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小さなお客さん

私はスーパーで短時間働いており、
レジ係です。

ある暇な日、背中におんぶされている10ヶ月くらいの赤ちゃんと、バシッと目が合いました。
あちらは今の言葉で言うところの「ガン見」です。
あんまりこっちを見ているので、マスクじゃ笑ってもダメだろうと思い、ブンブン手を振ってみました。
すると、さらに目を見開いてこちらを見ています。
なんだか恥ずかしくなり、ついに目を逸らしたところ、赤ちゃんはカートを押すお母さんの移動とともに見えなくなりました。

15分くらいして、お客さんのカゴの商品をピッピッと読み取り、「◯番の精算機でお願いします。」と案内したところで、目の端に何かが慌ただしく動く気配を感じました。
顔をそちらに向けると背中におんぶされている赤ちゃんが、思いっきり無言でブンブンと手を振っています。
私しかいなかったので、「あーら、嬉しい!手を振ってくれてるのね」と声をかけてから、「あ!さっきジーッと見ていた赤ちゃんだ!」と5秒後くらいに思い出しました。
すると、赤ちゃんは相変わらずニコリともせずに手を振り続け、お母さんの方が「もう、すいませーん」と恐縮しています。

赤ちゃんの、「おお!さっき、いたな!」のブンブンなのだな、と思うと
AとBとが脳みその中でパシっと繋がった様子が目に見えた気がして、私は何やら尊さと愛しさにマスクの中で口を緩めていました。

赤ちゃんは手をブンブンして、こっちを見たままエスカレーターを下って行きました。

「さっきいたねー」「そうだよー」
という、ただそれだけの幸せです。

またのお越しをお待ちしています。

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