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ナッツでお酒を飲むみたいなこと

この前まで昼休みのサッカーが楽しみだったし、この前までテスト勉強がつらかった。つい、この前まで。

お酒を飲もうと思って、アテを買いにいった。少し悩んで手にとったのは「ミックスナッツ」だった。

小皿に盛られたミックスナッツをみて、洒落たものをつまみに飲めるようになったなぁと、我ながら驚いた。

お酒なんて、もっとしょっぱいもので飲むのが当たり前だった。お酒なんて、飲み会のときだけ飲めばよかった。お酒なんて、苦くて飲めたもんじゃないと思っていた。お酒なんて、飲めるようにならなくてもいいと思ってた。お酒なんて、匂いだけで苦手だった。お酒なんて。

時は勝手に進み、勝手に僕も変えていった。後悔といわれると少し違うけど、心の準備が間に合ってない気はする。時間はいつだって身勝手で、思いやりが足りない。

あたらしい景色がみえるようになると、いままでの景色が少しみえなくなる。みえなくなった景色が無性に恋しくなる夜がある。きょうみたいな夜。

ミックスナッツを口のなかで転がすと、ひかえめな塩気が舌にしみわたる。小気味よい音を立てて刻んでいく。豆のにおいが鼻から抜ける。発泡酒を流し込むと、体が喜んでいるのがわかる。悔しいな、うまい。

戻れないからせつなくて、戻れないから大切で、戻れないから思い出す。

あんなに大きかったすり傷は、もう跡形もない。まったく、自分勝手なものだな。

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