『結束バンド』から聴く山田の音楽オタクっぷり

[追記]この記事はぼざろアニメ一周目見てアルバム結束バンドを丸呑みしたオタクがその勢いのまま書いた記事なので鮮度の高いオタク臭がします. あらかじめご了承ください.

概要

音楽が好きなオタクです森栖檸檬と申します. ぼっち・ざ・ろっく! よかったですね!!!! アニメオタクではないので, アニメ9話頃くらいかな? なんか最近話題やな〜, ロックって名前にあるし観てみるかくらいの軽い気持ちでようやくアニメ第1話見て, あ…これは好きなやつと直感して, 速攻書店をハシゴしてなんとか5巻買い揃えました. 買ってよかった. 普段はアニメより漫画派なんですがOPもEDも曲がよかったのでアニメも観続けていたら, いつの間にか手元にアルバム『結束バンド』がありました. 沼. 本当はここで原作やアニメの感想をつらつらつらつらと書きたいところなのですが本筋ではないので割愛します. それにしても12話よかったですね〜! まるで最終話のような圧倒的クオリティだった. 来週はいよいよ14歳()の登場かな? 楽しみだなー().

さて本題ですが, まず何をもって「音楽オタク」と定義するかという問題が生じますがめんどくせえのでここでは「(歌詞や動画やその他の体験に付随するものとしてではなく)音楽単体を好き好んで聴く人」というような感じにしときます. もちろん音楽と音楽以外の表現による相乗効果というのは非常に強力で重要なので, 音楽オタクがそこをおろそかにしているというわけではありませんよ. 次に山田は音楽オタクなのかという問題ですが, まあサウジアラビアのヒットチャート追いかけてるような人間はオタクでいいじゃろ. 「音を聴け音を」という台詞は山田の音楽オタクっぷりを端的に表したものとも言えそうです. ところで一般にオタクには自分が好きなものを布教したがる習性があり, そんなオタクが作る曲には当然そのオタクの趣味嗜好が色濃く反映される可能性が高いのです. 音楽オタクは音楽オタクが好きそうな曲を作るはずだということですね. 音楽オタクが好きな要素はたくさんあるとは思われますが, ここでは記事の書きやすさの都合もあり「転調が好き」「リハモが好き」という2点に絞って進めたいと思います. この2つは別になくても楽曲として成立させられるわけですからね. そういう必要以上のこだわりを音楽オタクは好むのだ!(と思う, 少なくとも私は好きです.)

転調が何かというのはまあ大体わかると思うので適当に書きますが, 転調とはメロディの中心音と, 構成音の集合が変わることを指します(ガチで適当なのであんまり信用しないでください). 詳しいことは各自おググりなさるかSoundQuestでも拝見してください. 後述しますが今回は全ての調をメジャーとみなすので, 平行調への転調は存在しません.

リハモとはリハーモナイゼーション(Reharmonization)の略で, 同じメロディに対してつけるコードを変えるような技法のことになります. 詳しいことは各自おググりなさるかSoundQuestでも拝見してください.

曲の調はすべてメジャーとみなします. また調は基本的にメロディで判断します. 文中に現れるコードネームは作曲時のお気持ちを推測して表記したものになるので実際になっている音を全て反映しているとは限りません. リハモ判定はかなり緩めにしていますのでご了承ください?
では必要な準備が終わったので各曲の進行について見ていきます. 
あ!!!! その前に!!!! まだぼざろ観てない人がいたら今すぐなんとかして観ろよ!!!! オタクとの約束だぞ!!!! BD発売中らしいぞ!!!! あとアルバムも買おうね!!!! CDの歌詞カードに粋な演出あったよ!!!! 原作も面白いぜ!!!!(自分の好きなものを布教しようとするオタクの図)

青春コンプレックス

いきなり全力で音楽オタク発揮してきますね. まず転調なんですが, いわゆるラスサビ転調を2回!!2回もかましてきます. 転調自体は半音上行(F→F#→G)という多分一番シンプルなやつで, 一曲で2回ラスサビ転調するというのも例がない訳ではないんですが(パッと思いついたのだとMr.Childrenの終わりなき旅とかスキマスイッチのアイスクリームシンドロームとか東京事変の新しい文明開化とか), 力強くなっていく歌詞の変化を強調するものとしてこれ以上ない演出なんですよね. どっかのコメント欄でぼっちの2段階進化って書かれてて笑った.
リハモについてもガッチガチで, まず1サビとラスサビ後(G)では4-3-6系であるのに対して2サビとラスサビ(F#)では4-5-3-6系で, この最初の進行が最後になって戻ってくるという構図が非常にオタク心をくすぐりますよね. あとは同じようなメロディを繰り返すAメロについても, BbM7→Aaug→Dm9→Dm7→C/E→F的な進行の部分と後半をなくしてBbM7→Aaug7→Dm7の繰り返しにしている部分があるというのもリハモの範疇に含めていいかなと思っています. あとは"だけど触れるのは怖かった"のところも変化してますよね. それにしてもAメロの喜多ちゃんパートのボイシングはちょっとこだわりがすぎる気がする.

ひとりぼっち東京

ギターソロからラスサビ入りまで転調(C→Eb)していますね. 同主調なのでそんなに突飛でもないけどG(orBdim)とかDbとか混ぜてきやがるから混乱する. Bb→Gをうまく使ってスムーズに元の調に戻っている点に注目ですね.
リハモの観点だとAメロでほとんど同じメロディに6-4-1-5-4-5と4-5-6-3-4-5という二通りの進行を振り分ける采配が見られます.

Distortion!!

サビで半音3つ下に転調(A→F#). 1番の転調めちゃくちゃ綺麗ですね. サビ前のC#というAメジャーにとってのIII(のパラレルメジャー), F#メジャーにとってのVであるピボットコードに加えて, サビ前後のメロディの音がソのシャープ(Aメジャーにとっての第7音, F#メジャーにとっての第2音)で共通しているのでもうぬるっと転調しちゃうわけです. 戻りはF#→F→Eという半音の下行でパワー!って感じでサラッと. 2サビの再転調が多少強引になるのはご愛嬌. 調性は便宜上Aとしたけど, パワーコードみが強くてレにシャープがついてるか曖昧で, コード進行からEミクソリディアンのように感じられるのも特徴的かな.
リハモの範疇に含めるかは微妙だけどAメロの進行がE→B→A→BとE→B→B#dim→C#m→B→A→Bのように段階的になっているのはまあオタクの心配りでしょう. サビで特徴的なI→IIm→IIIm→IVという上行を繰り返した後で, 最後は逆にIV→IIIm→IIm→Iという下行をしているのが面白いですね.

ひみつ基地

転調はしてない(E)… と思うけど途中ラスサビ入る前のギターソロ前, "宝物だ"の直後は同主調への一時的な転調とは言えるのかも? リハモもそれらしいのはないけれどサビ1回目はE→D#φ→G#7→C#m→B→A#φ→A→Bで2回目はE→B→B#o→C#m→B→A→Bとなっているところ(さらにバンドスコアによると冒頭と落ちサビのG#7はG#aug7になっているらしい)や, 1,2サビ前はG#7なのに対してラスサビ前はC→Dになっているところや, サビの終わりがそれまでC#m→B→A#φだったのがラスサビのラスト"目が覚めても"ではC#m→B→F#mになっているところにオタクのこだわりを感じます.

ギターと孤独と蒼い惑星

典型的なラスサビ半音上行(A→Bb). ほとんどの楽器を休みにして転調をメロディだけで実現していますが, それによりハイライトされる歌詞"聞いて" "聴けよ"と相まってもうオタクは爆発四散するわけですよ.
リハモとは言わないけどBメロ前半はD→C#→F#m→Aで後半はD→E→F#m→Aになっているのが味変として割と効いてる気がする. これもリハモとは呼ばないけど一つのサビの中でD→E→F#m→AとD→C#→F#m→AとD→E→C#m→C#→F#mとバリエーション豊かな進行を見せているのも流石だなぁという感じですね.

ラブソングが歌えない

転調なし(C). サビのメロディがシソシソシソを繰り返す中でコードはF→CとG→E7/G#→Amとで変化をつけた上で交互に繰り返してますね.

あのバンド

転調なし(F). リハモも特になさそう? 強いて言うなら2サビ前だけ展開の都合上コードが休みではなくAで鳴っているくらいかな. まあこういう曲は変に凝ったことするもんじゃないと思ったのかもね.

カラカラ

変拍子はSICK-HACKのライブにインスパイアされた説があるらしい. 転調はない(E). リハモは, ベースが動き回ってるのでアレですがサビの前半ではA→B/A→だったのが後半ではA→B→になっていてちゃんと前に踏み出せているのが感じられます. 同じようなメロディの中でもA→G#m→F#m→C#m(4-3-2-6)とA→G#m→F#m→E(4-3-2-1)とを使い分けているのもポイントですね. 4-3-2-1が来るのは必ず4-3-2-6の後になっていて, E→Aの推進力と合わさってやはり前に踏み出す気持ちを感じます. さらにサビ直前では4-3-2-5-1でダメ押し. F#m→B→Eの強進行の勢いを利用します. 痺れる… ちなみにこの曲が一番好きです. ちなみにちなみに結束バンドの中で山田が一番好きです. 推せる…

小さな海

転調なし(C). リハモではないけど同じようなメロディを繰り返すサビの前半がCから, 後半がAmから始まっていると言う変化がありますね.

なにが悪い

サビで全音上に転調(C→D)してますね. 転調に至るプロセスに限らずコード進行が非常にポップで素晴らしいです. "何色なんだろう"でDを鳴らしたんだからそのまま行けばいいのに一旦Bbに行ってAに進むのすこすこ. サビ前後の同じDでも響きが違うという機能和声のお手本のような進行. 冒頭のフレーズを用いての戻りもすこです. ラスサビ前でまたしても冒頭の進行を用いつつ転調していてすこすこすこ.
落ちサビがD→F#→Bm→D7からD→C#φ→F#→Bm→CM7になってますね. 特に"君と喧嘩したこと"のCM7がエモエモですね. 全くもってリハモではないんですけどBメロのギターのフレーズが1,2番で若干変化しているのがすこすこすこすこです.

忘れてやらない

ギターバカムズ曲. 転調はない(E)けどギターソロのところで一瞬下属調に立ち寄っている. リハモもなさそうだけど, サビの前と後が同じ展開なのは楽曲構造としてかなりレアな気がするので指摘しておきます.

星座になれたら

文化祭にとんでもない曲を持ってきたな… 転調はないです(Ab). リハモについては細かいところですが, 通常のサビがDb→Eb→Cm→Fm→Fbm→Ebm→Ab→となるのに対して落ちサビではDb→Eb→Cm→Fm→と一部を省略しています. 後の盛り上げのために動きを控えめにしてタメているということですね. こういった細かい仕事がプロいな…

フラッシュバッカー

転調はない(E). A→B→G#m→G#→(C#m→Bm→E)を基本とするサビが, ラスサビの最後のフレーズでA#φ→A→G#m→G#→になっているのはもはや卑怯だろ. 該当する歌詞は"君の言葉をぎゅっと離さない 離さない", 音楽の面でも変化をハイライトしているわけです. 最高かよ. 全然転調ではないですが最後のC→D→Eから力強さを感じられて良い借用ですな〜とは思いました.

転がる岩、君に朝が降るについてはカバーなのでまあ省略します. ちなみにギターソロのところで転調しかけてます.

まとめ

山田… お前が人間国宝だ!
なんていうか"ガチ"ですよね. VIIbM7への偏愛を感じるくらいで, 全体的にお前本当にjkか? っていうような幅広いテクニックが見受けられます. 決めどころで挟まるパラレルマイナーや裏コードやパッシングディミニッシュ, 随所でのユニゾンや掛け合いなどの楽器隊の絡み合い方などここで扱わなかった要素にも音楽オタクを感じさせるものが多々聴こえます. 本当はここでアルバムの感想をつらつらつらつらつらつらと書きたいところなのですが本筋ではないので割愛します.

多分まだ見つけられていないオタクっぷりなどもあると思うので見つけ次第追記します. 皆様も是非オタクになってこの作品の魅力を発見・発表してください.

最後に素晴らしい原作漫画と素晴らしいアニメと素晴らしい楽曲の制作に携わった全ての方々への感謝の気持ちを述べて終わりとします. 傑作をありがとうございます!!!! 今後も楽しみにしています!


追記: ニューシングル「光の中へ」が発売されるそうですが, そちらのオタクっぷりの観測は結束バンドの2ndアルバム「結束バンド2」に収録されてからにしようと思います.

更新履歴
2022/12/28 公開
2023/2/2 一部微修正
2023/2/22 一挙放送を観て気づいた点を追記
2023/4/26 「光の中へ」の件を追記 ほか一部微修正
2023/7/18 Distortion!!となにが悪いを微修正
2023/8/23 読みやすさのため全体を微修正
2023/8/26 6/20に発売されていたらしいバンドスコアをようやく入手したので一通り目を通し修正. 記事と大きくずれている箇所はほとんど見られなかったのでよかったです.

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