たくさんの思い出

もうどれだけ前になるだろうか。
僕がまだ二十代だった頃の話だ。
小学校以来の友人に誘われ、ライブイベントの為に渋谷に来ていた。

その友人は僕にエレクトロニカの良さを教えてくれたヤツで、
いま考えると、大恩人だ。

そのイベントの開場待ちをしている最中に、友人が声を掛けられた。


「おー、今日も来たの!?」


会場入りする演者さんだ。
友人はかねてよりの顔見知りらしく、親しげに会話している。


「コイツ、一緒に来た友達です。」


と、友人が紹介してくれた。


「おー、どんな音楽聴いてるの?」


僕は、テクノならSquarepusherですかね、と答えておいた。
相手はテクノのヒトだから、コレが正解だろう。
模範解答と言っても過言ではない。


「他にはどんなのが好き?」


僕は迷わずDreamTheaterと答えた。
こう言う相手、僕の興味に踏み込んでくる相手には、コレが効くのだ。
大抵のヒトは、DreamTheaterを知らない。
HR/HM好きな場合は知っている事も有るが、まず共感は得られない。
僕はちょっと、いや、かなり偏ってるんですよ、貴方とはワカリ合えないんですよ、
という宣言みたいなモノだ。
しかし帰ってきたのは意外な答えだった。


「おーイイね! 誰が好き?」


妙に食い下がるな、このヒト。
更に迷わずに、Mike Portnoy(以下マイキー)と答えた。
DreamTheaterのドラマー・コーラス担当だ。

マイキーは2010年頃にDreamTheaterをクビになったが、
当時はバリバリの中心メンバーだ。
バンドの創設メンバーだし、DreamTheaterのバンド名は彼の父のアイディアだし、
ライブの時のライティング演出やスクリーン演出なんかは彼が担当していたし、
ビデオやDVD等は彼が演出というか監修していた。
こういう部分もそうだし、演奏自体もそうだし、
ハッキリ言って出しゃばりな奴だから、好みがハッキリと分かれる。
「はは・・・そうなんだ。」みたいな返事が予想された。


「マジで!?俺も好きだよ!」


何たる予想外。
マジで!? はコッチのセリフだよ!
あンたテクノのヒトだろ!
その後暫く喋らせて貰ったが、会話の中で


「シンバル回すよね!」
「左手でアタマ叩くよね!」
「スティック回し頻繁だよね!」


等と仰ったので、こりゃ本物だ、と驚いた。

シンバルを回すのは、彼のドラムセットの上段の左パートの3枚のシンバルの一番右、
Sabianの18インチのHHX Studio Crashを左手でチョークした後に、そのまま右に腕を振る。
クルクルと左回転させるのだ。
チョーク後だから別に音は出てないので、音楽的意味は無い。

アタマを叩くのは、本当に左手が空いて叩くトコが無い時に、左即頭部を掌打する事を指す。
バスドラに合わせる時も有るし、
わざわざ右手でスネアを叩いて左手でアタマを叩く時も有る。
当然音は出ないので、音楽的意味は無い。

スティック回しも左手がヒマな時にやる。
コネティカットのライブだったか、Pull me under の時に
普通に叩きながらコーラスしながら左手はスティック回してた事も有った。
無論音は出ないので、音楽的意味は無い。

そんなこんなで他にも、特にライブでの仕草について語り合った。

ガチでマイキーが好きな様だ。
これは本当に嬉しかった。
DreamTheaterの時点で賛同者が減り、マイキーの時点で賛同者が激減するのが常なのに、
彼、もしくはバンドの余程のファンじゃなきゃ言えない様な話をしたのだ。

確か bounce 1th Anniversary とか誤植があったかな?
イベントの記憶は、この程度だ。
しかし彼との会話は僕の心に残っている。

いま現在でも、ここまでのファン/理解者にリアルでは出会った事が無い。



コレが有名なミュージシャン TaQ さんとの
最初で最後の会話の思い出である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?