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ICO基準を定めることの必要性

あなたを解雇します。突然のリストラ宣告。私はこのような場面をドラマや映画でしか見たことがないのだが、実際にリストラを経験した人の心情を思いやると心が痛くなる。これだけ会社に尽くしたのに、なんで私が。解雇理由が労働者個人に起因するものであれば仕方がないと思えるかもしれないが、会社都合の場合には誰もが最初は納得がいかないだろう。仮想通貨業界では後者による従業員の解雇が相次いでいる。BTC価格の下落により会社の資産価値や収益性が低下したことで、大手マイニング会社Bitmainや技術開発企業Consensys、ICOプロジェクトSteemit等多くの会社が経営体制の見直しを迫られているのだ。

BTC価格の下落が本源的な解雇理由であるとするならば、それは果たして妥当と言えるのだろうか。仮想通貨業界は分散化を理想に掲げながらも実際はBTCの中央集権的な世界となっている。マクロで見た時には現実世界の方が遥かに分散的と思える程にBTCが業界全体に与える影響は大きい。実体のない共同幻想に人が踊らされているという意味では資本主義的であり、その中でBTCの価格変動をビジネスにおける外部要因と捉えれば、今回の一連の従業員解雇の流れは妥当と言えるのかもしれない。もちろん、リストラ宣告された当人たちは不満を抱くだろうが。

BTC価格の下落が会社にとっての不可抗力であるとした上で考えさせられるのは、IPO審査のような企業体力を測る意味でのICO審査というものが、やはりある程度の基準で必要なのではないかということである。従来の株式会社は株価に応じて資産価値が上下するが、少しの変動では影響が出ない程に企業体力が確保されている。その点、ICOはベンチャー的な体力で事業を進めていく為、少し強い風が吹いただけで経営が傾いてしまう。リスク資産(トークン)と安全資産の保有割合をどうするかという話もあるが、ICOを行うボーダーを設定しないことには今後もBTC下落局面で倒産あるいはリストラに遭う数は減らず、根本的な問題解決には向かわないだろう。

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