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KAMPAI!!

授業が始まる15分前に着くと、案の定教室にはまだ誰もいなかった。

1限は8:15から。
朝はわりと得意な私でも、少し早すぎでは?と感じる時間だ。

それは留学先のノルウェーの大学のノルウェー語のクラスだった。
2回目の授業だっただろうか。

「色んな人と会話練習できるように毎回違う席に座ってね」という先生の言葉にまじめに従い、1回目とは少し離れた席に座ってみた。
(このあとの授業で結局みんな固定の席になっていったのは言うまでもない。笑)

少し人見知りの私は、隣にちゃんと誰か座ってくれるのだろうか。とそわそわしながら待っていた。

どんどんと埋まっていく席。
私の隣は埋まらない。

授業が始まる1分前。

慌てたように走って入ってきた子が私の隣に座った。

ひげが少し生えた、背の高い、笑顔がかわいいドイツ人の男の子だった。
気さくな感じの子で、話しかけてきてくれた。

私に名前を聞くと、彼は「日本の文字でどうやって書くの?」と聞いた。
ひらがなでノートの端に自分の名前を発音しながら書いて見せた。

「へぇ~、いいね!僕の名前はどうやって書くの?」

ジョンというらしい。

漢字に変換するのは難しいなあ、なんて思いながら、ひらがなとカタカナでその子のプリントの端っこに書いてあげた。

すると、私が書いたお手本の横に練習をし始めた。

ノルウェー語の授業中なのに、不思議な感じ。

何回か書くと、ジョンは思い出したように「俺、ひとつ日本語知ってるよ!」と言った。

「お!なになに?」と私はなんとなく嬉しくなって、返事を待った。

「ありがとう」かな、「こんにちは」かな。
いや「スシ」とか「サムライ」とかか!?なんて想像を膨らませていると────


「KAMPAI!」


「へ、、」と思わず拍子抜けしてしまった。

一瞬言葉を処理できなかったが、瞬時に「乾杯」だと理解できた。

少し予想外の答えに、クスッと笑ってしまった。

どうして知っているの?と尋ねると、「何よりも大事な言葉だからね」と。


確かに、パーティーのときも、誰かとグラスを交わすときも「乾杯」のひとことから始まる。

それに、ノルウェー語がしゃべれなくても、ドイツ語がしゃべれなくても、たったひとこと相手の国の言語で言うと、相手との壁もなくなる気がする。

ちなみにドイツ語は、「Prost!」
ノルウェー語は「Skål!」

留学中はたくさん「Skål!(スコール!)」を使った。

その一言と共にグラスを鳴らせば、一瞬で笑顔になれる。

これからも出会う人と「Kampai」の交換をたくさんしたいなって思う。

minami













より素敵な文が書けるよう、経験に投資したいなと思います、、、! よろしくお願い致します!!