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形見分け

昨日、えーちゃんの高校からの友人、Uさんと会ってきた。

初めて会う。会うまでは吐きそうなぐらい緊張していた。うちの近所のセブンイレブンまで迎えに来てもらった。

最期にいた場所に連れて行ってもらう。

それからお昼ご飯をご馳走になって。

「二人で一周忌できましたね」と言ってた。


「時間が大丈夫なら思い出の喫茶店とか行きます?」と言われ二つ返事でハイ。

「いつもサウナに行く前に来てたんです」という駅前にある喫茶店。最後に会ったときもここに来たという。

うちの家から比較的近い、私がえーちゃんと出逢った街だった。
「ここにいつも車を停めて……」という駐車場が同じで笑う。
「ここで煙草を買って……」同じ。
駐車場から駅方面へ歩く道順も同じだった。

私がえーちゃんと幾度となく見た景色と、Uさんがえーちゃんと幾度となく見た景色が同じで、そしてそれを今日初めて会うUさんと私が一緒に見てるというのが可笑しくて。
俯瞰して見ると同じ場所で3つのストーリーが交差する。
初めて会う人とそんなことになることはまず無い。「私の思い出の場所はここです」「私もです」ならないでしょ(笑)

喫茶店は知らないお店だった。
裏口から入って真っ直ぐ10メートルほどUさんの後をついて歩く。
「ここです、ここ」正面玄関からすぐの席、陽射しが床を照らしていた。
「僕がこっちに座って、そっち側にいつも彼が座ってて……」という彼側の席に座らされた。
「ここで5時間とかいてたんですよ(笑)」
京都の人なのになぜこんな大阪のマイナーな街で?と笑える。

アイスティーを飲み終えたあと
「まだなんか飲みます?僕はミックスジュースで」
えーちゃんも2杯目は決まってミックスジュースだった。
わたしもミックスジュースで。

喫茶店で3杯飲むのは初めてだ。3時間半で3杯、案外いけるもんだと学んだ。

私の煙草を見て「懐かしい」と言う。
ああ、そうか、そっち側からはそう見えるんだ。私は毎日見てるからもう自分と一体化していて何も感じなくなってる。

喋り方や笑い方、手の動かし方、身振りそぶりがソックリで。
Uさん本人もえーちゃんが憑依してると思うと言ってた。
顔から目線を外して肩の奥のほう、遠くを見ていたら目の前にえーちゃんがいるかのように感じる。
声は違えど、こんなにも似れるもんなんだと思った。

聴くとどうやら私たちは【説教されまくられ同士】らしい。
朝まで説教コースが幾多あったかと。
「他にこんな人はいないので、秋山さんと喋れて良かったです」と言ってもらえた。わたしもです。
「秋山さんがいなかったらここに来れてなかったと思う」とも言っていた。

まだ時間が大丈夫なら晩御飯に行きますかと。近くによく行ってた焼肉屋さんがあるんですと。

一緒に行ったことがある店だった。どんなけ。

いつもえーちゃんが頼んでいたというローストビーフを頼んでいた。これは知らなかった(なんかもう知らない話が出て来るほうが珍しいみたいになってる。今日初めて会う人なのに)

亡くなる半年前くらいから「俺のことはUが全部知ってる」としきりに言っていた。
Uさんを知らない私は「Uて誰?私となんの関係が?」と思っていたけど
自分がいなくなったあと、こうして二人が会うことになるように、逆算しての発言だったんだなと。
「辛くなったら僕を頼れということだと思います」とUさん本人も言っていた。

「泣き崩れられたらどうしようと思ってたんです」と言われた。
喫茶店で一瞬目に涙は溜まったけど耐えた。泣いてない、ギリ。
人前で涙を止める訓練はこの1年3ヶ月間ずっとしてきた。
誰に育てられたと思ってるんだと自分を奮い立たせてきた。
強い女だと見極めてこの別れでも大丈夫だと判断したはずだから。そうでなければもっと早くに違う方法で捨ててたはずだから。

生前、「ここのカレーが一番好き」と言って通ったうちの近所のカレー屋さん。
一緒にした最後の食事がここだった。
そのときの顔が忘れられなくてまだ行けてない。
そこも3ヶ月に1度とか2人で行ってたらしい。笑う。そっちとこっち合算したらめっちゃ行ってるじゃん。

そのカレー屋さんに一緒に行ってくれませんかとお願いした。
これ一人で食べに行ってたら「お前はアホなんか」とまた朝まで説教されるやつだと思ったから。
「行きましょう」と言ってもらえた。
生きる理由が一つできた。


形見分けをしてもらった。

右がえーちゃんがいつも使っていたライター。
左はわたしの。7年前にもらったやつ。
2本揃った姿がまた見れた。