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遺伝子レベルに規定された人間の行動特性は仮想通貨の世界でも変わらない

人類の歴史を振り返ると、人間という生き物は、先祖代々の遺伝子を引き継ぎ、今もなお”猿”という生き物に変わりないことがわかる。私たち人間は自分たちより強い生き物に勝つため群れをなして行動してきた。その群れの中では、どの雄も長を目指し、どの雌も長の子を産むことを目指した。別の群れが現れれば、自分たちの群れを守ろうと必死で戦った。群れの生活環境が厳しくなると、新しく良好な住処を求めて群れで大移動した。群れごとに話す言葉や風習も違ったが、群れ同士が合わさることで次第にその数も減った。

 このような行動は、遺伝子レベルで私たちに植えつけられているものである。個人で言えば、学校内競争、大学受験、就職活動、企業内の出世争い等。企業で言えば、市場シェア競争、海外展開、企業合併等。国で言えば、軍事戦争、経済戦争、国家連合等。これら全ての根底にあるのは、”猿”という生き物としての群れを作る習性と、群れのトップを目指す習性、そして何より生存本能である。原始時代に比べれば、現代はテクノロジーも発展し全くの別世界と思われるかもしれないが、生き物としての本質的な行動特性は何万年も前から変わっていないのである。

 それでは、仮想通貨・ブロックチェーンの世界ではどうか。物理的には当然、自身が生き残る為の人の移動や、企業そして国同士の争いが起きている。しかし、ここで注目すべきは目には見えないヴァーチャルな動きの方だ。そこでは、トークンという不可視だが価値あるものを介して群れが出来上がる。群れの強弱を決めるのは、開発面もあるが、それ以上に流通量や時価総額といったトークンの価値そのものに依るところが大きいだろう。つまり、その群れの人間は他の群れに負けないよう啓蒙活動に励む。その方向性を巡り群れが分裂することもあるが、実質的には個人として独立しており、特定の群れに限定されない為、群れの状況が悪化すればすぐに他の群れに移ることができる。

 このように見ると、仮想通貨・ブロックチェーンの世界では群れの流動性が現実に比べて高いことがわかる。ヴァーチャルな世界である為これは当然のことなのだが、価値を介在している点で、これまでのインターネットの世界とは大きく性質が異なると言える。単に個人が何かのイデオロギーに共感して集まるだけではなく、それぞれが生存本能に従って行動するという意味では、この世界は紛れもなく私たち人間が生きる”現実世界”の一つと言えるのかもしれない。

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