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武者修行を終えて 〜僕たちは経験泥棒になっていないか?

 「あいつらには力がある」と言って、日本の若者たちのために大きなビジネスを立ち上げた男がいます。


 先週8月18日から31日まで、鳥取県の米子で武者修プログラムのファシリテーターとして参加してきました。今日はそのお話をしたいと思います。

 (武者修行の詳細はこちらをご覧ください。https://mushashugyo.jp)

 先に概要を説明すると、大学生が日本国内の場所に2週間集まり、そのタームのミッションを顧客にヒアリングをして、ニーズを把握した上で、ビジネスを0から考え、予算を使って試作、最後に実際に顧客に対してビジネスをするというプログラムです(学生の参加者は自費での参加です)。

 武者修行のプログラムは、2週間の中で様々なことが起きます。「顧客の声を拾えない」「ビジネスプランの行き詰まり」「試作ができない、売れない」といったビジネスの課題だけでなく「個人の葛藤や不安」や「チーム内の衝突」が起きます。学生たちの学びが最大化されるように、ビジネスをみるBFT(僕はこちら)、チームビルディングを担当するTFTがいます。

 学生たちは2週間で、本当に本当に(目に見えて)成長します。初めは全員に対して意見を表明できなかった学生が、元気に自身の意見を主張できるようになったり、自己の開示ができなかった学生が周囲との葛藤の乗り越えて自己を開示し、交流できるようになったりします。

 僕は、このプログラムに関わることで、大きな喜びと豊かな時間を過ごすことができて、ハマってます(笑)。本来は学生の成長(武者では変態、自走式エンジン、人類2.0といった概念で説明されるのですが)のためのプログラムで本末転倒的なことなのですが、自分自身(40超えたおじさんですが)驚くぐらい内省できますし、成長できます。何より、学生たちの頑張りに毎回驚きます。特に今回は、米子駅から少し歩いた商店街の活性化という日本全国どこでも問題となっているような難しいテーマでしたが、学生たちは必死にビジネスに向き合い、優れた成果を出していました(本当にびっくりしました)。そして、何よりも学生たちの真摯な姿勢に心打たれます。最後の日に「クロージング」があり、最後にBC(車座)になって終わりに一人一人にコメントを貰います。その終わりにファシリテーターが話すのですが、過去3回全部号泣してしまいます(笑)。

 このプログラムに関わるファシリテーターでは、僕は新人です。それでも僕は、このプログラムが日本の学生たちのために、そして日本社会だけでなく世界にとって本当に意義深いと思っています。このプログラムが今後10年20年続くときに、武者を経験した学生たちがこの社会に何をしていくのか、楽しみにしています。


 このプログラムを作ったのは、「山口和也」という男です。(私にとって呼び捨てできるような人ではなく)「和也さん」と呼んでいますが、彼が徒手空拳で立ち上げ、多くのファシリテーターや仲間達を巻き込みながら、ベトナムホイアンで年間千人近くの学生を受け入れるプログラムに成長させました(僕はそのプロセスを見ていないのですが)。一人一人の学生に真摯に向き合い、学生たちが生きるために、幸せな人生が送れるように、まさに寝食を忘れて武者修行というプログラムに打ち込んでいました。僕が印象的だったのは「どんどん俺を追い抜いてくれ、大したことないよって思えるぐらいになってくれ」っていうセリフです。若者に全力集中し、若者のためにどんなことでも全力投入している人でした。本当にこんなに一瞬一瞬を誠実に全力で生きてる人がいるんだなって、びっくりするぐらいの生き様でした。

 しかし、残念ながら昨年10月6日、47歳で逝去されました。凄い悲しかったし、何より本人が本当に残念だったでしょうし、もっともっとしたいことやりたいことがあっただろうに・・・本当に悔しいです。

 僕はお別れの会で「和也さんの分まで生きよう、和也さんの分まで人に尽くそう、和也さんの分まで社会に貢献しよう」そして、「このプログラムがずっと続くように、僕ができることはしよう」と誓いました。和也さんと比べて、非力な自分に出来ることは少ないかもしれませんが、、、

 その上で、僕が(自分も含めて)学生たちや若者たちと接する大人たちにお願いしたいことがあります。

 彼らは、「経験」がありません。しかし無いのは「経験」だけです。しかし、「僕らの経験」は彼らにとっては全く意味がないと思います。僕の時代と彼らの時代は違うのですから。

 是非、学生たちを尊重して、彼らと対等な立場で真剣に向き合ってほしいです。和也さんの言ったように、彼らには「力」があります。僕たちをはるかに上回るような「力」が。僕らから見て、未熟に見えるのは単に「経験」と「経験をする機会」が無いだけです。

 僕らは、彼らの「経験泥棒」をしていないでしょうか?彼らのためと言いながら、上段から教え過ぎて経験を奪っていないでしょうか?

 彼らへの恐れから、自分たちのルールや基準に従わせようと思っていないでしょうか?

 後に続く彼らのために、今、全力で仕事をしているでしょうか?

 後に続く彼らのために、良い会社や良い社会を作れているでしょうか?

 武者に参加し終えるたびに、彼らからこんなことを問われているような気がしています。このコラムで皆様に問いかけて、このコラムを終わろうと思います。ここまでお読み頂いて有難うございました。



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