紙飛行機
パーティ会場で、大人たちがスピーチをしている。
その間、見ている人たちは、紙飛行機を飛ばす。
みんな目がキラキラ輝いている。
小さな頃、紙飛行機を作って飛ばした。鶴を折るのは正解の形があるけれど、紙飛行機にはなかった。折り方によって、早く飛んだり、すぐに落ちたり、飛行機の形はなんでもありだった。なんでもありに心を弾ませて、紙飛行機を作った。
親に向けた手紙も点数の悪いテストも、なかったように全部紙飛行機にして飛ばした。ちょっと悪い気もしたけど。
ここでは正当化されている。大人たちがみんな、誰一人悪い気持ちもせず紙飛行機を飛ばしている。
スピーチが始まる。
一人目の人は、日本人のおじさんだった。ワニにヘリウムガスを吸わせたら、音が高くなったって言っていた。1分じゃ足りなかった。もっと聞きたかったけど1分の指定の枠をきちんと守るところはさすが日本人って感じだった。
二人目の人は、アメリカ人。化学調味料がいっぱいで美味しくないのにスパム食べ続けてる人、すごいよ、おめでとうって言ってた。皮肉たっぷりだった。皮肉をいいすぎて1分を超えてしまった。
もうちょっと話聞きたかったのに、1分を超えた時、あいつがやってきた。
ミス・スゥイーティープーだ。8歳の少女。
私退屈なの!!と言った。
8歳の少女に罵倒されるのが1番心に響くらしいという研究結果により、一分の指定を超えた時に彼女が来る。
全員のスピーチもうちょっと聞きたい欲が加速するので、すごくナイスな提案だと思った。
この会場まで、みんな大人たちはロープに縛られてくる。迷子にならないように。大人たちが迷子になるのか?ならないのか?そんなことはどうでもいい。
大人になって、紙飛行機を正当化して飛ばすことができて、1分間その空間でスピーチできるのは幸せ者だ。ましてや、ミス・スゥイーティープーに罵られるのも、また一興だ。
私、ミス・スゥイーティープーに罵られたことあるねん。なんて言われたら嫉妬心が蠢き出すだろう。
18年間、日本人がこのパーティ会場に参列している。
みんなこの場所に来る努力をしている。
オリンピックで金メダル取る努力する人もいる。
芥川賞取りたくて毎日執筆活動している人もいる。
ギネス取りたくて努力している人もいる。
何か1つしかこれから努力できないとしたら、この会場に行くまでの努力をするかもしれない。
私も紙飛行機飛ばしに行きたい。
スピーチ1分超えて罵られたい。世界中の研究者の前で。
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