世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業を読んでみた

本書は、インドの東部「チェンナイ」という街にある、世界的企業の経営者や、トップアスリート、ハリウッドスターが集まる「心を学ぶ」ための学校「ワンワールドアカデミー」の教えをまとめた一冊です。

ワンワールドアカデミーの指導者である「ナミ・バーデン」と「河合克仁」の二人によって執筆されています。

なぜ、ワンワールドアカデミーには世界中の一流の人々が集まるのか、それはその場で開催される「心の授業」に秘密があります。どんな優秀な人でも、上位層でも、人間であれば「心が苦悩」する状態は必ずあります。

しかし、心の授業を受けると、それまで悩んでいた心の苦悩が嘘のように、思考がクリアになり、憑き物が落ちたように心が綺麗に晴れるというのです。

本書では「4つのステップ」に渡って、ワンワールドアカデミーの心の授業の本質について解説しています。この4つを実践することによって、人間関係はもちろん、トラブルの対処、仕事へのモチベーションなど、あらゆる場面で活用できるというのです。

一種の瞑想に近い考え方になるので、心の苦悩を感じた人にはおすすめの一冊です。

■書籍の紹介

世界中の億万長者がたどりつく心の授業
Nami Barden・河合 克仁 著

心が快適な状態でなければ、真の満足度を高めることはできない

本書では、どんなに完璧だと思われる人でも、心の内側では「もっとこうありたい」「自分の人生は本当にこれでいいのか?」という願望や葛藤を抱えていると記されています。たとえ、大手企業の経営者でも、芸能人でも自分の現状に不安や悩みがない人などいません。

「勉強もスポーツもできて、明るくて、ユーモアあふれる素晴らしい人を演じなければならない」「どんな時も素敵な人でいなければならない」どこか同調圧力的な思考があり、本来の自分とのギャップに苦しんでいます。

また、それ以外にも、年に1回か2回しか取得しない有給休暇で、海外旅行や温泉旅行に行くために日々の仕事を頑張っている人がいるとします。念願の休暇中、何を考えるかといえば「自分の部下」「返信できないメール」など、仕事が頭から離れず、苦悩する人もいます。

子供がいる人であれば、家族との旅行中、100%子供に集中して遊んでいない自分に対して、苦悩する人も多いのではないでしょうか。でも、実際には仕事で結果が出したからこそ、家族との旅行を楽しめているわけですから、苦悩を感じる必要はないはずなのです。

本書では、本質的により良い仕事・人生を追及していくためには、そんな心の葛藤を認め、自分自身を知り、克服していく必要があると伝えています。

あらゆる苦悩を解消する「4つのステップ」

ではどうすれば、苦悩をを克服できるのかいうと、心を整える「4つのステップ」を実施すれば、心の悩みは解決されていきます。そのステップとは以下となります。

①気づく:自分が苦悩の状態であると気づく
②観察する:深層意識にある心の声にしっかりと耳を傾ける
③苦悩の正体を知る:悩みの本体の正体を特定する
④正しい行動をする:美しい心の状態で、正しい行動を選択していく

なぜ、この4つのステップで解消するかというと、それは「心の葛藤の正体」がわかっていないからこそ、人はどうすれば自分の心が満たされるのかわからないという原理からです。

自分の時間や家族、健康を犠牲にしてまで、結果にこだわる必要は、本来ありません。夢がなくても、結婚をしなくても、子供がいなくてもいい。収入も本来は比較するべきではありません。ですが、人は比べてしまう。

その状態は「苦悩状態」に入っている証であり、将来や過去のことに意識が飛びやすく、ネガティブな感情がわきやすくなっています。

苦悩の状態が続くと、自分の望みややりたいこともみえず、どんな行動を起こしてよいかもわかりません。そんな状態を4つのステップを実施することで、「心を美しく平和な状態」に戻すことができます。

4つのステップで改善できる葛藤の例

4つのステップを実施することで解消できるのは以下のような状態です。

①仕事に追われていて、常にあれこれ悩みながら過ごしている
②将来のことを考えると不安でたまらなくなる
③過去の自分と今の自分を比べて落ち込むことがある
④自分の求めるレベルにチームやメンバーがついてこないイライラ
⑤お金がない、もっと欲しいとお金のことしか考えられない
⑥思い通りに物事が進まないイライラ
⑦パートナーとの喧嘩が続いて、冷戦状態
⑧パートナーからの愛情が足りておらず、寂しく感じる
⑨自分に自信を持ちたい
⑩病気、事故で辛い思いをしている

仕事や恋愛、病気など、人生には望ましいことも望ましくないことも多々起きます。「いくら努力してもうまくいかない」など相手へのいら立ちを募らせることもあるでしょう。

そんな時でも、心を美しい状態に戻す術を持っていれば、起きた出来事によって一喜一憂する必要がなくなります。

美しい心の状態とはどんな状態か

心の苦悩がない、「美しい心の状態」とは、感覚が研ぎ澄まされ、人の心の機微や変化に気づくことができます。また、思考がクリアになり、物事の判断が早くなります。もちろん、人の批判をすることもなく、むしろ自然と感謝の心が生まれてきます。

こういった状態は、仲間と協力してスポーツや仕事で成功をおさめた瞬間や、登山で頂上に辿り着いた感覚に似ています。美しい心の状態では五感がフルで働き、いつもより感覚が研ぎ澄まされている状態です。

なぜ、このような状態になるかというと、人が美しい心の状態にある時、その人は「将来」を考えるわけではなく、「過去」を考えるのでもなく、ただ「今この瞬間」に集中しているからだと、本書では語られています。

目の前に集中している時には、ネガティブな感情は一切生まれません。「美しい心の状態」というと、無の状態のようなイメージを持つ方もいますが、決してそうではありません。むしろ、目の前で起きている問題に対して、すべきことが直線的に浮かび、迷わず判断ができます。

「心が苦悩である状態」は自分中心の意識下にある

それでは逆に、心が苦悩な状態あるというのはどういう状態を指すのでしょうか?それはは、全ての事象に対して「自分中心」でしか考えられなくなっている状態です。

「そんなことを言われるなんて(自分としては)心外である」
「(自分のほうが)相手より上である」
「相手より何としてでも結果を出したい(自分の勝ちである)」
「(自分のことを)認めて欲しい」

こういった具合に、自分中心に物事を考えており、相手や環境を変えることに必死になっています。

そして、上述しましたが、美しい心の状態が「今」に向かっているのに対し、苦悩である状態は、意識が「過去」や「未来」に向かっています。例えば、自宅から会社に出勤しているサラリーマンがいたとして、下記を考えているとしたら、それはどんな状態でしょうか。

・前日に仕事で犯したミスのことを思い出している
・家を出る時にケンカをしたパートナーのこと考えている
・仕事のノルマや上司の顔が浮かんでいる

誰しも一度は考えてたことがある内容ですが、いずれも「過去」もしくは「未来」のことを考えて、心がモヤモヤしている状態です。

この状態で、普段の仕事をしたとしても頭の中は「過去」と「未来」にとらわれているのですから、集中力散漫です。ただやっているつもりということですね。周囲のちょっとした変化や、本当にすべきことも見えてきません。

苦悩の本質は、無意識のうちに抱いている「理想像」

自分中心になってしまう、過去や未来にとらわれてしまう、などの苦悩の本質は、無意識に抱いている「自分はこういう人であるべき」「自分はこういう人あらねばならない」という理想像(願望)です。

無意識というのは、過去の体験を通していつの間にか形成されているものであり、「そう考えるのは当然である」と心の深層心理にある状態です。そのため、自己分析をおこなえば、すぐに分かることではなく、意識を心の奥底に向ける必要があります。自分が本当は何に執着しているのかを見つけない限り、苦悩から解放されることは難しいのです。

気づく:ネガティブな感情が生まれるのは起きた出来事が原因ではない

上述した、心の苦悩な状態を解決するための4つのステップを改めて記載すると、①気づく、②観察する、③苦悩の正体を知る、④正しい行動をする、になります。

苦悩の状態は、イライラしたり、怒ったり、胸がムカムカしたり、悲しくなったり、不安に思ったり、とネガティブな感情が生まれた時を指します。まずは、「自分がネガティブな感情になっている」ことに気づくことが重要です。

例えば「最近太ったんじゃない?」と言われたとしましょう。その場合、「面と向かって言わなくてもいいじゃないか、わかっているけど体重がなかなか減らないんだ…」「みんなの前で言うなんて信じられない、もう付き合うのをやめよう」など、1つの出来事をきっかけにして、次々と感情が生まれてきます。

しかし、実際は理想像の執着が原因で、苦悩しているのです。「自分はスリムでかっこいい人が理想だ」と考えているからこそ、そのギャップに苦悩してしまいます。

また、1つの出来事がトリガーになってしまい、テレビや雑誌でスタイルが良いを見た時にも、同様にネガティブな感情が生まれてしまうことがあります。

つまり、苦悩の「根本原因」を解消しない限り、あらゆることをきっかけに苦悩な状態に陥ってしまう可能性があるということです。大切なのは、感情の変化を客観的に見ること、ネガティブになったときに「苦悩の状態になっている」ということに気づくことが、まず大切です。

観察する:心の声を15個あげてみる

ネガティブな感情がわいた時、自分は苦悩な状態にあると気づいたら、次は心の声を聞くことが大切です。例えば、職場で嫌なことがあった時に「なぜ私が出世できないのか」「どうして私のことを理解してくれないのか」「こんな会社辞めてやる」などと思った時に、その声を拾い上げていくのです。

具体的には、以下の方法で拾い上げていきます。

①目を閉じて背筋を伸ばして椅子や床に座る
②頭の中を駆け巡っている心の声を15個あげる

この時、ネガティブな思考が生まれたとしても、その思考を評価する必要はありません。ただ見つけていくことに意識を集中させましょう。最低15個見てけていくと、深層心理に近づくことができます。

正体を知る:ネガティブな感情を生み出している「理想像」を探す

本書でも具体例を挙げながら解説されているため、ここでも具体例を用いて紹介していきます。心の声はセリフ調のほうが挙げやすいとのことです。下記では、本来15個ですが解説上、必要な数のみあげていきます。

■友人の仕事の成功を祝うパーティーに、自分が呼ばれなかったが、ネガティブな感情を押し込むように”いいね”ボタンを押した時

・なんで俺を読んでくれなかったんだよ
→自分を中心にして相手の非を責めている

・友達だと思ってたのに
→自分を中心にして、自分は友達だと思っていたと共感を求めている

・参加者は知らない人も多いけど一言くらい言えよ
→自分を中心にして、自分の存在感を主張している

・なんで俺、こんな小さなことで悩んでいるんだろ
→自分を中心して、自分を考えている

・ダサい
→自分を中心にして、自分のことを批判している

・他にも俺の知っているやつが参加しているけど、他はどう思ってるのか
→自分を中心にして、相手がどう思っているのか、自分のことを考えている

・あいつは先に行ってしまって、取り残されている気がする
→自分を中心にして、自分のことを考えている

こうしてあげていくと、自分中心でネガティブな感情を生み出しているのが分かります。そして、最後のほうになればなるほど、別の感情になっていることが分かります。

上記の例では「自分は他人から慕われる、友人より勝っている成功者であるべき」という理想像に縛られていたのです。この理想像までたどり着けば、「心の美しい状態」に戻すことができます。急に恥ずかしくなったり、どうでもよくなる、つい笑ってしまうような感覚です。

もし、それでも理想像を手放せない場合は、自分が本来しがみついている理想像ではない可能性が高いため、再度15個の心の声を聞く工程を繰り返すと良いと記載されています。

行動する:心が美しい状態で正しい選択をする

心が美しい状態であれば、正しい選択を即座に決めることができます。例えば、上記で紹介したパーティーに呼ばれなかったケースでは、苦し紛れに”いいね”ボタンを押していましたが、それは正しい行動ではありません。

この時の正しい行動でいえば、友人よりも勝っている理想像を手放した状態のため「何もしない」という選択で良いのです。

また、「~しなければならない」という行動や思考自体が、自分中心の苦悩の心から生まれている考え方になります。「上司から言われたから、メールを送らなければならない」よくある会社員の悩みですが、深層心理まで紐解くと、「本当は自分はやりたくないけど…」という心が見え隠れします。

また、この時にネガティブな感情を抱いていることも想像に難くないですよね。しかし、心が美しい状態まで戻した後で考えると、必要であれば「送りたい」と素直に思えるのです。

まとめ

本書を手に取ったのは、マインドフルネスについて解説されている本であること、テクニカルな本であること、上流階級でも実施している方法であることなどがあげられます。

先日、長橋社長から共有頂いた瞑想の記事を読んだことが、本書を選んだきっかけになりますが、現状の自分の問題とも関連性が高かったことも大きいです。

普段私がネガティブな状態になるとき、一つの出来事に対して、連鎖的に負の感情が出てきます。最初に感じた感情と、最終的に感じている感情が、もはや別物であることもあります。

直近だと「なぜマネージャーなのにコンサルワークが苦手なのか」などが悩みにはなりますが、まさに理想の自分とのギャップに苦しんでいるわけです。本書に気づきがあったのは「未来」を考えてもネガティブになるということ。

決して、未来や理想を追いかけることが悪いことではないと思っていますが、(本書でも書かれています)それを気にして間違った選択をしていることも多いのかもしれません。

まずは理想を切り離し、「今」を見て正しい選択を取る。それがネガティブな感情を生み出さずに行動できるのであれば、私にとっては大きな財産になります。

いくらテクニカルな方法といっても、自分の深層心理で迫るのは、少し練習しただけで、すぐ習得できるものでもないので、ネガティブな感情が生まれたら、少しずつ書き溜めて、時間がある時にマインドフルネスをやってみます。

行動
・ネガティブな感情になった時、メモに書く
・時間がある時に、自分の求めている理想像を特定し、切り離す練習をする
・商談や打ち合わせなどに行く際は、必ず「現在」を見れるようにマインドフルネスをおこなってから行く

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