理、三次救急およびClosed ICU、そして海外研修でのアメリカのプライマリ・ケアといったほとんど全ての段階の医療にふれることができました。患者さんが何に困ってしまって、どのようなステップを踏んで病院にたどり着き、そして退院後にどのような生活をするのか。僕が学びたいと思ったことを実際の経験として手に入れた感覚があり、これからの医師人生にも大切な宝になりました。

 そして亀田総合病院は総合診療に対し理解のある病院でした。どの専門診療科をローテーションしていても、自分の将来の目標を話し、そこから逆算して考えたものについては全て受け入れて協力してくれる場所でした。目標設定のメンタリングをしてくださった先生方には感謝しかないです。特に日下先生は毎月2時間ほども時間をとって面談をしてくださり、成長を支えてくださいました。この場を借りてお礼申し上げます。

 2年間、総合診療医に囲まれて初期研修を経験することができたのは僕にとって本当に運が良かったと思います。もちろん専門科にもロールモデルとなる素晴らしい先生は多かったですが、総合診療の先生方と実際に一緒に診療をすることや、患者さんについてディスカッションを何度も重ねることで医師として大切なことは何かをたくさん受け継ぐことができました。そして、1年目には総合診療医とは何か。2年目には家庭医とは何か。自分の言葉で納得のいく解答を見つけることができて将来に向けて大きな基礎となったと思います。

 また臨床にほとんどの時間を費やしていましたが、それだけではなかったです。有志同期と協働して、初期研修医の教育改革のために様々なシステムを構築する一助になったことは良いチャレンジでした。大きな組織がどのように動くのか、過去から現在に至るまでの歴史が何を示すのか、それぞれの個人の力関係など、チームダイナミクス・マネジメント・リーダーシップなど色々なことが有機的につながってより深い理解となりました。

ただ、この2年間は非常に強い痛みを伴う出来事が多く、メンタル的にもかなり危うい時もあって正直全てから逃げ出したくなる場面もありました。婚約者からは別れを告げられ、大切な人は最悪な形でバーンアウトし、永遠に会えなくなった人もいます。悩む事がたくさんあって辛い時間も多かったですが、なんとか前を向いてまた進むことができるようになりました。できるだけ臨床に集中したくてほとんど研修医室か医局でしか生活しておらず、最後はもはや病院で寝泊まりすることが多かった(強制ではなく)ですが、いい思い出です。来年度は少し人間らしい生活を取り戻そうと思います。

【これから】

 来年度からは亀田ファミリークリニック館山で家庭医専攻医として勤務させていただきます。次のステップとして家庭医専攻医を選んだ理由としては、第一に「まずは本物になる」ということがありました。3年目から母校の大学に戻って教育活動をしたり地域に出て学生とイベントをしたり、色々な楽しくてやりがいのあることをやっていきたい!という気持ちがありつつも、初期研修を経験してまだまだ自分の実力不足を感じており、どうしても自分が中途半端になっているように思いました。何かしたいと思っても、力が認められないと話にならないのは今までの人生と初期2年間でよく学びました。2足のわらじを履くことは自分にとっても他人にとっても良くない影響を与えてしまうのではないかと思うようになり、まずはがむしゃらに本気で研修に取り組んで、家庭医としての基礎を最高の環境で作りあげることが、僕とこれから僕に関わってくれる人たち双方のためになるのだと信じています。

 第二に、「Art と Science」をどちらも大切にハイレベルに学びたいと思ったからです。亀田家庭医はScienceを疎かにすることなく、Artの部分で非常に深い学びを得られるところだと実感しています。僕はScienceから逃げてしまう傾向があるので、ヤブ医者にならないためにも厳しく弱さを見つけてくれるところで成長しなくてはならないと思いました。

 亀田家庭医でも様々なことにチャレンジして、ArtとScienceを兼ね備えた立派な家庭医に成長していきたいと思います!

【その後】

 まずは4年間かけて患者を診て、人を診て、家族を診て、地域を診れるように成長する。それが僕の基軸となり、そして国、世界、星のことまで守備範囲を広げる。そんな自分になれるように、最高の未来を作れるように楽しんでいきたいです。「目の前の人のどんな苦しみにも対処できる手段をもつ、苦しみを体験しないように予防できる。」そんな人間になれることを想像するとワクワクしています。

 おそらく死ぬまで飽きないと思います。医者選んでよかったです。

 来年度からもよろしくお願いいたします!

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