見出し画像

自己体験から2018年の日本の仮想通貨業界を振り返る

年始に入り各メディアでは専門家が昨年の業界動向を振り返る記事が増えてきた。恐縮ではあるが、この場を借りて私なりに日本の業界動向を振り返りたい。私は昨年半年を欧州で過ごした。その経験を踏まえて以下を述べる。

欧州に発つ前の日本では、国内取引所のハッキング騒動が相次ぎ、国全体として業界に対する関心が下火となっていた。投機目的の個人が市場から離れ、そこには仮想通貨の革新性を信じる者だけが残った。企業についても一部参入を表明していた企業が撤退する事態となり、多くが新規参入に踏み切れない状況となった。その中、政府はハッキング騒動を受けて国内取引所への立ち入り調査を開始し、同時に研究会を発足させて国内の適切なルール作りを模索し始めた。業界全体として完全な膠着状態に陥ったわけだが、この頃の日本には目立った業界コミュニティは無く、アーリーアダプターたちも撤退者を小馬鹿にするように業界を俯瞰するだけで、この状況がすぐに改善に向かうとは到底考えられなかった。

このような国内の流れに危機感を覚え欧州に向かうと、日本と海外との違いが明確に感じられた。そこには、ビットコインの価格変動に一喜一憂することなく、業界の発展だけを考えて開発や啓蒙活動に励むコミュニティがいくつも存在していたのである。業界内のプレイヤー同士が何かテーマに沿って議論する場が用意されているだけでなく、外のプレイヤーを巻き込んで話をする機会にも溢れていた。ブロックチェーンは経済圏すなわちコミュニティを創り出す技術であるとも言われる中で、海外ではまさにその性質を体現しているかに思われた。政府についても、多くの国が日本とは違い業界関係者と一方向ではなく双方向の関係性を築いており、国として仮想通貨を無下に扱うことなく国益に繋げようという姿勢が見られた。

欧州における業界風土を体験した上で、国同士の文化的背景を除いた一次的な部分に焦点を置くならば、日本と海外との大きな違いは業界を支える「コミュニティの有無」にあると考えられた。しかし、大手企業による国内取引所との資本提携や巨大ITベンチャーによる業界参入、そしてHashhabやNeutrinoといったコワーキングスペースの創設等によって、昨年後半にかけては日本でも業界内で多くのコミュニティが形成されている。海外を中心としていた業界カンファレンスも昨年は日本で何度か開催され、ようやく海外に足並みを揃えつつあると言えるだろう。政府でも、昨年10月に日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を正式に自主規制団体として認定し、今後は国内ルール作りに向けた業界関係者との双方向的な議論の展開が期待される。

以上、昨年に起きた日本の仮想通貨業界における最大の変化は何かと問われれば、業界に携わる個人、企業、政府が真剣に業界について議論する土台が作られたことであると私は答える。今年はより一層国内のコミュニティの活動が活発化し、業界に無関心な人に対しても様々な発信がされていくだろう。そこで特に注目したいのは、規制が資金決済法から金商法をベースとしたものに変わるのか、そして各々のコミュニティが持続性を担保できるかどうかである。いずれにしても、日本の仮想通貨業界は他国と同様に価格変動の裏では着々と進歩している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?