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平山周吉「小津安二郎」
どんな映画にも似ていない映画
英国映画協会主催の「史上最高の映画」というのがある。1952年から10年おきに発表されるこのランキングは、世界の映画関係者の投票による「推し映画」リストになっているのが興味深い。その最新ランキング(2022年)が昨年発表された。堂々第4位にランクインしたのが、小津安二郎監督「東京物語」である。実はこの作品、前回(2012年)「監督が選ぶベスト100」でなんと1位に選ばれた。没後約50年、昭和の名匠が「世界の小津」として甦ったのである。
そんなこともあって、最近集中的に小津作品のDVDシリーズを観ている。三度の食事より映画が好きだった亡き父が、晩年に私に贈ってくれたものだ。多い時は日に3本の映画を観ていた父が、人生で一番好きだった映画監督が小津安二郎だった。私も若い頃に(父の勧めで)観ていたものの、その時分には良さがよくわからなかった。が、小津が没した年齢に達して観てみるとしみじみと好い。おそらく父も、はたまた世界の映画関係者も似たような感慨を抱いたのだろう。小津作品の曰く言い難い魅力はいったい何なのか。その謎に深い洞察力と独特の解釈をもって答えたのが本作である。
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