奈良クラブによる『水増し問題』からJFLの課題を読み解く

 11月29日にTwitter上で告発が始まった奈良クラブの観客動員数水増しの件は、12月7日、奈良クラブ、そして奈良クラブが所属するJFL(日本フットボールリーグ)、さらに当該クラブにJ3ライセンスを発行したJリーグの3者それぞれが、その事実を認めたうえで公式リリースを行ったが、その内容を簡単に整理すると以下の4点となる。

・水増しの事実を正式に認めた上での経緯を説明
・クラブの今後の対応と責任者の処分
・JFL側も入場者数の適切な算出について検討する
・事実関係の確認を行った後に、Jリーグ側では最終的な処分を検討する

奈良クラブ:『ホームゲーム入場者数のカウントに関する調査報告』

以上のように公式リリースがあり、水増しの件自体が事実だったことが明らかとなり、今後は調査報告と最終的な処分の発表を待つフェーズに移行した。まあ今回のリリースに対して、正直ツッコミどころもかなりあり、『納得する/しない』といった様々な個人的感情があるのも確かであろうが、まずは公式な報告が出てくるまで待ちたいところだが、水増しの件以外にもクラブには課題が山積みであり、解決しなければいけない案件(J3ライセンス取得の際に指摘を受けた部分)などもあるので、『処分が出ました→終了です』ではなく、そこは長いスパンでクラブがどう問題と向き合うのか?も見続けたい部分でもある。

 とういうことで、ここからは『奈良クラブで何があったのか?』ではなく、なぜ今回のような水増し案件が発生してしまうのか?を考えると同時に、JFLが抱える問題点にもフォーカスしながら、同じような誤ちを起こさないためには?を考えていきたい。

■なぜ実数発表なのか?

 今回の水増し問題が浮上した中で『なんでウチだけが…』『他のクラブもやっているだろ?』と思った方も間違いなくいると思う。そして事実、地域リーグや都道府県リーグレベルでは『そうだな、今日は◯◯人としておこうか…』という場合も多々あるし、現在J3にいるクラブの5年前の話になるが、公式入場者数が場内アナウンスされた際に『どうみてもそんなにいないだろ?』と思って、試合そっちのけでスタンドの観客数を数えてみたら、どうしても公式発表数に近づかなかった…ということも実際にあった。

ということで、まず最初に『なぜ実数発表しなければいけないのか?』についてを見ていきたい。

 今現在のサッカー界では、J1からJ3を取り仕切るJリーグが実数発表を義務付けているが、その流れを受け、日本サッカー協会が管轄する天皇杯や皇后杯、その他主要大会なども実数発表となっている。また、かつては6万2千の大観衆が…と言われていた高校サッカーの決勝などでも、今は下一桁まで正しく表示する実数発表になってきているものの、JFLや地域リーグ、都道府県リーグに関しては、あくまでも公式記録の中にある「記載すべき数字の一つ」として観客数の項目があるだけで、ここでは必ずしも実数というものが求められている訳でもない(※当然、正しい数字を出す団体、協会もあります)。

 かつての話になるが、プロ野球や各種スポーツイベントでは「キリの良い数」や「まあこれぐらいの数字で発表しても大丈夫だろう」という考え方のもと、6万人とか、3万5千とかと発表されてきた歴史もあったし、私自身もJSL~Jリーグに切り替わる時代に、試合運営に関わらせてもらった経験(主に国立競技場)があり、千駄ヶ谷門、青山門、代々木門の3か所合計人数を運営担当者に報告した際に、『今日はこれぐらいでいいかね?』と、多少盛った数字をにこやかにな顔で提示された(言われた)ことは何度もあった。まあそれは、お客さんが全然入っていなかったJSL時代の話であり、牧歌的時代だったよな…というレベルの話であり、悪意があっての事でないのはご了承いただきたい。

 だがしかし、時代が平成に変わってから、その流れは一気に転換期を迎える。時代が進むにつれて、警察や消防署に届け出ている『本来の会場定数』を超えるような観客数を発表した場合、後々に監督部署から(消防法、避難誘導法の観点から)指導が来るようになったのもきっかけの一つだが、同時期に発足したJリーグの初代チェアマン・川淵三郎氏の意向が最大の契機になったと言える。

 「お客さま一人ひとりを大切にしなければ(Jリーグの)未来はない」という観点のもと、スタジアムに足を運んでくれた観客一人ひとり(の数)を公式記録に残すことが、Jリーグの歴史作って行くものである。だからこそ、その記録は正しいものではならないという考え方が方針となり、Jリーグ開幕前に行われた、1992年のナビスコカップより『実数発表』が原則化された。

 さて、Jリーグが実数を発表する根拠について見ていきたいが、現在のJリーグがリリースしている『試合実施要項』自体に『実数発表』という言葉自体は、実は明記されてはいない。だがしかし、この要綱の第3節:運営の第39条〔公式記録〕の(3)には『入場者数とは、以下の各号に該当する者の合計をいう』と記載されており、ここが重要な部分になっている。

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【2019 明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項】
第 39 条〔公式記録〕
(3) 入場者数とは、以下の各号に該当する者の合計をいう。
① 入場口から来場した観客で、以下に該当する者
イ. 入場券を保有している者
ロ. 入場券を保有していない未就学児童
② 入場口以外から来場した観客で、以下に該当する者
イ. 車いす観戦者およびその付添人
ロ. VIP席の観客
なお、入場者数には選手、審判員、Jクラブの役職員、その他試合運営に関わる者、スタジアム管理者、売店関係者、取材メディア関係者およびフォトグラファーは含めない。
(4) 入場者数は、原則として入場時にカウンター等を用いて算定するものとし、入場券の販売枚数や半券の数によって算定してはならない。
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 そして要綱からの抜粋が前後してしまうが、第1節:スタジアムの第4条〔スタジアムにおける告知等〕 の(7)に『入場者数(第 39 条第3項および第4項に基づいて算定されたもの)』と記載されており、この部分からも「実数報告が原則である」を読み取れるだろう。また、実数をしっかり発表していくことには、Jリーグ、日本サッカー自体の『信頼性』を高めていく行為の一つであるという点も、忘れてはいけないだろう。

なぜ『水増し』という選択肢を選ぶのか?

 理念、倫理的な部分や、現在の規約部分などから「実数発表」となった流れを説明したが、過去を振り返ってみると大宮アルディージャやV・ファーレン長崎でも発生しており、その際にペナルティを受けているにも関わらず、なぜ今回再び発生したのか?

なぜ?と言われれば、その理由は簡単で『目標とする観客数に届いていないから』というだけの話であり、この部分は過去の例と同じである。そしてもう一つ、今回の事例について考えた場合には『(JFLだから)バレないし、みんなやっているから』という意識があったことも間違いないだろう。

なお、過去、今回それぞれの案件において、スポンサー契約がらみの観点から見た場合『水増しは大問題』であることは間違いないし、クラブの信用を落としてしまう行為でもある。しかしだ、それ自体はクラブとスポンサー間の個別契約に関わる話であり、ここで詳しく取り扱う必要もないと思いますが、まあ普通に考えても、ダメなものはダメですよね…

■リリースに使われた言葉の違いを読む解く

 さて今回の件だが、過去と決定的に違う点もある。それは、発生源が『Jリーグのクラブではない』ということだ。いや、もう少し正確に言えば、Jクラブではないものの、JリーグからJ3ランセンスを発行されているJFLクラブであるという点である。そしてその違いこそが、JFLとJリーグがリリースしたタイトルにおける『言葉の違い』に繋がっている。

■JFL:『奈良クラブ入場者数のカウントに関するお知らせ』

■Jリーグ:『百年構想クラブ「奈良クラブ」の入場者数不正申告事案に関して』

JFL側は「カウントに関するお知らせ」であり、Jリーグは「不正申告事案」となっているが、この違いには理由があったりもする。

まずJリーグだが、Jクラブに対して『実数発表を原則とする』というルールがあるため、入場者数を改ざん発表することは、そもそも罰則対象となる。また、J3ライセンスを発行しているクラブに対しても、Jリーグ規約第3章:Jクラブ、第15条〔入会〕において、必要となる条件を課しており、当然ながらこれらの数字を改ざんすることも罰則対象となってくる。

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■Jリーグ規約
第3章:Jクラブ/第15条〔入 会〕
(3) Jリーグへの入会を希望する百年構想クラブは、以下に掲げる要件をひとつでも充足していない場合には、入会することができない。
⑤ 入会直前年度のJFLのリーグ戦におけるホームゲームの1試合平均入場者数が2,000 人を超えており、かつ、3,000 人に到達することを目指して努力していると認められること。なお、入場者数の算定は「2019 明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項」第 39 条第3項および第4項に基づいて行う
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だからこそ、Jリーグ側のリリースには『不正申告事案』とはっきりとした表記が使われた。だが、奈良クラブが所属するJFLの方では『入場者数のカウントに関するお知らせ』と、タイトルだけで判断した場合、不正なのか何なのか曖昧な表現にとどまっているが、その理由を考えると以下4点が上げられる。

・JFLでは観客動員のノルマを課してはいない
・JFL事務局では、各クラブの観客動員の実数に関して把握していない
・事務局に上がってきた数字がそのまま公式記録となる
・水増し申告していたとしても、それを罰する規則がない

 JFLでは毎年、開幕前の理事会において「目標の観客動員(観客数)はxxxx人ぐらい」という感じ程度で、事務局側が各クラブに対してヒアリングしているものの、あくまでも目安として確認しているだけの話で、その数字をノルマとすることも、シーズン終了後にその数字に到達しなくとも、ペナルティや指導を課すことは一切ない。また、JFLではチケット販売方法がJリーグとは比較にならないほど、クラブによってまばらな状態が影響し、前売り時点で事務局が「どれくらい売れているか?」を把握することは、まったく出来ていない。

 さらにクラブによっては、ファンクラブなどの会員になれば「●名まで無料で入場が可能」という形もあるため、どこまでを正規の入場者数とカウントするのか?が、曖昧でもあるため、事務局側では『本当の実数を把握するのは難しい』とも認めている。よって、JFLが最終的に「公式」と認可している入場者数は、ホームゲーム主催クラブが出してきた数字を、性善説に則ってそのまま認可しているだけなのである。また、過去のJFLにおいて、入場者数に対する個別の調査は行ったこともなく、今回のような水増し案件が発生しても、それを罰する規約自体がそもそもない状態なのである。このような背景があるからこそ、入場者数を水増し(改ざん)していたとしても、JFLでは上記のような表現のみにとどまっているのだ。

 そしてもう一つ、ネット上の意見の中で『強制退会』とか『県リーグからやり直せ』という過激な言葉もあったが、実際のところ、そのような処罰を与える規約自体が存在していないため、JFLとしては『厳重注意』程度の形での決着となるだろう。ただし、明確な数字目標設定と、実数発表を原則としているJリーグ側からは、はっきりと「不正申告事案」と認識されていること、そして信頼性を重視するJリーグからみれば、奈良クラブが行った行為は『Jリーグブランドの信頼を揺るがすこと』にも繋がってくる。その辺を踏まえてを考えれば、重い処分が下されてもおかしくはないだろう。

JFLの現況とは?

 ここからは、今回の問題の発生源である、JFLというリーグの現状についてみていきたいと思う。

 さてJFLだが、J3リーグと『基本同列である』と日本サッカー協会では、その立ち位置を説明しているが、実際にはほとんどの人がJ3の下に位置するアマチュアカテゴリーであり、実施的な『J4』と見なしているリーグでもある。競技レベルで見ていくと、今年の天皇杯でHonda FCが次々とJクラブを撃破し、鹿島アントラーズに対してもしっかりとした戦いを繰り広げたように、上位にいるクラブはJ3クラブと同等の力もあり、全体的に見ても競技レベルは年々向上していると言える。

 だがしかし、リーグの盛り上がりや観客動員という部分で見ると話は変わってくる。どのクラブも集客に苦戦している現状があるが、その分岐点になったのは2014年のJ3との分離である。J3リーグと分かれる前の2013年までは、リーグ平均の観客動員数は1322人と4ケタを超えていたが、J3と分かれた2014年以降、一度もリーグ平均観客数が1000人を超えてはおらず、今季の平均入場者数は2018年より若干持ち直したとは言っても939人という数字であり、お世辞でも盛り上がっているとは言えないし、JFL自体が『Jを目指すクラブ』の動員に依存してきたとも言える。

~過去10年のJFL平均入場者数推移~
2018年:​908人(J3参入決定クラブ:八戸)
2017年​:797人
2016年:​822人(J3参入決定クラブ:沼津)
2015年​:901人(J3参入決定クラブ:鹿児島)
2014年​:865人(J3参入決定クラブ:山口)
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2013年:​1322人(J2参入決定クラブ:讃岐/J3へ転出したクラブ:秋田、福島、長野、金沢、相模原、町田、YSCC、藤枝、琉球)
2012年:​1240人(J2参入決定クラブ:長崎/JFL降格クラブ:町田)
2011年:​1682人(J2参入決定クラブ:町田、松本)
2010年:​1474人(J2参入決定クラブ:鳥取)
2009年:​1189人(J2参入決定クラブ:北九州)

 J3がない時代は、まだかろうじて良かったものの、J3と分かれたことにより、JFLにJリーグライセンスを保有するクラブが激減してしまったことにより、リーグ全体の『動員力』が落ち込んでしまったが、そうなるとライセンスを保有しているクラブは、1試合2000人、もしくは年間3万人超えを実現するために苦労していくこととなる。さらに、2000人を試合会場に集める場合には、それ相応のマンパワーとかかる経費も必要となってくる。

 ただでさえ観客動員で苦戦している状況の中で、『どうやれば平均2000人をクリアできるのか?』を考えながら、試合運営もJの基準に沿ってやっていかないとライセンスは維持していけない。一定数の観客を集めなければマズいし、かかる経費も集めなければいけない。だがしかし、入場料収入がクラブ経営における主たる収入とならない現実もある。福利厚生の名のもとに、親会社の資金をベースに運営していくことができるHonda FC(本田技研)、ソニー仙台、ホンダロックと言った企業サッカー部とは異なるクラブチームたちは、どうしてもスポンサー企業からの支援に頼らざるを得ない状況にある。(※大学生チームである流経大ドラゴンズに関してだが、運営費の2/3は学校からで、残り1/3がスポンサー企業からの支援で賄っていると中野総監督がコメントしてくれている)

 さらにJ3ライセンス取得のためには、まず100年構想クラブ入りすることが必要であり、JFLの年会費である1000万円の他に、年間120万円も別途必要となる。また、上記にも書いたが、試合運営にかかる費用、スタッフ人件費などは他クラブより嵩むこととなってくる。そうなれば、より複数の企業や団体とのスポンサー契約や、より高額な契約も必要になってくるもの。そんな背景があるからこそ、『わがクラブはJリーグライセンスを保持しており、Jの理念に基づき、地域のために活動しております』や、『毎試合2000人(もしくは年間3万人)を集める力がありますので、広告価値としても…』という感じでの話になってくるだろう(奈良がこのケースかはわかりませんが、ザスパの場合はこんな感じでした)。このような流れを経て、スポンサーとの契約額をいくらにするか?を決めていくのだが、その手の約束や契約事項もあるからこそ、観客動員数がその数字に達しないことが予測された場合に『あの数字』での発表に繋がっていく。

 奈良クラブの肩を持つ訳ではないが、現状のJFLで毎試合2000人を集めるのは、かなり至難の技と言っても差し支えないだろう。それぐらい、人気や知名度の低いリーグであるし、『狭き門』と知られる地域チャンピオンズリーグを勝ち抜いた先が、こんなリーグなのか…と非公式な場で愚痴をこぼす運営担当者も少なくはないし、FC今治の岡田武史代表も『このリーグに何年もいたら、クラブの体力が疲弊してしまうので、そりゃ1年でも早く上(J3)に行きたいですよ』と、過去にコメントしてくれたが、実際の話、JFLで『ウチは盛り上がってますし、儲かっています』というクラブは、残念ながらほぼ皆無といえる状況でもある。

■事務局に期待したいこと

 さてここで、もう一度JFLから出たリリースを見ていきたい。

『奈良クラブ入場者数のカウントに関するお知らせ』

非常に短い文章だが、その中でJFLとして再発防止に努めると同時に『入場者数の適切な算出について検討していく』とコメントを出している。

 ただ、上記でも書いたとおり、JFL自体は「観客動員のノルマ」は課しておらず、結果的に数字は性善説に基づいて処理しているが、そんな現状がある中でどのような算出方法を採用していくのは気になるところでもあるが、そもそも論で「適切な算出」についてを検討することが、いまのJFLにとって本当に優先度を高めてやるべきことなのだろうか?

 確かに、『カウント数において、リーグ共通の方式を考えました、どのクラブも正しい数字を出しております』とやるのも、リーグの信頼性回復には大事なことかも知れないが、それで根本的な部分を改善できるのか? 今のJFLが早急に対応すべきことは、正しいカウントの取り方を考えるのではなく、リーグに『どうすれば人が集まるか?』を考えることでは?と思うのだが。集計、算出方法に透明性を持たせたところで、観客動員が増える訳ではなく、事の根っこは『稼げないけど経費はとてつもなくかかるこのリーグを、どうやり抜くのか?』にあるのだから。

 しかし、JFLの事務局は、臨時雇用の人を含めても、平時の基本は3人体制であり、マンパワー不足は否めない。また理事会を月に数回も開催できる訳でもなく、これまでの路線の踏襲が前提条件にもなっており、ドラスティックな改革案が出てくる期待感も薄いと言える。だからこその『適切な算出』なのだろうが、時間は掛かってもいいので、なんらかの打開策を打ち出せなければ、JFL/J3の入れ替えが始まった時に、立ち行かなるクラブが出てきてもおかしくないだろう。いや、本来であれば、J3と分かれた2014年シーズンから何らかの改革に乗り出すべきであったが、J3設立のために動いていた将来構想員会でそれが本決定となったがその直前であり、JFL側としてはリーグを改革する以前に、J3に行くクラブ分の数の穴埋めをどうするか?の対応で精いっぱいでもあった。

 そしてかろうじての改革案として提案された、2ステージ制の導入、チャンピオンシップ開催、JFL選抜による海外遠征を組むという、3つの案は正式な形となって世に出たが、一番重視しなくてはいけなかった、リーグ全体での具体的な集客案の提示、リーグブランドを高めること、新規リーグスポンサーの獲得といった部分では、何もできずじまいとなってしまい、時間だけが過ぎていくこととなってしまった。当初から、『いつかはJFLとJ3の入れ替えが始まるのだから、JFL側でも降格してきたクラブが安心して運営できるようなリーグ状態にしておきたい』と、6年前の取材時に加藤JFL専務理事は話していたが、今現在、その状況にはなっていないし、なっていないからこそ、今回の奈良クラブのような事例が出てくる背景にも繋がってしまっている。

 当然ながら、現状がどうであろうと『不正に走った』奈良クラブ幹部が一番悪いのだが、今のままのようなリーグ状況が続いていけば、奈良クラブと同じ過ちを起こしてしまうクラブが出てきてしまってもおかしくはない。そしてあと3年か4年後には、実際にJFLとJ3の入れ替えが始まっていく可能性もあるが、リーグを改革するには『3年ぐらいの時間(スパン)は必要』ともJFL事務局も、社会人連盟の牛久保会長も以前からコメントしているが、『その先』がもう見え始めているのであるからこそ、いま始めていかないと本当に手遅れとなるクラブが出てくるかもしれない。

■第二の奈良クラブを出さないために

そのためにも、今回の問題が表面化したことを契機に、早急なリーグ改革に取り組んでいってほしいと願う限りである。また、Jリーグ側に対しても、今回の件が『所属リーグ(JFL)の監督不届き』で終わらすのではなく、ライセンスを発行している側の責任として、もう少しチェック体制の強化をすべきであると考える。今回の水増しは、今シーズンだけの話ではなく、数年間行われてきたが、その裏を返せば、誰も最終的に提出された数字に口をはさむことが特になかったからこそ、継続的に行われてしまった…ということを深く受け止め、Jリーグ側でもチェック体制の再確認をしてほしいところでもある。

冒頭にも書いた通り、今回の件の最終的な報告をまず待ちたいところなので、これ以上話を蒸し返したりはしないが、問題の根っこは『JFLという人が集まらないリーグをどう改善していくのか?』にもあると思う。また、この手の話をすれば「そんな大きなことはできない」と言われる(思われる)ことは多分にあるだろうが、自分が関わるクラブのスタッフに『こんな取り組みをしてみては?』と提案するだけでもいいのです。第二の奈良クラブを出さないためにも、JFLを少しでも活気づかせるための活動の輪が広がることを期待したいところである。

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